上 下
175 / 320
第2章・のんびりまったりスローライフ?

うわ言②

しおりを挟む


「あのね、ユリウス。ユリウスはさ、どうしても自分のステータスが気になっちゃうんだよね?」

 私の問いに、ユリウスはしばらく黙ったままだったけれど、やがて頷いた。

「俺は、ルリアルーク王になんてなりたくない。ただの一人の男でいいんだ。君がそばに居てくれるだけで、それだけでいいんだ」

 以前、何をすべきか、何がしたいのかがわからない時には、立ち止まってゆっくりすればいい、何かしたくなるまで何もしなくていいってユリウスに言った事があるけど、真面目な彼は、どうしても気になってしまうんだろうなぁ。

「じゃあさ、ユリウス。一つ提案があるんだけど、言ってもいいかな?」

 私がそう言うと、何? とユリウスは首を傾げた。

「ユリウスがルリアルーク王である事が嫌だっていうのなら、他の人にそれを押し付けちゃおうよ。ちょうど、なりたいっていう人が居るんだしさ」

「え?」

 驚くユリウスに、私はにんまりと笑いかけた。
 鏡を見なくてもわかる……多分今の私は、かなり悪い顔をしているはずだ。

「それって、ジュニアスの事?」

 眉をひそめてユリウスは言い、うん、そうだよ、と私は頷いた。

「私も、聖女の役は、あの人――ジュンに押し付けちゃおうと思う。だって、あの人も自分は聖女だって言っていたからね。だから、ユリウス。あなたはもうルリアルーク王じゃない。髪もさ、隠すのやめようよ。ユリウスの姿を見た人たちがルリアルーク王みたいだねって言っても、ルリアルーク王は別に居るって言って、堂々としていたらいいじゃない。ユリウスは、こういうのは嫌?」

 私の提案を聞いたユリウスは、少し考え込んだ。
 ルリアルーク王を押し付ける相手が、ジュニアスだという事が引っかかっているんだろうけど、ユリウスがルリアルーク王の事も、ジュニアスの事も嫌だというのなら、一石二鳥じゃないかなって私は思うんだけどね。

「ふっ……」

 やがて、黙り込んでいたユリウスが笑い、金色の瞳を細めて私を見つめると、言った。

「オリエは、すごい事を考えるね」

「そうかな?」

「そうだよ。少なくとも俺は、思いつかなかった。だって、大嫌いなあいつを喜ばせるだけだからね。でも、それもいいかもしれないね。俺はルリアルーク王になんてなりたくないし、ジュニアスに押し付けてしまえば、少しはすっきりするかもしれない」

「じゃあ、ユリウスも私も、今はただの冒険者って事でいい?」

「あぁ、それでいい。それでいこう。オリエ、君ってやっぱり最高だ!」

 どうやらユリウスも、その気になってくれたようだ。
 私たちは顔を見合わせると、声を上げて笑った。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

異世界に行ったら才能に満ち溢れていました

みずうし
ファンタジー
銀行に勤めるそこそこ頭はイイところ以外に取り柄のない23歳青山 零 は突如、自称神からの死亡宣言を受けた。そして気がついたら異世界。 異世界ではまるで別人のような体になった零だが、その体には類い稀なる才能が隠されていて....

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

転生した愛し子は幸せを知る

ひつ
ファンタジー
 宮月 華(みやつき はな) は死んだ。華は死に間際に「誰でもいいから私を愛して欲しかったな…」と願った。  次の瞬間、華は白い空間に!!すると、目の前に男の人(?)が現れ、「新たな世界で愛される幸せを知って欲しい!」と新たな名を貰い、過保護な神(パパ)にスキルやアイテムを貰って旅立つことに!    転生した女の子が周りから愛され、幸せになるお話です。  結構ご都合主義です。作者は語彙力ないです。  第13回ファンタジー大賞 176位  第14回ファンタジー大賞 76位  第15回ファンタジー大賞 70位 ありがとうございます(●´ω`●)

我儘女に転生したよ

B.Branch
ファンタジー
転生したら、貴族の第二夫人で息子ありでした。 性格は我儘で癇癪持ちのヒステリック女。 夫との関係は冷え切り、みんなに敬遠される存在です。 でも、息子は超可愛いです。 魔法も使えるみたいなので、息子と一緒に楽しく暮らします。

目覚めたら地下室!?~転生少女の夢の先~

そらのあお
ファンタジー
夢半ばに死んでしまった少女が異世界に転生して、様々な困難を乗り越えて行く物語。 *小説を読もう!にも掲載中

【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する

ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。 きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。 私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。 この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない? 私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?! 映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。 設定はゆるいです

処理中です...