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第1章・異世界転移と異世界転生

導き手②

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「ステータスに書かれている事が全てであるとは限りません。その人の生き方によって、努力によって、ステータスは変化しますから。むしろ、私たちのステータスの方が、特殊なんだと思います」

 アルバトスさんはそう言うと、簡単な例で説明してくれた。

「例えば、ジャンくんのステータスには、シルヴィーク村の村長の息子、と書かれている可能性が高いです。このままいくと、彼のステータスは、シルヴィーク村の村長、になるでしょう。だけどジャンくんがシルヴィーク村の村長ではなく、冒険者を選んだ時は、冒険者……例えば戦士という職業に変わるでしょう」

 わかりやすい説明だと思った。
 確かに、ステータスに書かれている職業って、普通はそういうものだと思う。
 ジャンくんの戦士姿は、ちょっと想像つかなかったけれど。

「私のステータスにも、学者、と書かれているんですよ。その他に、ルリアルーク王の導き手と書かれているんです。こういうものが全ての人に書いてあるのかはわかりませんが……運命的なものを感じますよね」

「わかります! 私のステータスにも……あっ……」

 私のステータスにも、ルリアルーク王の妻、と書かれていると言いかけたけど、これは黙っておいたほうがいいだろう。
 途中で口を閉ざした私を、アルバトスさんは穏やかな眼差しで見つめた。

「ユリウスがルリアルーク王だという事に気付いている人は、おそらく居ないでしょう。いや、もしかするとオブルリヒト王は何かを感じていたかもしれませんが、ジュニアス王子がいいカモフラージュになってくれました」

「それ、どういう事ですか?」

「オブルリヒト王のステータスには、ルリアルーク王の父、と書かれていたらしいのです。他人のステータスを見る事ができないので、真偽のほどはわかりませんが、実際彼はルリアルーク王の父ですし……だけど、彼にはどの子がそうであるのかまでは、わからなかったでしょう」

 オブルリヒトの王様には、ユリウスとジュニアスの他、まだ二人居るらしかった。
 残りの二人は、一人は今のお妃様の子供で、もう一人は側室の子供らしい。
 あの王様、あんなにユリウスのお母さんの事を愛してたって言っていたくせに、結局奥さんは三人も居たのか。
 なんとなくがっかりしてしまったのは、男の人っていうのは、何人も奥さんを持ちたがるものなのかと思ってしまったからだ。
 ユリウスには……私一人だけにしておいてほしいなぁ。
 嫌われないように、飽きられないように、努力をしないといけないかなぁ。

「ユリウスは女の子として育てましたから、対象から除外されていたはずです。だから、オブルリヒト王は、ジュニアス王子がそうなのだと思っているでしょうね。ジュニアス王子も、そうだと言っていたらしいですし」

 ユリウスが、ジュニアスは自分がルリアルーク王だと言いふらしているって言ってたっけ。
 アルバトスさんの推理通り、オブルリヒトの王様は、きっとジュニアスがルリアルーク王なのだと思っていそうだ。
 この事、ユリウスは不快だろうけど、ジュニアスが役に立つ事もあるんだなぁって思った。


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