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第1章・異世界転移と異世界転生

朝まで待って②

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 ユーリの気持ちを尊重する事にしたものの、心配でたまらない私は、貸してもらっている部屋から毛布を持ってくると、ユーリの部屋の前に座り込んだ。
 約束をしたから、ユーリの気持ちを尊重するつもりではある。
 だけど、心配だから、少しでもそばに居たかった。
 ドアの向こうからは、苦しそうな呻き声が、ずっと聞こえていた。
 すぐにでも中に飛び込んで看病したかったけど、ユーリとの約束を思い出して、ぐっと耐える。
 だけど、これが取り換えしのつかない事になってしまったらどうしようと思うと、泣きそうになって――多分、泣いちゃって、そのまま寝ちゃってたんだろうね、気づくと、朝になっていた。

「ユーリ……大丈夫かな……」

 約束の朝だ。ユーリは大丈夫かな? 私に会ってくれるかな?
 声をかけようか悩んでいると、部屋から物音がした。
 ユーリは起きているようだ。最悪の事になっていなくて、ほっとする。

「う、わあっ!」

「え? ユーリ、大丈夫?」

 中から大きな声が聞こえて、その後派手な物音が続く。
 私は思わずノックもせずに、ユーリの部屋へと飛び込んだ。
 部屋の中はカーテンが閉められていて、薄暗かったけれど、カーテンの隙間から漏れる光で、中の様子がわかった。

「え?」

 ユーリが居るはずの部屋で、一人の男の人が、派手に転んでいた。
 彼は毛布をかぶっていたけれど、多分上半身裸で……もしかすると、下半身も何も身に着けていないかもしれない。
 私は目のやり場に困ったのもあって、彼から視線をそらすと、部屋の中にユーリの姿を探す。
 だけどこの部屋には、床に転んだままの男の人しか居なくて、ユーリの姿はどこにもなかった。

 ユーリが居なくなって、この男の人が現れた。
 この人がユーリに何かをしたのだろうか? だとしたら、許せない。

「いたた、まずいな、上手く体が、動かない」

 彼は体調が悪いのか、転んで体が痛いのか、なんとか体を起こすと、はぁ、と息をつく。

「あなた、誰?」

 と言うと、彼はまた深い息をつき、言った。

「君に会う前に、自分の姿を確かめようと思ったんだけど、やっぱり変わってるって事だね」

「え? 何言ってるの? まさか……」

 ユーリが居るはずの部屋に居た、男の人……もしかして……でも、そんな事、あるはずが……。

「まだ、体が上手く動かせないんだ。オリエ、カーテンを開けてくれるかい?」

「わ、わかった……」

 私は謎の男の人に言われるがまま、ユーリの部屋に入り、カーテンを開けた。そして――。

「え?」

 ユーリの部屋に、ユーリの代わりにいた男の人は、褐色の肌に、眩しい銀色の髪をしていて。

「初めまして、オリエ。俺の名前は、ユリウス・フェルトン。昨日までは、ユリアナ・オブルリヒトと名乗っていた者だよ」

 と、金色の瞳を優しく細め、言った。

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