88 / 320
第1章・異世界転移と異世界転生
箱庭の中で②
しおりを挟む「そんなの、大丈夫に決まってるだろ! この結界は、オリエちゃんとアルバトス先生で作ったんだよ! ぼくたちは、これからこの箱庭の中で、みんなで仲良く、楽しく暮らしていくんだ!」
私の代わりに答えたのは、サーチートだった。
サーチートはユーリに抱かれながら、ジュニアスに言い返す。
サーチートの言葉を聞いて、私は自分が少し恥ずかしくなってしまった。
そうだよね、みんなで仲良く楽しく暮らしていくために、私はこの箱庭の呪文を使ったんだ。
だから、この結界の中でのこれからの生活を、私が疑っちゃいけないよね。
「サーチートの言う通りだよ! これから私たちは、この結界の中で、みんなで楽しく暮らしていくの!」
例え、何か問題が起こったとしても、私が、サーチートが、ユーリが、アルバトスさんが、シルヴィーク村のみんなと協力をして、助け合って生きて行けばいいだけの話だ。
「だからもう、あなたたちと会う事もないと思う。あなたたちの事なんて、どうでもいい。私には関係の話だよっ」
そう言い切ると、拍手の音が聞こえた。
拍手をしてくれたのは、ユーリだった。
ユーリの肩に乗ったサーチートも、小さな手を一生懸命に叩いて拍手をしてくれていた。
「いいね、オリエ。よく言ってくれた。ありがとう。すごく嬉しいよ」
そう言ったユーリは、金色の瞳を細めて、私が大好きな笑みを浮かべると、今度は表情を引き締め、挑むような瞳でジュニアスを睨みつけた。
「心配は無用だよ、ジュニアス。私の伯父上に抜かりはない。あの人は、天才だからね。ジュニアス、天才アルバトスがこの策を講じた……この意味をよく考えてみるがいい」
天才アルバトス――これを聞いたジュニアスは、深い層に顔をしかめ、ノートンは悔しそうな表情で俯いてしまった。
何故アルバトスさんが天才と呼ばれているのかはわからないけれど、やはりすごい人だったのだと思う。
いつもはおっとり、ほんわかとしている人なのにね。
「この忌々しい結界が消えたら……いや、お前がこの結界から出てくる事があれば、ユリアナ、必ずお前を、八つ裂きにして殺してやる……」
捨て台詞のようにも聞こえるジュニアスの言葉を聞いて、ユーリは可笑しそうに笑った。
「あぁ、こちらも、全く同じ気持ちだよ。ねぇ、こうも考えられるとは思わないか? この結界があるから、お前は今、命拾いをしたんだ。いずれ、殺してやるけどな」
ユーリとジュニアスは、互いにとても嫌い合っていて、今までそれを互いに隠して我慢していた分、言動がとても危ない。
私としては、この箱庭の中でみんなが楽しく暮らせれば、それで幸せなのだけれど、ユーリは少しジュニアスに対して好戦的だ。
ちょっと困ったものだなぁと思いながら、ジュニアスを睨みつけるユーリの横顔を見つめていると、ユーリは私へと顔を向け、優しく笑ってくれた。
「オリエ、行こうか。私たちの村に戻ろう」
サーチートを肩に乗せたまま、ユーリが手を差し出す。
私はユーリの手に自分の手を重ね、結界の外のジュニアスたちを無視して、ユーリに手を引かれてシルヴィーク村へと歩き出した。
8
お気に入りに追加
249
あなたにおすすめの小説
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
裏の林にダンジョンが出来ました。~異世界からの転生幼女、もふもふペットと共に~
あかる
ファンタジー
私、異世界から転生してきたみたい?
とある田舎町にダンジョンが出来、そこに入った美優は、かつて魔法学校で教師をしていた自分を思い出した。
犬と猫、それと鶏のペットと一緒にダンジョンと、世界の謎に挑みます!
転生令嬢の食いしん坊万罪!
ねこたま本店
ファンタジー
訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。
そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。
プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。
しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。
プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。
これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。
こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。
今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。
※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。
※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
前世の記憶さん。こんにちは。
満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。
周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。
主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。
恋愛は当分先に入れる予定です。
主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです!
小説になろう様にも掲載しています。
異世界に行ったら才能に満ち溢れていました
みずうし
ファンタジー
銀行に勤めるそこそこ頭はイイところ以外に取り柄のない23歳青山 零 は突如、自称神からの死亡宣言を受けた。そして気がついたら異世界。
異世界ではまるで別人のような体になった零だが、その体には類い稀なる才能が隠されていて....
転生した愛し子は幸せを知る
ひつ
ファンタジー
宮月 華(みやつき はな) は死んだ。華は死に間際に「誰でもいいから私を愛して欲しかったな…」と願った。
次の瞬間、華は白い空間に!!すると、目の前に男の人(?)が現れ、「新たな世界で愛される幸せを知って欲しい!」と新たな名を貰い、過保護な神(パパ)にスキルやアイテムを貰って旅立つことに!
転生した女の子が周りから愛され、幸せになるお話です。
結構ご都合主義です。作者は語彙力ないです。
第13回ファンタジー大賞 176位
第14回ファンタジー大賞 76位
第15回ファンタジー大賞 70位
ありがとうございます(●´ω`●)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる