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第1章・異世界転移と異世界転生

箱庭の中で①

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「オリエさん! 私も行きますっ!」

 ユーリと一緒に行ってしまったジャンくんが気になるんだろう、モネちゃんが後を追いかけてきた。
 ユーリとジュニアスの間に、箱庭によって作られた光の壁は、ジュニアスがユーリに向かって投げた槍を弾き、ユーリを守ってくれたはずだけれど、心配でたまらない私は、必死にユーリの元へと走った。

「ユーリ! ジャンくんっ!」

「オリエ!」

 村を出て、少し行った先――ユーリとジャンくんが光の壁の内側に、そしてジュニアスやノートン、オブルリヒトの兵士たちが光の壁の外側に居るのを見た私は、安心してその場に崩れ落ちそうになってしまった。
 二人が無事で良かったけれど、あんまり心配をかけないでほしい。

「ジャン! 無事で良かった!」

「モネ!」

 モネちゃんがジャンくんの胸に飛び込んだ。
 泣いてしがみつくモネちゃんを、ジャンくんがしっかりと抱きしめている。
 モネちゃん、ジャンくんがユーリについて行くって言った時、止めはしなかったけれど、心配でたまらなかったんだろうなぁ。
 二人が抱き合う姿を見て、ユーリとジャンくんが無事だった事を、私は心から良かったと思った。

「ユーリちゃん! 大丈夫だったぁ?」

 私の腕の中から飛び出したサーチートが、ユーリの元に向かう。
 ユーリは近寄ってきたサーチートを抱き上げると、うん、と頷いた。

「ありがとう、無事だよ。心配かけて、すまなかったね」

「本当だよ、心配したんだからっ!」

 私もユーリに駆け寄ると、ユーリに私が知っている傷以外の傷がないかを確認する。
 ユーリの体には、新しい傷はないようだった。
 良かった。私の作った箱庭の結界は、ちゃんとユーリを守る事ができたんだ。





「オリエ……」

 結界の外で、ジュニアスが私の名を呟いた。

「この結界……お前がやったのか?」

 私は答えなかったけれど、ジュニアスは勝手に言葉を続けた。

「オリエ、お前のその力は、素晴らしい。その力、俺のために使え。俺に仕えろ」

「ジュニアス……」

 それが嫌だから逃げてきたというのに、ジュニアスは何度もそう繰り返した。
 もちろん私はまた、嫌だ、と答えるんだけど、ジュニアスはしつこかった。

「大層な結界だが、こんなところに閉じこもってどうする気だ? この結界が壊れた時が最後だとは考えなかったのか? 俺に、この中での生活をして行くとしても、狭い限られた空間の中では、いずれ限界がくるだろう。浅はかな考えだな」

「そ、それはっ」

 ジュニアスの言葉を聞いて、私はアルバトスさんに言われるままに、この箱庭の結界を張ったけれど、本当にこれで良かったのだろうかと思ってしまった。
 確かに、外からの攻撃は防げるけれど、村のみんなで、ずっとこの結界の中で生活していく事なんて、できるのだろうか。


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