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第1章・異世界転移と異世界転生

悲しい別れ①

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「アルバトスさんっ!」

「伯父上!」

 私とユーリは起き上がると、アルバトスさんの元へと駆け寄った。

「アルバトス先生ーっ!」

 サーチートはアルバトスさんにしがみついて、泣いている。
 アルバトスさんがジュンに刺されたのは、右の脇腹だった。
 早くヒールをかけなくてはと思い、アルバトスさんへと手を伸ばした私は、彼の着ている服が、赤ではなく紫色に変色している事に気がついた。
 どうしてこんな色になっているのかと混乱する私の隣で、

「毒か!」

 と叫んだユーリが、アルバトスさんを刺したジュンを睨みつけた。
 ジュンは、「えぇ、そうよ」と、嬉しそうに頷くと、

「だって、あなたたちは、犯罪者なのでしょう? それなら、この国のために、殺してしまわなければ、ね」

 と、ニタリと気持ち悪く笑う。

「良くやったな、ジュン」

「ふふ、ありがとうございます、ジュニアス様。お役に立てたようで、嬉しいですわ。こんな事もあるかと、毒を塗ったナイフを持ち歩いていましたの」

 この王宮に居て、毒を塗ったナイフを持ち歩いているジュンの異常さに、私はゾッとした。
 この女、やはりどこかおかしい。
 いや、ジュンだけでなく、こんなジュンをこの場で褒めたジュニアスも、おかしかった。
 ジュンの気持ち悪い笑い声に苛立ちながら、私は今自分がやらなければならない事を、必死に考える。

 刺された傷が深いから、まずはヒール?
 それとも、毒を消すために、リカバー?
 アルバトスさんから流れ続ける紫色の血を見ていると、頭が混乱した。
 そんな私を見て、

「オリエさん、大丈夫、ですか?」

 とアルバトスさんが言った。

「わ、私は大丈夫ですっ! 大丈夫じゃないのは、アルバトスさんじゃないですかっ」

 私がそう叫ぶと、そうですね、とアルバトスさんは苦笑する。
 アルバトスさんは刺された脇腹の痛みに顔をしかめながらも、呼吸を整えると、私に言った。

「オリエさんに、お願いが、あります。どうか、聞いてくれませんか?」

 はい、と、私はもちろん頷いた。

「オリエさん、ユーリを、頼みますっ……。あの子の、そばに、居てあげてくださいっ……ずっと、そばにっ……」

「はい、もちろんですっ!」

「ありがとう……」

 まるでこれが最期の願いだと言わんばかりの優しい表情で、アルバトスさんが言った。
 私はこのかけがえのない人を失わないように、ヒールやリカバーをかけて彼を助けなきゃいけないってわかっているのに、アルバトスさんを失うかもしれない悲しみに、体が動かなかった。

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