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第1章・異世界転移と異世界転生
売られた喧嘩を買ってみた②
しおりを挟む「お前こそが、真の聖女だったか」
ジュニアスがそう言うと、
「違う! 違います、ジュニアス様!」
とジュンが叫んだ。
真聖女……確かに私のステータスにはそう書いてあったけれど、私は何も言わなかった。
言ったら、ものすごく面倒な事になると思う。
「ジュニアス様! その女じゃない! 私が本当の……私はその女に、力を奪われているだけです!」
ジュンは、どうしても聖女になりたいようだったけど、力を奪ったとか、そんなの私は知らない。
「その女を殺して、力を奪い返しさえすれば……」
「いや、もういい。この女はこの国に、いや、俺の野望に必要な女だ。いくらお前でも、この女への手出しは許さん」
「ジュニアス様!」
ジュニアスに私に手を出すなと言われたジュンは、とてもショックを受けたようだった。
だけど、これで一安心かと問われると、そうではない。
今度は、ジュニアスやノートン、それから大勢の兵士たちに囲まれる事となってしまった。
「オリエ、だったな。俺のものになれ。俺に仕えろ」
「嫌だ」
私は首を横に振った。
するとジュニアスはニヤリと笑って、指をパチンと鳴らし、兵士たちに合図を送る。
ジュニアスの合図を受けた兵士たちは、私に剣や槍などの武器を向けた。
これは……ジュニアスの言う事を聞かないと、殺すって事?
ジュンを相手にしていた時よりも、面倒な事になっちゃってるんじゃない?
「なぁ、オリエ……。お前のその力、俺は大変すばらしいものだと思っている……。だから、もう一度言う。俺のものになれ」
「嫌よっ」
私は再度、首を横に振った。
二度拒絶してしまったから、私は殺されてしまうのだろうか――そう思ったけれど、私の存在は彼の中でかなり利用価値が高かったらしく、兵士たちに、
「殺さずに、捕らえろ」
と命令をしただけだった。
だけど、ここで捕らえられては、もう逃げ出す事はできないだろう。
多分、どこかに閉じ込められて全ての自由を奪われ、ジュニアスの言う事を無理矢理聞かされるのだろう。
そして、それでもいう事を聞かなければ、今度こそ殺されてしまうのかもしれない。
私は、何としてもここから逃げ出さなくてはと思った。
だけど、それは私一人では無理だった。
だから、仲間を――相棒を喚ぶ事にする。
「おいで! 召喚、サーチート!」
ジュンに燃やされてしまった、両親との写真の裏に書き込まれていたのは、
『オリエへ。「召喚」と唱え、サーチートを呼べ』
というものだった。
多分、このメッセージを書き込んでくれたのはユーリで、ジュンのせいで遅くなってしまったけれど、私はユーリからのメッセージを実行した。
すると、足元に淡い光を放つ円が浮かび上がり、その中から何かが――懐かしい可愛い子が飛び出してくる。
「オリエちゃーんっ!」
そう言ってとびついてきたハリネズミのぬいぐるみを、私はしっかりとキャッチした。
「オリエちゃーんっ! 心配してたんだよーうっ!」
サーチートは私の服をべちょべちょにするくらい、わんわん泣いて、私もサーチートと再会できたのが嬉しくって、ちょっと泣いてしまった。
サーチート、やっと会えたね。
私もずっと、会いたかったよ。
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