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第1章・異世界転移と異世界転生

思い出の写真②

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「ふふ、すごい面白い顔をしているわよ」

 私は目を見開いて、ガクガクと震えていた。
 震えるのは、ジュンに対しての怒りが、身体中に渦巻いているからだ。

「なんて事をしてくれるのよ!」

「あら、ごめんなさーい、手が滑っちゃってー」

 手が滑って、炎の呪文で燃やしてしまうなんて、あるはずない。
 この女は、明らかに私への嫌がらせで、私の大切な写真を燃やしたのだ。
 一体どういうつもりなのか……ただからかっているだけとは思えないし、これは、挑発されているのだろう。

 じゃあ、どうしてジュンは私を挑発するのか。
 それはおそらく、私から手を出させたいからだ。
 昨日の事もあり、ジュンから手を出せば、このオブルリヒト王国に対し、心象が悪い。
 だけど、私から手を出せば、ジュンには正当防衛という大義名分ができて、堂々と私を攻撃する事ができる。
 これが罠だって、わかっていた。
 だけど、もう限界というか、ジュンを殴りつけてやりたかった。
 それでも、あいつの好きにさせたくない気持ちもあって、私は深呼吸して少し冷静さを取り戻し、考える。

「許せない」

「え? どういう事? どうする気なの?」

 くすくす笑いながら、ジュンが私をさらに挑発する。
 そっちがその気なら、こっちだって挑発するだけだ。
 どっちが我慢強いか、勝負だよ。

「土下座して、謝りなさいっ!」

「はぁ? 何言ってるの?」

「だから、今すぐここに土下座して、私の大切な写真を燃やしてしまって、申し訳ありませんでしたって、謝れって言ってるの! あんたが悪いんだから!」

 私たちが中庭で大騒ぎを始めたものだから、少しずつギャラリーが集まってきていた。
 ジュニアスや、王様、お妃様。ナディア様とアニーさんの姿もある。
 私は、ちらりとナディア様とアニーさんへと視線を向けた。
 ジュンと私のせいで、多分ここはもうすぐ危険な場所になる。
 ナディア様とアニーさんを巻き込みたくないから、すぐに避難できるような場所にいてほしい。
 もちろん、これを今言葉にするわけにはいかなかったのだけれど、アニーさんは何か感じ取ってくれたようで、こくりと頷いてくれた。
 後は……この綺麗な中庭がぐちゃぐちゃになっちゃうかもしれないのは、申し訳ないと思う。

「さぁ、さっさと謝りなさいよ! あんたが悪いんだから!」

「な、何を言うの! 偉そうに! あんた、何様のつもりよ! あたしを誰だと思ってるのよ! 私はこの国に召喚された、矛の聖女よ!」

 私の物言いに、イライラしてきたのだろう、ジュンは顔を赤くして怒鳴るように言った。
 だけど私は、彼女の言葉に爆笑してしまった。

「何を笑っているの!」

「だって、おかしいじゃない。気づかないの?」

「何よ、この無礼者! 私はこの国に召喚された、矛の聖女なのよ!」

「あはは、うん、そうね、あなたは矛の聖女、らしいわね。でも……」

 あぁ、おかしい。自分が矛の聖女だと主張する彼女は、私が今この王宮で何と呼ばれているのか、理解できていないのだろうか。
 おかしすぎて、お腹が痛くなるよ。いやぁ、笑えるなぁ。

「でも、あなたが矛の聖女なら、私は盾の聖女って事だよね? 立場は、同じなんじゃないの?」

 私が冷静にそう言うと、ジュンは先に我慢の限界を迎えたのか、

「お前なんか、死んでしまえっ! ファイヤーボール!」

 と叫び、私にファイヤーボールを放ってきた。
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