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第1章・異世界転移と異世界転生

オブルリヒトの王①

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「おい、部屋から出るなよ」

 部屋の外には私を見張っている兵士が居るから、私を部屋へと戻そうとするのだけれど、私は兵士を無視して部屋を出た。
 以前の太っていた私ならともかく、今の私には乱暴な事ができないのだろう、兵士はぶつぶつと小言を言いながらも、私の後をついてくる。

「おい、ジュン様と会ったら、どうする気なんだ」

 と言われ、思わず笑ってしまった。
 兵士の言葉は、ジュンが私を襲う事が前提になっているものだ。
 彼は、ジュニアスやノートンから、私とジュンを会わせるなという命令を受けているのかもしれない。

 王宮の中庭へと足を向けると、褐色の肌に銀髪、金色の瞳という、ユーリと全く同じ色を持った男性と、白い肌に黒髪、赤い瞳をした美女の姿を見かけた。
 二人の方も、私に気付いたようだったが、美女の方は侍女と思われる数人の女性と共に、すぐに立ち去ってしまい、男性だけが残された。
 男性は私のそばに居た兵士も含めて人払いをすると、私の方へと歩いてきた。

「盾の聖女だな。ジュニアスの言った通り、見違えたよ。さすが聖女だ。美しい……」

「あ……ありがとう、ございます……」

 男性の年齢は、多分、五十歳前後で、以前の私と似たような年齢だろう。
 ユーリに良く似たこの男性は、おそらくユーリとジュニアスの父親である、オブルリヒト王国の王様だ。

「私は、フェルゼン・オブルリヒト……この国の王であり、ユリアナの父親だ。盾の聖女よ、ユリアナの呪いの毒を消してくれて、ありがとう……」

 王様はそう言うと、私に頭を下げた。
 王様が頭を下げるなんて、と私は思ったけど、王様はこのために先程人払いをしたのかもしれない。

「ユリアナも、アルバトスの事も、もう諦めなくてはと思っていた……。本当にありがとう……。アルバトスはユリアナの母の双子の兄でね、母を失ったユリアナを育ててくれた恩人なんだ」

 王様はそう言うと、ユーリとアルバトスさんの事を、私に教えてくれた。

「ユリアナの母は、水の精霊のような綺麗な人でね、私は彼女に一目で恋をして……彼女を妻にしたんだ。だけど……」

 ユーリのお母さんは、ユーリを産んだ後、儚く亡くなってしまったのだそうだ。
 そして、ユーリのお母さんを心から愛していた王様は、ユーリのお母さんが死んだのはユーリを産んだせいだと思ってしまったらしい。
 だからユーリを自分の元で育てずに、アルバトスさんに託したのだという。

「だけど、冷静になってみると、とても後悔したよ。ユリアナは愛した妻が命がけで産んだ宝だというのに、私は何てことをしたのだろうと……。だからすぐにユリアナを自分の元に引き取ろうとしたのだけれど、できなかった。ユリアナが生まれる前に、二人目の妻が生んだジュニアスの世話で、みんな手一杯だったんだ……」

 だから、結局王様はユーリを引き取る事ができずに、ユーリはアルバトスさんの元で育てられたのだそうだ。
 王様は自分がユーリを引き取る事ができなかったから、そのせいでユーリとの間に溝ができてしまっていると思っているらしい。

「この手でユリアナを育てる事はできなかったけれど、私はユリアナを愛している……。だから本当にありがとう」

 王様はそう締めくくって、もう一度私に頭を下げた。
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