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第1章・異世界転移と異世界転生
偽物と本物①
しおりを挟む「聖女じゃなくって、大聖女?」
「そう、聖女じゃなくって、オリエちゃんは大聖女なんだ! 聖女の何倍もすごいんだよ! どう? びっくりした? ぼくのオリエちゃんは、すごいでしょ!」
「ちょっと、サーチート!」
私は慌ててサーチートの体を抱き上げると、口を塞いだ。
このままサーチートを放っておくと、この子はいろいろと口を滑らせてしまいそうだ。
「オリエ、どういう事だい? 」
「えと……」
なんて答えようかと悩んで考え込んでいると、顔をもぞもぞと動かし口を塞いでいた私の手から逃れたサーチートが、また余計な事を口にする。
「だって、オリエちゃんのステータスに、そう書いてあるんだもん! まぁ、ぼくはステータスを見なくても、オリエちゃんの事なら、何だって知っているんだけどねっ!」
「サーチート!」
私はまたサーチートの口を塞ごうとしたが、間に合わなかった。
ユーリとアルバトスさんの視線が、私に向けられる。
「オリエ、説明してくれないか?」
「説明って言われても……」
なんて説明をしようか。
私はサーチートをしゃべらせないようにしっかりと小さな口を押えながら、ため息をついた。
「確かに、ステータスを使って自分の事を確認したら、大聖女とか書いてはありましたけど、そんなはず、ないから……」
「どうしてだい?」
「そりゃあ、聖女っていうのは、若くて美しい女らしいからです。私は若くもないし、美しくもないから、違うでしょう……」
この世界に召喚された時から、ずっと言われていた事だ。
聖女は、若くて美しい女。
私は、醜く太った年増の豚女とか言われていたのだ。
だから、若くて美しい女でない私は、聖女ではない。
でも、ユリアナとアルバトスさんから呪いの毒を取り除けた事は、心の底から良かったと思う。
「オリエさん、ステータスに載っていた、あなたの魔力量はどのくらいですか」
「え?」
魔力量って、∞って書いてあったやつかな。
でも、あれっておかしいよね。∞って、どういう事なのだか。
正直に言って信じてもらえるかわからないし、どう答えるべきか悩んでいると、また私の手から抜け出したサーチートが、あっさりと答えてしまう。
「アルバトス先生、オリエちゃんの魔力はね、いっぱーいなんだよ。だって、大聖女だもの。尽きる事なんてない、無限の魔力なんだよ」
なんて答え方だと心の中で突っ込んだが、それを聞いたアルバトスさんは、暫くの間俯いて黙り込み、何かを考えているようだった。
ユーリは私の顔をじっと見つめていて、私はユーリの視線から逃れるように俯いて、腕の中に居るサーチートを見つめた。
サーチートは私を見上げ、でへ、と笑う。ちょっと憎たらしい。
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