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第1章・異世界転移と異世界転生

シルヴィーク村に行こう①

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 翌日、朝食を食べた後、サーチートはアルバトスさんと勉強、私はユリアナ王女とシルヴィーク村へ行く事になった。
 ユリアナ王女が、お昼ごはんはシルヴィーク村で食べようと提案してくれたのだ。すごく楽しみ!
 家でお留守番をするサーチートとアルバトスさんには、ハムと卵のサンドイッチを用意して、出かける。

「ユリアナ王女、シルヴィーク村までは、どのくらいかかりますか?」

 そう尋ねると、ユリアナ王女は少し考え込んで、

「君の足なら、歩いて二十分くらいじゃないかな」

 と答えてくれた。
 私の足で二十分かぁ、ちょっと遠いか、いい運動って感じかな。
 余談だけど、この世界の時間の感覚って、日本と同じ二十四時制なので、わかりやすくてありがたいんだよね。

「村まで馬で行こうか? 買い物したら、荷物もあるだろうし」

「ありがたいけど、乗れないですよ」

「私の馬に、乗せてあげるよ?」

「いや、転がり落ちる予感しかしないです」

 丁重にお断りすると、わかった、とユリアナ王女は頷いてくれた。
 なので、二人でのんびりと、シルヴィーク村までの道のりを歩く。

「ねぇ、オリエ」

「はい?」

「私の事なんだけど、名前の後に、王女ってつけるの、やめてほしいんだけど」

「え? でもっ……じゃあ、なんて呼んだら……」

「ユリ……いや、今は、ユーリでいいよ」

「ユーリ様?」

「いや、ただのユーリ。様は、いらない」

 でも、ユリアナ王女は、この国の王女様だしなぁと考えていると、

「とりあえず王女っていうのは、止めてほしいんだよね」

 と彼女は繰り返した。何故か、ものすごく嫌そうだ。
 じゃあ、ご本人の希望でもあるし、そうさせてもらおうかな。

「そうかぁ、じゃあ……ユーリって呼ばせてもらおうかなぁ」

 そう伝えると、ユーリはとても嬉しそうに笑った。
 彼女はとてもいい子だし、すごく綺麗な子だ。
 だから、体を覆う青紫色の呪いの毒から、解放してあげたい。

「ユーリ様!」

 シルヴィーク村に着くと、ユーリに駆け寄って来る若い男女が居た。
 明るいブラウンの髪に、ダークグリーンの瞳をした男の子と、ピンクの髪に水色の瞳をした女の子。
 彼らは昨日もユーリたちがこの村を通りかかった時に、駆け寄ってきた人たちだ。
 多分、年齢は十代後半から二十代前半で、ユーリと同年代だろう。
 ユーリは村に入る前に、顔を隠すために仮面をつけていた。
 今日の仮面は、顔全体を覆うものではなく、額から鼻のあたりまで覆っているもので、口元だけが見えているタイプのものだ。
 口元まで広がった青紫色の痣を見て、女性が口元を押さえた。

「ユーリ様、お体は大丈夫なのですかっ!」

 叫ぶように言った女性に、ユーリは頷いた。

「大丈夫だ。今さらバタバタしても仕方ないだろう。残りの人生、好きなように過ごすよ。それよりも……」

 ユーリはちらりと私へと視線を向けると、目の前の二人の男女に向かい、ぐい、と背中を押してくれた。

「彼女は、オリエ。オブルリヒトの聖女召喚の儀に巻き込まれて、こちらの世界に来てしまったんだ。私と伯父上でお世話をする事になってね……今日は彼女の服を買いに来た。お前たちにも、彼女の力になってもらいたい。オリエ、この二人は、この村の村長の息子のジャン・ホフマンと、何でも売ってるハロン商店の娘の、モネ・ハロンだ」

「は、初めまして、糸井織絵です」

 私が挨拶をすると、ジャンくんとモネちゃんも挨拶をしてくれた。
 モネちゃんが、

「オリエさん、服ならうちの店で買ってください。いろいろと置いていますから」

 と言ってくれたので、私たちはモネちゃんの家の、ハロン商店へと向かう事になった。
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