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第1章・異世界転移と異世界転生
織絵の力①
しおりを挟むご飯を食べて、お風呂をいただいてからは、私はサーチートと一緒に、貸してもらった部屋のベッドで、横になっていた。
なんかいろいろ、疲れたなぁ。
思えば、こちらの世界に来てからは、心細いし、緊張の連続だったような気がする。
「オリエちゃん、お部屋を貸してもらえて、良かったねぇ。ユリアナ王女も、アルバトスさんも、いい人だねぇ」
寝転んだ私の胸のあたりに、サーチートは居た。
にこにこ笑ってご機嫌なのが、可愛い。
どうしてこんなにご機嫌なのかと尋ねると、
「オリエちゃんとお話しできるのが、嬉しいんだよ。元の世界では、僕はただのスマホケースのぬいぐるみだけど、こちらの世界では、動けるし、お話もできるんだ!」
「そっかぁ。サーチートは、私の事が大好きなんだね!」
「うん、そうなんだよ! ぼくはオリエちゃんが大好きなんだ!」
可愛いなぁ、と思って、ぐりぐり撫でて、ふと思った。
この子は一体、どうして動いて話せるのだろう?
それに、今はサーチートのお腹の中にしまわれているスマホだって、充電していないのに、どうして使えるのだろう?
「サーチートって、どうして動けるの? もしかして、この家にあったコンロやオーブンみたいに、魔石とか、魔結晶で動いているの?」
この家にある便利な道具――コンロやオーブン、湯沸かし器なんかは、やはり魔法の力で動いているらしかった。
魔物たちを倒した時にまれにドロップする、魔石とか魔結晶っていう物が動力源らしくて、私が元居た世界で言うと、電池みたいな使い方をしているらしい。
ちなみに魔石や魔結晶は、魔法に長けた者は作り出す事も可能らしく、ユリアナ王女もアルバトスさんも、自ら作り出し、そして魔力チャージまでできるらしい。
だから、サーチートの中にも魔石や魔結晶があって、それで動いているのかなぁと思ったのだけれど、サーチートは首を横に振り、違うよ、と言った。
「ぼくはね、オリエちゃんの魔力のおかげで、動いたり喋ったりする力を得る事ができたんだよ。今のぼくはね、オリエちゃんの使い魔みたいなものなんだよ」
「使い魔……魔力……。ねぇ、私に魔力なんてあるの?」
そう尋ねると、サーチートは真面目な顔をして、こくりと頷いた。
「あるよ。だってオリエちゃん、ぼくを治してくれたじゃないか」
確かに、今日サーチートを抱きしめて、ヒールと唱え続けたら、サーチートの体の傷は治っていた。
そう考えると、やはり私には本当に魔力というものがあるのかもしれない。
「オリエちゃんにはね、とてもたくさんの魔力があるんだよ。なんてったって、オリエちゃんは、大聖女なんだから」
「は?」
何を言い出すのだこの子は、と思いながら、私はサーチートを見つめた。
聖女は若くて美しいものだったはず。
だから、私が聖女だっていうのは、絶対にありえないはずなのに。
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