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第1章・異世界転移と異世界転生

レッツ、クッキング!①

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 さぁて、何を作ろうかねぇ。
 私は少し考え込んで、今日は簡単に済ませる事にした。
 貯蔵庫にパンが置いてあったので、これをいただく事にする。
 ユリアナ王女たちは、呪いの毒を受けてしまってからは、食欲が無いと言っていたからだろう、放っておかれたパンは少し固くなっていたので、早く食べた方がいいだろう。
 後はハムを焼いて、卵を焼いて――スープでも作るかな。
 適当にいろんな野菜をザクザク切って、鍋に放り込んで、ぐつぐつと煮る。
 切った野菜の中にトマトっぽいのがあったから(多分トマトなんだろう)、うっすらトマト味の野菜の旨味たっぷりのスープになるだろう。
 美味しそうだよね。

 台所は、かまどではなく、コンロだった。
 ガスでも電気でもないコンロ……多分、魔法のコンロなんだろうな。
 オーブンもあったけど、きっとこれも魔法のオーブン。
 どんなふうに魔法が使われているんだろうね。
 気になるけど、多分難しそうだから、便利で良かったって事で済ませてしまおう。
 霧吹きで軽く湿らせたパンをオーブンにつっこんで温めた後、たっぷりとバターを塗った。
 それからハムを焼いて、ハムから出た油で卵を焼いて、温めてバターを塗ったパンの上に乗せる。
 そうしているうちにスープも煮えて、塩コショウで味を調える。
 野菜たっぷりのスープはボリュームもあるし、体にも良さそうだし、あっさりしているから、いくらでも食べられそうだ。

「オリエちゃん!」

「何?」

「あっち……」

「え?」

 サーチートに声をかけられ、小さな手が指した方向――台所の入り口を見ると、ユリアナ王女とアルバトスさんが居た。
 どうやら様子を見に来てくれたらしい。

「美味しそうだね」

 と言ってもらえたのが嬉しくて、良かったら召し上がりますかと声をかけると、二人は頷いてくれた。
 食欲がないと言っていたけれど、少しでも食べる気になってくれたのなら、良かった。

 人間、食べられなくなったら終わりだと、常々私は思っている。
 逆に、例え病気だとしても、物を食べられるのなら、まだまだ頑張れるのではないかとも思うのだ。

 ユリアナ王女とアルバトスさんの分のパンを温め、自分の分と同じようにハムを焼いて卵を焼く。
 それからスープをよそって、私たちは三人と一匹で、「いただきます」と言って手を合わせた。
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