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第2章:オトメゴコロとオトコゴコロ
2・大好き過ぎて気絶しちゃう
しおりを挟む気絶した灯里が意識を取り戻すと保健室だった。
だが、灯里を心配して様子を見に来た尊を見て、灯里はまたすぐに気絶してしまった。
大好きで仕方ない人に再会できたのが嬉しくてたまらないというのに、灯里は尊を見るたびに緊張して気絶を繰り返してしまう。
だから、灯里のクラスの担任になった尊は、しばらくの間、自分は灯里に嫌われているのだと思っていたらしい。
その誤解を解く事が出来たのは、灯里の従兄である聡のおかげだった。
尊は聡の高校時代の後輩だったらしく、自分を見れば目をそらしたり気絶したりする灯里の事が心配で、聡に相談したらしい。
「古城は、俺が嫌いか?」
大好きな尊を目の前にまた気絶してしまいそうになりながら、灯里は必死になって首を横に振り続けた。
大好きな人にそんな誤解をさせていた自分が恥ずかしく、情けなかった。
「わ、わ、私は、先生を嫌ってなんか、いませんっ」
尊の誤解を解くために、灯里は必死になって彼の目を見つめ言った。
尊は灯里の言葉に安心したようだが、
「じゃあ、なんで俺から目をそらすんだ? なんで気絶するんだよ?」
と聞いてきた。
その疑問は当然の事だったが、灯里には、あなたの事が好きだから好き過ぎて気絶してしまうのだ、なんて言えなかった。
思わず尊から目をそらした灯里の耳に、
「ちぇ~。やっぱ、俺のこと、嫌いなんじゃねぇのぉ?」
尊の拗ねたような声が届く。
少し可愛いその口調に、きゅうっ、と胸が締め付けられてしまった灯里は、彼の誤解を解き嫌いではないのだと伝えたくて、思わず本当の事を言ってしまった。
「違いますっ! わ、私は、先生の事が嫌いなんじゃありませんっ! わ、私は昔からずっと先生の事を好きで、大好きで、大好き過ぎて、だ、だから緊張して、嬉しくて気絶しちゃうんですっ!」
「へ?」
「え?」
自分が何を言ったかという事に気づいた灯里の精神は、限界を迎えた。
だが、意識を手放しかけた彼女は、尊に軽く頬を叩かれてなんとか持ちこたえた。
尊は灯里の顔をじっと見つめると、嬉しそうに笑う。
「そうかぁ、古城は俺を嫌ってなかったんだな? 本当に良かった。俺、やっと安心したよ。そっかー、気絶しちゃうほど、古城は俺が好きだったのかー。でもな、俺、やっぱ気絶しねぇでほしいから、これからは気絶しねぇように頑張ってくれよな」
灯里の告白を、尊はただ灯里に嫌われていないという事だけ理解し、本気のそれだと思わなかったらしい。
彼は灯里の頭を軽く撫でると、
「じゃあな、古城。また学校でな!」
と言い、久しぶりに会った聡と出かけて行ってしまった。
二人を見送った灯里は、ふう、と息をつく。
さっきのは、本当の気持ちで本気の想いだったのに。
尊に想いが伝わらなかった事を灯里は哀しく思ったが、それは仕方がない事なのかもしれないとも思った。
尊は十年前のあの一日の事を覚えていないだろうし、彼はあんなにカッコ良く素敵な大人になったのだ。
今までだって何人もの女の子に告白をされてきたはずだし、今の灯里の告白もそれと同じようなものだと思われたのだろう。
それに、彼と自分は先生と生徒だ。
例え、尊が灯里の告白をホンの少しだけでも気にしてくれたとしても、生徒である自分に告白されても困るだけだろう。
「せめて、気絶しないように、頑張ろう……そして……」
彼にとって少しでも良い生徒になってみよう。
灯里はそう思い卒業までの一年を過ごす事にした。
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