西園寺家の末娘

明衣令央

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第6章:不和

12・寮での生活

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「小花、具合はいかがですか?」

「茉莉花!」

 夕方になると、学園から戻ってきた茉莉花がお見舞いに来てくれた。
 部屋で昌央と遊んでいた私は、彼女を部屋に招き入れる。

「まりー!」

「昌央ちゃまー!」

 昌央が茉莉花に駆け寄って抱き着いた。すっかり仲良しだなぁ。

「まり、なりは?」

「はい、戻られているようですよ。行かれますか?」

「いく!」

 嬉しそうな顔をして、昌央は私の部屋から飛び出して行った。
 一人で大丈夫かと少し心配になったけれど、すでに周央寮に入り浸っているらしいし、それにこの部屋には入って来なかったけれど、部屋の外には厚くんが居るみたいだから、大丈夫だろう。

「小花、元気になったようで、良かったですわ」

「ありがとう。いろいろ心配かけちゃって、ごめんね」

「本当ですわ。でも、目が覚めて本当に良かったです。安心しましたわ」

 茉莉花は嬉しそうに笑ってくれたけれど、ちょっと涙を浮かべていた。
 本当にたくさん心配かけちゃったなぁと思う。
 それから、私が意識を失っている間に、いろんなことがあったみたいだよね。

「茉莉花もここに住んでるんだよね。目が覚めたらここが周央の寮で、みんなここに住んでるって……なんか楽しそうで、嬉しい」

 私がそう言うと、茉莉花は苦笑したけれど頷いた。

「この寮は、四家の仲が悪いから、共同生活をさせるために周央家が建てたものらしいですわ。あの日――わたくしたちは理事長に呼び出されていたでしょう? あれは、お説教とこの寮の話だったのですわ。話を聞いたとき、みんな反発していたのですが、今はとてもここでの生活を楽しんでいますのよ」

「本当?」

「えぇ。少なくとも、わたくしとお姉様は、ここでの生活が楽しいですわ。昌幸様のお食事、とても美味しいですし」

「うんうん、おじいちゃんとおばあちゃんもここに住んでるって聞いて、びっくりしたよ」

「わたくしたちもですわ! 最初はみんな、本来お守りしなければならない方にお食事を作っていただくなんて、許されることではないという話も出ていましたけれど、昌幸様も栄様も、自分たちはただの食堂のおじいさまとおばあさまなのだと言われて、わたくしたちに美味しいご飯を食べさせてくださいますの。今ではすっかり甘えてしまっていますわ。北御門のご兄弟なんて、いつもたくさんお代わりをされているのですよ」

「へぇ、そうなんだ。じゃあ、将成さんと英寿さんも、ここの生活を楽しんでいるってことなのかな」

 私がそう言うと、茉莉花は笑いながら頷いた。


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