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第5章:闇
26・真中の後悔
しおりを挟む「ねぇ、小花、もしかして麗華と、何かあった?」
ゆう兄たちが来なかったから、しょんぼりしていたおばあちゃんを慰めて、そろそろ寝ようとしていた時、叔父さんがこっそりと声をかけてきた。
「え? どうして?」
「何となく、かな。もしかして、小花と麗華は、あんまり仲良くない?」
何て答えようかと一瞬迷ったけど、私は素直に頷いた。
仲良くないどころか、ものすごく嫌われている事と、その理由は言わなかったけど。
「そうかぁ。やっぱり離れて暮らしていたからかな。ごめんね、小花。僕たちがもっと、西園寺家と関わらせるようにするべきだったよ」
どういう事なのだろうと、私が首を傾げると、言葉通りの意味だよ、と叔父さんは困ったような顔で笑った。
「姉さんが亡くなってから、西園寺家で優介と麗華、真中家で千隼と小花を育ててきた。うちは自営業だから店もあるし、忙しかったっていうのもあるけれど、離れ離れの兄弟を定期的にでも会わせようとしなかった事は、僕たち大人の責任だよ。多分、父さんも母さんも同じ事を思っていると思う。ごめんね、小花」
「そんな、謝らないでよっ」
小さなちい兄と、生まれたばかりの私を育てるのは、大変だったに決まっている。
それでもおじいちゃんとおばあちゃん、そして叔父さんは、ちい兄と私に、たくさんの愛情を注いで育ててくれたのだ。
謝ってもらわなければならない事なんて、何一つない。
「ありがとう、小花。でもね、僕ら……少なくとも僕は、今、ものすごく後悔しているんだ。今日、優介に会って思った。優介と麗華は、西園寺家でどんなふうに育てられたんだろうって。忙しかったなんて、ただの言い訳だ。あの二人が西園寺家でどうしているだろうって、もっと考えるべきだったんだ。本当に、もっと子供の頃から四人を会わせるようにしていればっ」
「叔父さん……」
「あのね、小花。前に父さんが話をしていたけど、真中はね、普通の人間として生きる道を選んだ。それは言い換えれば、周央や四家から逃げたという事でもあるんだよ。だから姉さんが亡くなった後、僕らは離れ離れになった君たちを会わせる事に、積極的じゃなかったんだ。真中と西園寺家の間を取り持ってくれていた姉さんが居なくなってしまったって事もあるけど……あぁごめん、言い訳ばっかりしているね、僕」
「そんな事ないよ! 絶対に叔父さんたちのせいじゃないし! お願いだから、そんなふうに言わないでよ!」
そう、叔父さんやおじいちゃんたちのせいじゃない。
麗華さんは、私が生まれた事でお母さんが亡くなってしまったから、私の事が嫌いなんだから。
こんな事、私を大事に育ててくれた叔父さんには言えないけどね。
「小花……何か困った事があったら、どんな事でもいい。相談するんだよ。父さんたちに言えなくても、僕には言ってほしい。父さんたちに比べて、年齢は小花寄りだから、まだ相談相手になれると思うんだ」
「うん、ありがとう」
叔父さんは口にしないだけで、私が麗華さんに嫌われている事に気が付いているのかもしれなかった。
いや、もしかして叔父さんだけでなく、おじいちゃんやおばあちゃんも気づいているのかもしれない。
だからこそおばあちゃんは、ゆう兄がみんなでここに来るって言ったのを、あんなに喜んで楽しみにしたのかもしれなかった。
「じゃあ、おやすみ、小花」
「うん、おやすみなさい」
叔父さんと別れて自分の部屋に向かい、私は考える。
明日、ゆう兄と会えたらいいけど、会えなかった時は、ちい兄にゆう兄の事を聞いてみよう。
ゆう兄の事だけじゃなく、麗華さんの事も聞いてみて……みんなが仲良くできる方法がないか、相談してみよう。
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