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第5章:闇
6・変わらない態度
しおりを挟む渚ちゃんと真紀ちゃんは、朝練にも授業の方にも来なかった。
多分、ちい兄や賢さんが話をしたんだろうと思っていたけれど、その通りだったようで、休み時間にちい兄が教えてくれた。
渚ちゃんはちい兄の前で、わかったと頷きはしたものの、まだ納得がいかない表情をしていたらしく、ちい兄は渚ちゃんの事を、結構頑固だと言って、苦笑していた。
ちい兄の隣では七海さんと亜紀さんが、また何度も私に謝ってくれた。
亜紀さんの話では、賢さんが真紀ちゃんに話をしたけれど、真紀ちゃんもまだ納得がいかない表情をしていたらしい。
ちい兄は、私にはまた気にするなって言ってくれたけど、やっぱり気になってしまう。
渚ちゃんも真紀ちゃんも、一体私にどうしてほしいんだろう。
放課後、妖滅フロアに行くと、渚ちゃんと真紀ちゃんがいた。
二人は私を見ると、鋭い視線を向けてきた。
怒っていると一目でわかる表情だ。
ちい兄と賢さんが話をしてもなお変わらないとは、本当にどうしたらいいのだろう。
二人の態度が変わっていないのに、ちい兄も気がついたようだった。
眉を顰めたちい兄が渚ちゃんの方に向かおうとしたのを、私は止めて首を横に振った。
とても残念だけれど、私が気にしなければそれで済む話なら、これも訓練の一つなのだと思うようにする。
「悪いな、小花ちゃん」
真紀ちゃんの態度が変わらない事についてだろう、賢さんが謝ってくれた。
「真紀には、これ以上おかしな態度をとるようなら、大ちゃんに話をしなければならないって言っておいたんだけど、全く変わらないな」
「うん」
まだこの場に大樹さんが来ていないって事もあるだろうけど、真紀ちゃんの態度は、むしろひどくなっているような気がする。
「でも、あいつ、悪い奴じゃないんだ。真面目でしっかり者で、努力家なんだ。小花ちゃんなら、本当のあいつの事、わかってくれているって思う」
賢さんの言葉をきいて、うん、と私は頷いた。
確かに真紀ちゃんは、真面目でしっかり者で、努力家のいい子だ。
ただ、仲良くしてた時と今の彼女との差が、激し過ぎる。
渚ちゃんもそうだけれど、今の彼女たちは、私の事をただ嫌っているというよりも、憎んでいるという感じだ。
「私はね、真紀ちゃんとも渚ちゃんとも、またみんなで仲良くしたいって思っているんだよ」
ぽつりと呟くと、賢さんは私の頭にぽんと手を置いた。
「ありがとうな、そんな日が来るように、俺もまたあいつに話をしてみるよ」
「うん、よろしくお願いします」
賢さんが、ちょっと乱暴に私の頭を撫でる。
「ちょっと、賢さんっ」
あまりに撫で回すものだから、賢さんが私の頭から手を離した時には、本当にぐちゃぐちゃになってた。
軽く睨みつけると、賢さんは、
「小花ちゃんは、怒った顔も可愛いなぁ。でも、笑った顔の方が、もっと可愛いよなぁ」
なんて、軽口をたたく。
「女の子はやっぱり、素直で可愛いのがいいよな。その…、小花ちゃんは最高に笑顔が可愛いし、完璧だな。お嫁さんにしたいくらいだぜ」
賢さんはまなかのお店に通っていた頃から、こういう事を言っていたなぁ。
でも、賢さんが女の子に可愛いって言うのは、こんにちはと同じ意味なんだもんね。
この人、きっと、誰にでも言っているんだろうなぁ。
「ねぇ、賢……あなた、その子の事、好きなの?」
知らない女の人の声が聞こえて、私は声がした方向へと目を向けた。
声は、賢さんの後ろから聞こえていた。
その人は、いつの間にか賢さんの後ろに居たのだ。
「え……?」
彼女は私の知らない人だけれど、私が知っている人にとても良く似ていて――だけど、ものすごく憎しみの籠った目をして、私の事を睨みつけていた。
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