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第3章:四家と妖滅
21・東宮司の風
しおりを挟む「あぁ、やっぱ小花ちゃんは面白いなぁ……本当、すごいぜ。北御門の大将に、そんな感想を言っちまうなんて、度胸あるよなぁ。なぁ、大ちゃん」
もちろん将成さんへの私の発言を笑っていたのは、北と南の本家、分家だけではない。
絶対笑っているだろうなぁと思っていた賢さんは、お腹を抱えて体を震わせて大爆笑していた。
でもね、大樹さんの方は、笑っていなくて、
「確かに面白いな。でも、小花の思った通りの感想なのだから、それでいいと思う」
って言ってくれる。賢さんは、確かに、と頷きながらも、私と目が合うと、また吹き出した。
大樹さんと賢さんは、性格が真逆だ。
感情の起伏が控えめな大樹さんと、起伏が激しい賢さんは、足して二で割ればちょうどいいと思う。
「さてと、最後は俺かな」
そう呟くように言った大樹さんに、賢さんが竹刀を差し出した。
「ほい、大ちゃん。小花ちゃんにカッコいいとこを見せてやんなよ」
「あぁ」
頷きながら竹刀を受け取った大樹さんは、私へと目を向けると、
「小花、俺の事も、ちゃんと見てろ」
と言って、妖滅室へと向かった。
優しいけれど真剣な目で見つめられて、どくんと胸が大きく鳴った。
大樹さんは、やっぱりカッコいい。
「小花ちゃん、大ちゃんの事でわかんない事があれば、何でも俺に聞きな。俺が全部答えてやっからよ」
「うん、ありがとう」
賢さんの言葉に頷くと、大樹さんが貴美さんに、「いつも通りで」と答えていた。
大樹さんも蘭華さんや将成さんと同じように、レベル10を十回連続でやるらしい。
「小花ちゃん、大ちゃんは、風で斬るぜ」
「え? 風で、斬る?」
「おう。すげぇ、カッコいいぜ」
「そ、そうかぁ……」
風で斬る……それは賢さんの言葉通りで、大樹さんはいろんな形の風を見せてくれた。
大樹さんが竹刀を一振りすると暗闇がすっぱりと割れた。
また、激しい竜巻が巻き起こり、黒い妖気を巻き込んで浄化した。
風が獣の形に姿を変え、黒い妖気へと襲いかかりもした。
「す、すごい……」
形を変える様々な風を目にして私が思った事は、とにかくすごい、カッコいいという感想の他、各家に授けられた力は、使う人によって無限なのだろうという事だった。
多分大樹さんは私にわかりやすいように、いろんな風の力の使い方を見せてくれているのだと思う。
「なぁ、小花ちゃん、大ちゃん出てきたら、渡してやって」
賢さんからタオルを渡され、私は頷いた。
妖滅室から出てきた大樹さんに、お疲れ様でした、という言葉と共にタオルを渡すと、大樹さんはタオルを受け取りながら、優しく目を細めた。
ありがとう、とお礼を言われ、ちょっと照れてしまった。
やっぱり大樹さんって、すごくカッコいい。
「小花、どうだった? 何か気づいた事はあるか?」
「うん、大樹さんがいろんな風の力を見せてくれたから、人それぞれ力の使い方があるんだなって思った。炎の力も、大地の力も、多分使う人によって違うんだよね」
「あぁ、そうだ。それがわかってもらえたら、それでいい。あとはお前の力の使い方を探せ。使える力の本質について考えればいい」
うん、と私が頷くと、大樹さんも満足したように頷いた。
「あとね、大樹さん」
「なんだ?」
「すごく、カッコ良かった」
「え?」
私がカッコいいと褒めると、大樹さんは照れくさそうに笑って、顔を赤くさせた。
カッコいいけど、可愛いとも思った。大樹さんはギャップ萌えが激しい。
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