36 / 115
第3章:四家と妖滅
18・力の使い方
しおりを挟む「将成、蘭華、小花に四家の使い方を教えたい。お前たちの妖気浄化を見せてやってくれ」
大樹さんの言葉に、将成さんと蘭華さんは苦笑した。
「西の手伝いか? お前は、物好きだな」
「本当ですわ。ただでさえ、西のおかげで、わたくしたちの負担が増えておりますのに」
西って、西園寺家の事だよね。一体どういう事なんだろう?
ふと視線を感じて振り返ると、ちい兄が渋い表情をしていた。
ちい兄の後ろでは、渚ちゃんと渚ちゃんのお姉さんが、将成さんや蘭華さんを睨みつけるように見ていて、驚いてしまう。
「西は、分家の躾けもなっていませんわね」
「全くだ。他の四家にその態度とは、な」
呆れたように、将成さんと蘭華さんが言った。二人の後ろでは、北と南の分家は片膝をついて控えている。
将成さんと蘭華さんの言う躾けというのは、こういうのなのかもしれない。
「東の分家も、大概ですけども」
「まぁ、奴は別格だからな」
将成さんと蘭華さんはため息をつくと、同じ方向へと目を向けていた。その方向へと目を向けると、賢さんが居た。
「よお、北御門の大将と、南の蘭華姫、おはようさん。なぁ、大ちゃん、急がないと、小花ちゃんに何も教えられないまま、朝練終わっちまうぜ」
賢さん……四家の次期当主たちに、なんて言葉遣い……だけど、将成さんと蘭華さんは渋い表情をしたものの、賢さんの態度を許しているようだった。
奴は別格だからな、と言った将成さんの声が、頭の中に蘇る。
どうして賢さんは別格なんだろう?
私の知らない事は、たくさんある。
いろいろと知りたい。早く覚えなくっちゃ。
「将成、蘭華、さっさと手本を見せてやってくれ」
「あぁ、わかった」
「はいはい、わかりました。では、ご覧下さいな」
大樹さんの言葉に頷き、将成さんと蘭華さんは、それぞれ別の妖滅室へと足を向ける。
六つある部屋のうちの、端の二つ。どうやら端にある四つの妖滅屋は、四家で一つずつ使っているらしかった。
「将成さん、蘭華さん、レベルはどうしますか?」
貴美さんの声に、将成さんも蘭華さんも、「いつもと同じで」と答える。
いつもと同じってどれくらいだろうと考えていると、
「小花、レベル10だ」
と、大樹さんが教えてくれた。
「え? 十倍?」
「違う、百倍だ」
「え?」
私は耳を疑った。レベルって、確か妖気の放出量って言ってたはずだ。
百倍って、どのくらいの量なのか、全く想像できない。
「小花、レベルは、1から3までは、その数字の通りだ。だが4が五倍、5が十倍、6が二十倍、というように増えていき、レベル9が五十倍、レベル10は百倍の妖気放出量になる」
「へ、へぇ~」
「いいか、小花。お前がこれから力の使い方を覚えるにあたり、参考にするのは、四家の者だ。四家と分家では、力の使い方が違う。得物なんて後からでいい。先に力の使い方を理解しろ」
「はいっ!」
もちろん疑問に思う事はたくさんあったけれど、一度にいくつも理解する事はできないし、私は大樹さんを信じて頷いた。
「大樹さん、では、わたくしから始めますわよ」
蘭華さんから声がかかり、私は声がした方へと目を向けて、驚いた。
蘭華さんは、弓だけを持って、妖滅室に一人で立っていた。
レベル10は、百倍の妖気放出量だと言っていた。それなのに一人で浄化を行うのかと疑問に思うばかりだ。
「では、蘭華さん、妖気レベル10の妖気放出を行います」
「はい、お願いいたしますわ」
貴美さんの声に蘭華さんが頷くと、蘭華さんが居る妖滅室に、黒いモヤモヤとした妖気が放出される。
あのモヤモヤ、一体どこから放出されているんだろう?
妖滅室は透明なガラスで覆われた部屋なのに、あのモヤモヤはどこからともなくあの妖滅室の中に現れる。
そういう術式が使われているって事なんだろうけど、レベル10……百倍の妖気は、あっという間に妖滅室を暗闇にしてしまった。
「蘭華さんっ」
蘭華さんは大丈夫なのかと心配すると、
「小花! お姉様は、大丈夫ですわ!」
という、茉莉花ちゃんの声。
そして次の瞬間、黒い妖気で満たされた妖滅室の真ん中あたり――蘭華さんが一人立っていたあたりで、弓の形に炎が上がった。
0
お気に入りに追加
120
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

「魔王のいない世界には勇者は必要ない」と王家に追い出されたので自由に旅をしながら可愛い嫁を探すことにしました
夢幻の翼
ファンタジー
「魔王軍も壊滅したし、もう勇者いらないよね」
命をかけて戦った俺(勇者)に対して魔王討伐の報酬を出し渋る横暴な扱いをする国王。
本当ならばその場で暴れてやりたかったが今後の事を考えて必死に自制心を保ちながら会見を終えた。
元勇者として通常では信じられないほどの能力を習得していた僕は腐った国王を持つ国に見切りをつけて他国へ亡命することを決意する。
その際に思いついた嫌がらせを国王にした俺はスッキリした気持ちで隣町まで駆け抜けた。
しかし、気持ちの整理はついたが懐の寒かった俺は冒険者として生計をたてるために冒険者ギルドを訪れたがもともと勇者として経験値を爆あげしていた僕は無事にランクを認められ、それを期に国外へと向かう訳あり商人の護衛として旅にでることになった。
といった序盤ストーリーとなっております。
追放あり、プチだけどざまぁあり、バトルにほのぼの、感動と恋愛までを詰め込んだ物語となる予定です。
5月30日までは毎日2回更新を予定しています。
それ以降はストック尽きるまで毎日1回更新となります。

婚約破棄騒動に巻き込まれたモブですが……
こうじ
ファンタジー
『あ、終わった……』王太子の取り巻きの1人であるシューラは人生が詰んだのを感じた。王太子と公爵令嬢の婚約破棄騒動に巻き込まれた結果、全てを失う事になってしまったシューラ、これは元貴族令息のやり直しの物語である。

不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。
桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。
戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。
『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。
※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。
時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。
一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。
番外編の方が本編よりも長いです。
気がついたら10万文字を超えていました。
随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!

英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる