Detectiveは宇宙人

飛鳥 進

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第弐話-酸素

酸素-14

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「いい加減にしてください! 不当逮捕だ!!!」
 机をバンっと叩いて酸部は抗議する。
 酸部を逮捕してからというもの、一向に自供せず終いにはこの様な事を言いだしてしまう始末。
 警視庁の刑事達は頭を抱え、一部の刑事達の中では酸部が犯人ではないという声がちらほらと上り始めていた。
 勿論、その責任は逮捕してきた誠にあると誠の進退問題に発展しそうな雰囲気になっていた。
「だ・か・ら、お前がやったんだろ!!」
 誠はそんな事お構いなしに酸部の取り調べをしていた。
「だ・か・ら、私がやったという証拠を見せてみろっ!! 人権問題だ!!!」
「何が人権問題だ!! コノヤロォォォォォ!!!」
 普段、冷静な誠が掴みかかろうとするのをマジックミラー越しで見て愛子は意外な一面を見たと心底驚く。
「じゃ、それ持って行こうか」
 新三は愛子の両手で抱えられている例の機械を見て愛子を取り調べ室に連れていく。
 ドアを開けるや否や新三は開口一番「オキシジェン・デストロイー!」と大山のぶ代版ドラえもん風に声を出して部屋に入って来る。
「あ~重い!!」机の上にオキシジェン・デストロイを置いた愛子。
「あ、あのこれは?」
「これはねぇ」新三が説明を始めようとすると酸部が「ひぃっ!!」と声を上げる。
「な、何でこれがここにあるんだ!!」
「おっ、知っているんだ。だったら、話は早い」
 新三はそう言いながらオキシジェン・デストロイからホースを取り出して酸部の口に当てようとする。
「や、やめろぉ~」全力で抵抗する酸部だったが誠に羽交い絞めにされあっさりとホースを口につけられる。
「ングゥーングゥー」
 何か喋っているようだったが無視して三人は各々作業を始める。
「これで準備完了です」オキシジェン・デストロイの起動準備が終わった事を告げた。
「さ、始めましょうか」
「あのいい加減に説明してくれませんか? これなんです?」誠は機械の説明を求める。
「ま、やってからのお楽しみ」答えをはぐらかす新三は話を続ける。
「じゃ、愛子ちゃん。宜しく」
「はい」
 愛子がスイッチを押すと、「ポチっとな」という起動音と共にバキューム音が機械から鳴り酸部の口が吸引される。
 吸引が終わると同時に息を吐き出す酸部が落ち着くのを待って、ホースを取り外す。
「さ、この機械を鑑識に持って行きな」新三は誠にそう告げる。
「はい。でも・・・・・・」
 誠はこの機械を持ってどうすれば良いのかという顔で新三を見る。
「あの私が説明しますので連れていって下さい」
「分かりました。お願いします」
 誠はすぐ様、機械を抱えて取調室を出ていく。
 それを見送った新三は酸部に向き合って座ってこう言うのだった。
「さ、お話しましょう」と。
 その頃、廊下では誠が機械の素性を愛子に尋ねる。
「これ、何なんですか?」
「これはオキシジェン星人特有の物質を検出できる機械です。それで小永さんがこの検出された物質のDNA型が酸部のDNAと一致するか調べようと思って持って来たんです」
「そうでしたか。ありがとうございます」
「いえいえ、事件解決の為に役に立つのは市民の役目ですから」
 そんな会話していると鑑識班の部屋に着いた。
 二人は早速、鑑識捜査員に事情を説明しすぐさま鑑定してもらう。
 それから2時間近く経った。
 休憩所で待っている愛子と誠の下に鑑識捜査員が駆け寄って来る。
「ビンゴです!」そう言って鑑識結果が記載された紙を誠に渡す。
「そうでしたか。ありがとうございます」
「行きましょう。巽川さん」
 二人は急いで新三が居る取調室へと向かう。
 部屋に入ると酸部が泣き崩れていた。
 何があったか理解出来ない二人を見てピースする新三。
「な、何があったんですか?」愛子が状況説明を求める。
「何がって、自供させたんですけど」と自信満々の新三と打って変わって泣きじゃくり続ける酸部であった。
「じゃ、後は宜しく」新三はそれだけ言うと部屋を出ていった。
 残された愛子と誠は酸部が落ち着くのを待ってから取り調べを再開する。
「お待たせしました。貴方がご所望の証拠を持ってきました」誠が話を切り出す。
「そうか・・・・・・・」
 しゅんとして下を向いたままの酸部は誠の話を聞く。
「これを見てください」
 誠は鑑識結果が記載された紙を酸部の前に差し出す。
「そうだよ。俺がやった」
「やけに素直ね。あれだけ私達を挑発するかのような態度をとっていたのに、どうして?」
 酸部のこの態度に疑問を持った愛子は、質問する。
「それは・・・・・・クソっ!!」膝で机を蹴り上げる。
「自分が捕まるとは思っていなかった?」
 愛子の質問に酸部は頷いて認める。
「じゃあ、どうやって殺害したのか。教えてもらおうか?」誠にそう促され酸部は犯行時の事を話し始めた。
「最初は地球に逃亡してきて・・・・・・・・」
 酸部は数々の星で殺人事件を起こし、暫く鳴りを潜める為地球へと来訪した。
 そこで酸部 素男と言う地球人の戸籍を手に入れ、上手いこと取り入って亜宇が働く会社に入社するまでこぎ着けた。
 それから地球の風習や社会制度等を学習した結果、地球人類には自分の犯行を立証する能力がないと踏んだ酸部は行動を起こした。
 最初は観光地で事を起こすことにした。
 大勢が居る中で事件を起こして警察の反応を確かめようと思い、相手が外国人だと国際問題に発展して大々的に捜査される可能性もあるので、ターゲットを外国人を絞って行動を起こした。
 しかし、事件から一週間経ってもニュースで大々的に報じられる事もなかった。
 酸部はそこで次の事件を起こそうと決めた。
 次はターゲットを子供に設定し営業に出たついでに住宅街を走らせていた時、目星となる小学生を発見した。
 車越しに道を尋ねるという名目で接触して、殺害した。
 だが、ニュースでは報じられなかったが動きはあった。
 誠達である。しかし、その矛先は自分ではなく同僚の三目 亜宇に向いている事を知った酸部は挑発に出た。
 愛子の尾行に気づいている素振りを見せ愛子の目の前で深呼吸までしたが、自分の犯行だと気づいていないと確信した酸部。
 そして、遂に自分の気に食わない人間を殺害する。それが三人目の被害者であった。
 何となくすれ違った際、気に食わない顔だと思い殺害した。
 それから間もなくして亜宇の行動がよそよそしくなり、警察と接触しかつ自分に疑いの目がかかっていると察した酸部は地球から離れる事を決めた。
 そして、今に至る。
「というわけだ」自供を終えた酸部の身体は小刻みに震えていた。
「ねぇ、自供してくれたのは良いんだけど。何で震えているの?」
「それは言えない」愛子の質問に答えず、まだぶるぶると身体を震わせている。
 そこから、誠による取り調べが夜を通して行われるのであった。
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