Detectiveは宇宙人

飛鳥 進

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第壱話-開始

開始-2

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 事件現場はビルとビルの間の狭い路地で起きていた。
 野次馬が群れを成して死体を覗こうと群がっている中を、新三と愛子は搔き分けて中に入ろうとする。
 入口で野次馬どもを制止している制服警官の所までに辿り着いた二人。
「誠っちは居ますか?」
 新三は制服警官に誠っちと呼ばれる存在の有無について尋ねるが、変な野次馬が来たと思われたのか終始、無視し続けられる。
 愛子は横でそれを見ていたが一向に取り繕ってもらえず無駄な時間が過ぎていく。
 しびれを切らした愛子。
「あのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
 その場で大きな声をあげ周囲を凍り付かせる。
「君、大声出さないで!!! 捜査の邪魔になるから」制服警官に注意を受ける愛子はそんなの知るかといった感じで新三にこう言うのだった。
「あんた、お巡りさんに用件を言いなさいよ」
「は、はい。誠っち居ますか?」
 愛子に促され、新三は愛子の言葉遣いが気になりながらも制服警官にそう伝える。
「誠っち?」
 制服警官はその人物の事を知らないのか首を傾げる。
「誠っちじゃ、分からない。ちゃんとした、名前を言いなさい」
 低年齢の子供を躾ける母親というのは、こんな感じなのかと思う愛子。
「え~と、名前は・・・・・・・」
 眉間に皴を寄せて誠っちの本名を思い出そうとする新三を見て、愛子は心の底から新三を軽蔑する。
「私の事ですので、彼らを中に通してください」
 そう制服警官に告げる高身長のイケメン刑事。
「カッコイイ」素直な気持ちが愛子の口から出る。
「ど、どうぞ」
 制服警官は不服そうに新三と愛子を中に入れる。
 少し歩いたところで、愛子は誠っちと呼ばれる人物と名刺交換をする。
「私、Star of Lightの深見 愛子と申します」
「これはご丁寧にどうも。
私は警視庁捜査一課刑事の巽川 誠たつかわ まことと言います。
貴方を初めて見ますが、もしかして新人の探偵さんですか?」
「はい!」愛子は元気よく返事し、誠の顔を見てうっとりする。
「そうですか。厄介な人間を押し付けられて大変でしょうね」
「そうなんです」
 愛子は心の中で「救いの神、現る!!!」と叫ぶ。
「それでですね。彼に用というのは・・・・・・・・」
 誠が初めて臨場した愛子に呼び出した理由を話そうとすると、邪魔するかのように新三が誠に話しかけてきた。
「誠っち。この人、アクシツの人だね」
 新三は倒れている被害者を見ながらそう告げ、愛子もその言葉が気になり被害者を見る。
 被害者は如何やら刺殺だったらしい。
 白のカッターシャツに血が染み込んでいた。それも青い色の。
 その血の色に目を疑う愛子を他所に誠と新三は話を続ける。
「アクシツ、ですか?」
「そう、アクシツ。服装みりゃ分かるじゃん」
 新三の言葉が気になり、愛子は被害者の服装をまじまじと見る。
 被害者が身に纏っている服は、ジャケット、カッターシャツ、ネクタイ、ズボン、靴全て白で統一されており、これだけでアクシツと呼ばれる人種に判断できる新三が不思議でしかたない愛子。そもそもアクシツとは何ぞや、愛子は頭の中で持っている知識をフルに働かせていた。
「それに見てみろよ、この顔から察せられる雰囲気。誠実かつ胡散臭い感じがムンムンだろ?」
「は、はぁ」
 誠も新三の言っている事が理解できないのか、困り顔で適当に相槌を打つ。
「あ、あの、もしかしてこの人は人間じゃないんですか?」
「そうだよ。意外と馬鹿なじゃないんだね」
 愛子は新三にそう言われ、殺人現場で不謹慎ではあるが殺意が愛子の心の奥底から湧く。
「そ、そうなんですぅ~」
 顔を引きつらせながら、何とか平常心を保とうと愛子は努力する。
「それより、犯人は分かりますか?」
 誠のその言葉に今度は耳を疑う愛子。
「この人、見ただけじゃ分かんない」
「そうですか・・・・・・・・」
 下唇を噛み、悔しがる誠。
「で、これ強盗なの?」
「いえ、財布等が盗まれた痕跡はありませんでした」
「そう、通り魔の可能性は?」
「それについては、鋭意捜査中です」
「ふ~ん」
「あの、一つ良いですか?」愛子が発言を求める。
「何でしょうか」
「どうして、警察が探偵を呼ぶんですか?」
「もしかして、深見さんは聞いていないんですか? 彼の本当の業務を」
「聞いてません」
 愛子がきっぱりと答えると、少し戸惑いながら誠は説明を始める。
「実は被害者は地球人じゃないんです」
「へ?」このイケメンは何を言っているんだ、そう思いながら話を聞き続ける。
「それで今回のような場合に、小永さんを呼ぶ決まりになっているんです」
 愛子は何故そういう決まりなのか理由を尋ねると、誠もよく分からないとだけ答え話は平行線に入った。
「あのさ、聞き込み行くんでしょ。俺も連れてってよ」
「分かりました。今、課長に確認します」
 そう言って、誠は捜査一課長に連絡を取る。
「小永さん、どういう事なんですか?」
 新三に説明を求める愛子だったが、「さぁ?」の一言で片づけられた。
「OKが出ました。私の聞き込みと同行してください」
「分かった。良いよね? 愛子ちゃん」
「は、はい」
 この状況が全くもって飲み込めない愛子は、そのまま新三と共に誠の聞き込みに同行する。
 覆面パトカーに乗り被害者が最後に立ち寄ったとされる百貨店へと足を向けた三人。
 その車内で、愛子は今までの疑問全てをぶつけることにした。
「ここなら話しやすいですね。被害者が人間じゃないってどういう意味ですか?」
 愛子は運転する誠に質問する。隣に座っている新三に聞いても当てにならないと考えたからだ。
「言葉の通りですよ。僕に聞くより小永さんに聞いた方が良いと思いますけどね」
「いや、それは・・・・・・・・」
 流石に愛子も本人の前かつ先輩の悪口を言う鋼のメンタルを持ち合わせてはいなかった。
 その事を察してくれたのか、誠は自分の知る限りの新三が今まで行ってきた活躍を愛子に語り始める。
「変に思うのも無理はありませんが、小永さんの活躍は目覚ましいものがあるんですよ」
「そ、そうなんですね」
 イケメン刑事の言葉を信用して良いものか、愛子は心の中で葛藤する。
「何、その反応!! 誠っち、俺の活躍を愛子ちゃんに教えてあげて!!」
「てめぇは黙ってろ!!!」そう心の中で愛子は思いながら、誠の話に耳を傾ける。
「実はドS連続殺人事件を解決したのは、小永さんなんですよ」
「えっ!! 嘘ッ!?」
 思わず隣にいる新三を見ると、満更でもないといった顔で窓の景色を楽しんでいた。
 その姿にイラッときつつ、どういった事件だったのかスマホで調べ出す。
 ドS連続殺人事件とは、一か月前まで世間を賑わしていた殺人事件であった。
 被害者全員、全裸でSMプレイ仕様の吊しをされており犯人像がドS。それしか警察も掴めておらずマスコミも騒ぎ立ていた。
 そんなある日、一人のごく普通のサラリーマンが逮捕されたとの報道がされた。
 周囲の人間達の供述では、目立たず仕事はそつなくこなす男でその様な事件を起こす人物ではなかったと口をそろえて証言していたのだ。
 マスコミはこれも面白おかしく書き立てた。
 人の噂も七十五日といった所か、愛子もすっかり頭の中からも抜けていたニュースになっていた。
「本当にこの事件を小永さんが解決したんですか?」
「はい、そうですよ。それも一日で」
「一日!?」
 驚きのあまり腰を抜かす愛子を乗せた覆面パトカーは百貨店の地下駐車場に入っていく。
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