36 / 45
第3話-報道
報道-6
しおりを挟む
「だぁ~から、そんな話聞いていないんですよ!!」
ディレクターの男性が薫に語気を強めて言う。
「そんな訳ないでしょ。なんにしても共に行きますから」
薫はロケバスに乗り込もうとする。
「いやいや」ディレクターは身体を呈して乗り込もうとするのを阻止する。
「薫ちゃん、諦めよう」
「良いんですか? 言い出したのは、金智さんですよ」
「まぁ、そうだけど。無理強いしてまではねぇ~」
誰のためにやっているんだと内心、怒りに震えながら言う事に従おうと決めたのだが、そこで救世主が登場した。
「あ、すいません。私がいけなかったんです」そう謝罪しながら現れたミミである。
「なんだ。三邉さんのお知り合いか。だったら、良いですよ。さ、行きましょう」
ディレクターの豹変ぶりに驚かされながら、二人はロケに帯同する事となった。
ロケバスで薫がミミの隣に座り、京助は薫の真後ろの席に腰を下ろしてすぐにロケバスは走り始めた。
「それで、お話と言うのは?」ミミから話を切り出した。
「金智さん」
薫は話を京助に振る。
「あ、実は田沢さんには不倫相手が居たようなんですよ。何かご存じありませんか?」
「どうして、こういう場所でそのような話を?」
ミミの発言通り、テレビ局の人間だけではなく外部の制作スタッフも同乗していた。
「まぁ、身内を売るような話になってしまうのは分かっています。その上でお聞きしているんです。意地悪で申し訳ない」
ミミは京助のこの発言に不快感を覚えながら、周りに座るスタッフを見ると自分の作業に没頭しているようだったので話すことにした。
「そんな話、聞いたことありませんよ」
「そうですか。では、これに見覚えはありませんか? 薫ちゃん」
薫はバックからタブレットを取り出し、ミミに田沢さんが利用していたホテルの領収書の写真を見せる。
「このホテルについてなんですけど、経費名目が取材となっているんです。何の取材か、ご存じないでしょうか?」
「いえ、そこまでは」
タブレットから目を逸らしながら、ミミは答えた。
「そうですか。我々はこれが取材目的ではなく誰かと密会目的で利用されていたのではないかと推理して捜査しているんです」京助がそう言うと「警察が推理で捜査して良いんですか? 証拠に基づいて捜査するのが当然の義務ではないんですか?」至極まっとうなご意見を貰う京助と薫は面食らう。
「薫ちゃん、言われているよ」
「私ですか!? 金智さんの事でしょ」
そこから痴話喧嘩にも思える言い合いをしながら、麻布のレストランへと到着した。
目的のレストランは鉄板焼きの店で、ステーキが有名な店であった。
そして、店に入ってすぐ事が起きた。ミミが、嗚咽を漏らしながら大慌てでトイレに駆け込んだのだ。
「やっぱり、田沢さんの事件がショックだったんだな」スタッフの一人がそう呟いた。
「すいません。その発言だと、田沢さんと親密な関係にあるような物言いですよね? ちょっと、詳しくお話を聞かせてもらえませんか?」
薫は警察手帳を見せながら、スタッフに聞き込みを開始した。
京助はそんな事は眼中になく頻りとトイレの方を気にしていた。
「どうかしたんですか?」聞き込みを終えた薫に聞かれた京助は「もしかして・・・・・・」とだけ呟いて、う~んとうなりながら考え始めた。
「金智さん」
「あ、ごめん」我に返った京助は「彼女、妊娠しているのかも」と薫に耳打ちした。
「妊娠ぅ~」
薫が大声をあげて驚くので京助は咄嗟に薫の口元を押さえて、「何でもありません」と愛想笑いして聞いていたであろうスタッフ達に誤魔化すのだった。
ディレクターの男性が薫に語気を強めて言う。
「そんな訳ないでしょ。なんにしても共に行きますから」
薫はロケバスに乗り込もうとする。
「いやいや」ディレクターは身体を呈して乗り込もうとするのを阻止する。
「薫ちゃん、諦めよう」
「良いんですか? 言い出したのは、金智さんですよ」
「まぁ、そうだけど。無理強いしてまではねぇ~」
誰のためにやっているんだと内心、怒りに震えながら言う事に従おうと決めたのだが、そこで救世主が登場した。
「あ、すいません。私がいけなかったんです」そう謝罪しながら現れたミミである。
「なんだ。三邉さんのお知り合いか。だったら、良いですよ。さ、行きましょう」
ディレクターの豹変ぶりに驚かされながら、二人はロケに帯同する事となった。
ロケバスで薫がミミの隣に座り、京助は薫の真後ろの席に腰を下ろしてすぐにロケバスは走り始めた。
「それで、お話と言うのは?」ミミから話を切り出した。
「金智さん」
薫は話を京助に振る。
「あ、実は田沢さんには不倫相手が居たようなんですよ。何かご存じありませんか?」
「どうして、こういう場所でそのような話を?」
ミミの発言通り、テレビ局の人間だけではなく外部の制作スタッフも同乗していた。
「まぁ、身内を売るような話になってしまうのは分かっています。その上でお聞きしているんです。意地悪で申し訳ない」
ミミは京助のこの発言に不快感を覚えながら、周りに座るスタッフを見ると自分の作業に没頭しているようだったので話すことにした。
「そんな話、聞いたことありませんよ」
「そうですか。では、これに見覚えはありませんか? 薫ちゃん」
薫はバックからタブレットを取り出し、ミミに田沢さんが利用していたホテルの領収書の写真を見せる。
「このホテルについてなんですけど、経費名目が取材となっているんです。何の取材か、ご存じないでしょうか?」
「いえ、そこまでは」
タブレットから目を逸らしながら、ミミは答えた。
「そうですか。我々はこれが取材目的ではなく誰かと密会目的で利用されていたのではないかと推理して捜査しているんです」京助がそう言うと「警察が推理で捜査して良いんですか? 証拠に基づいて捜査するのが当然の義務ではないんですか?」至極まっとうなご意見を貰う京助と薫は面食らう。
「薫ちゃん、言われているよ」
「私ですか!? 金智さんの事でしょ」
そこから痴話喧嘩にも思える言い合いをしながら、麻布のレストランへと到着した。
目的のレストランは鉄板焼きの店で、ステーキが有名な店であった。
そして、店に入ってすぐ事が起きた。ミミが、嗚咽を漏らしながら大慌てでトイレに駆け込んだのだ。
「やっぱり、田沢さんの事件がショックだったんだな」スタッフの一人がそう呟いた。
「すいません。その発言だと、田沢さんと親密な関係にあるような物言いですよね? ちょっと、詳しくお話を聞かせてもらえませんか?」
薫は警察手帳を見せながら、スタッフに聞き込みを開始した。
京助はそんな事は眼中になく頻りとトイレの方を気にしていた。
「どうかしたんですか?」聞き込みを終えた薫に聞かれた京助は「もしかして・・・・・・」とだけ呟いて、う~んとうなりながら考え始めた。
「金智さん」
「あ、ごめん」我に返った京助は「彼女、妊娠しているのかも」と薫に耳打ちした。
「妊娠ぅ~」
薫が大声をあげて驚くので京助は咄嗟に薫の口元を押さえて、「何でもありません」と愛想笑いして聞いていたであろうスタッフ達に誤魔化すのだった。
0
第6回ホラー・ミステリー小説大賞で投票してくださった方々、誠にありがとうございました。お気に入り,エール,感想をお待ちしております。
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
尖閣~防人の末裔たち
篠塚飛樹
ミステリー
元大手新聞社の防衛担当記者だった古川は、ある団体から同行取材の依頼を受ける。行き先は尖閣諸島沖。。。
緊迫の海で彼は何を見るのか。。。
※この作品は、フィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
※無断転載を禁じます。

秘められた遺志
しまおか
ミステリー
亡くなった顧客が残した謎のメモ。彼は一体何を託したかったのか!?富裕層専門の資産運用管理アドバイザーの三郷が、顧客の高岳から依頼されていた遺品整理を進める中、不審物を発見。また書斎を探ると暗号めいたメモ魔で見つかり推理していた所、不審物があると通報を受けた顔見知りであるS県警の松ケ根と吉良が訪れ、連行されてしまう。三郷は逮捕されてしまうのか?それとも松ケ根達が問題の真相を無事暴くことができるのか!?
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
泉田高校放課後事件禄
野村だんだら
ミステリー
連作短編形式の長編小説。人の死なないミステリです。
田舎にある泉田高校を舞台に、ちょっとした事件や謎を主人公の稲富くんが解き明かしていきます。
【第32回前期ファンタジア大賞一次選考通過作品を手直しした物になります】
ヤマネ姫の幸福論
ふくろう
青春
秋の長野行き中央本線、特急あずさの座席に座る一組の男女。
一見、恋人同士に見えるが、これが最初で最後の二人の旅行になるかもしれない。
彼らは霧ヶ峰高原に、「森の妖精」と呼ばれる小動物の棲み家を訪ね、夢のように楽しい二日間を過ごす。
しかし、運命の時は、刻一刻と迫っていた。
主人公達の恋の行方、霧ヶ峰の生き物のお話に添えて、世界中で愛されてきた好編「幸福論」を交え、お読みいただける方に、少しでも清々しく、優しい気持ちになっていただけますよう、精一杯、書いてます!
どうぞ、よろしくお願いいたします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる