迸れ!輝け!!営業マン!!!

飛鳥 進

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第3話-報道

報道-6

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「だぁ~から、そんな話聞いていないんですよ!!」
 ディレクターの男性が薫に語気を強めて言う。
「そんな訳ないでしょ。なんにしても共に行きますから」
 薫はロケバスに乗り込もうとする。
「いやいや」ディレクターは身体を呈して乗り込もうとするのを阻止する。
「薫ちゃん、諦めよう」
「良いんですか? 言い出したのは、金智さんですよ」
「まぁ、そうだけど。無理強いしてまではねぇ~」
 誰のためにやっているんだと内心、怒りに震えながら言う事に従おうと決めたのだが、そこで救世主が登場した。
「あ、すいません。私がいけなかったんです」そう謝罪しながら現れたミミである。
「なんだ。三邉さんのお知り合いか。だったら、良いですよ。さ、行きましょう」
 ディレクターの豹変ぶりに驚かされながら、二人はロケに帯同する事となった。
 ロケバスで薫がミミの隣に座り、京助は薫の真後ろの席に腰を下ろしてすぐにロケバスは走り始めた。
「それで、お話と言うのは?」ミミから話を切り出した。
「金智さん」
 薫は話を京助に振る。
「あ、実は田沢さんには不倫相手が居たようなんですよ。何かご存じありませんか?」
「どうして、こういう場所でそのような話を?」
 ミミの発言通り、テレビ局の人間だけではなく外部の制作スタッフも同乗していた。
「まぁ、身内を売るような話になってしまうのは分かっています。その上でお聞きしているんです。意地悪で申し訳ない」
 ミミは京助のこの発言に不快感を覚えながら、周りに座るスタッフを見ると自分の作業に没頭しているようだったので話すことにした。
「そんな話、聞いたことありませんよ」
「そうですか。では、これに見覚えはありませんか? 薫ちゃん」
 薫はバックからタブレットを取り出し、ミミに田沢さんが利用していたホテルの領収書の写真を見せる。
「このホテルについてなんですけど、経費名目が取材となっているんです。何の取材か、ご存じないでしょうか?」
「いえ、そこまでは」
 タブレットから目を逸らしながら、ミミは答えた。
「そうですか。我々はこれが取材目的ではなく誰かと密会目的で利用されていたのではないかと推理して捜査しているんです」京助がそう言うと「警察が推理で捜査して良いんですか? 証拠に基づいて捜査するのが当然の義務ではないんですか?」至極まっとうなご意見を貰う京助と薫は面食らう。
「薫ちゃん、言われているよ」
「私ですか!? 金智さんの事でしょ」
 そこから痴話喧嘩にも思える言い合いをしながら、麻布のレストランへと到着した。
 目的のレストランは鉄板焼きの店で、ステーキが有名な店であった。
 そして、店に入ってすぐ事が起きた。ミミが、嗚咽を漏らしながら大慌てでトイレに駆け込んだのだ。
「やっぱり、田沢さんの事件がショックだったんだな」スタッフの一人がそう呟いた。
「すいません。その発言だと、田沢さんと親密な関係にあるような物言いですよね? ちょっと、詳しくお話を聞かせてもらえませんか?」
 薫は警察手帳を見せながら、スタッフに聞き込みを開始した。
 京助はそんな事は眼中になく頻りとトイレの方を気にしていた。
「どうかしたんですか?」聞き込みを終えた薫に聞かれた京助は「もしかして・・・・・・」とだけ呟いて、う~んとうなりながら考え始めた。
「金智さん」
「あ、ごめん」我に返った京助は「彼女、妊娠しているのかも」と薫に耳打ちした。
「妊娠ぅ~」
 薫が大声をあげて驚くので京助は咄嗟に薫の口元を押さえて、「何でもありません」と愛想笑いして聞いていたであろうスタッフ達に誤魔化すのだった。
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第6回ホラー・ミステリー小説大賞で投票してくださった方々、誠にありがとうございました。お気に入り,エール,感想をお待ちしております。
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