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第1話-出会
出会-10
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薫が戻って来た時、「あんたは、何を言いたいんだ!」と激高する私頭の姿があった。
「ちょっと、何があったんですか?」
薫は揉める二人にこれまでの経緯について、説明を求める。
「いや、別に」理由を答えようとしない私頭に対して京助は「私頭さんが敢えて、西口杏さんを陥れようとしているんじゃないですか? って聞いたの」と答えた。
「何、言っているんですか! そんな訳ないじゃないですか!!」
「そんなに怒られなくても・・・・・・」
「怒りますよ。すいません。失礼なことを言ってしまって」薫は私頭に謝罪する。
「いえ、刑事さんが謝る必要はないですよ」
「そんな事よりさ、他の刑事達と情報交換してきた結果を教えてよ」
京助は情報交換の結果を求める。
「それなんですが。まず、このテナントの鍵ですが守衛には昨日の段階で戻ってきてないそうです。そして、最後に退勤した社員も分からないとのことでした」
「なるへそ。じゃあ、その社員が協力者かもしれないし、犯人って事か」
「そうかもしれませんね」
「という事で、私頭さん。昨日は何時頃、退社されたんですか?」
「またそういう質問を」
「まぁまぁ、薫ちゃん」
「定時の17時半には退社しましたが」
「そうですか」つまらなそうに返事をする京助。
「これで、私頭さんの疑いは晴れましたね」
「そだねー」
「あの、私の疑いは晴れたことですし、もう帰っても」
「どうしてそう、帰ろうとするかなぁー」と言う京助に自分も帰ろうとしてた癖にと思う薫は「金智さん、どうしてそこまでして頑なに私頭さんを帰したくないんですか?」とその真意を尋ねる。
「だって、事件解決の糸口になる人だよ。解決が遅れたら俺が帰れなくなるじゃない」
薫と私頭は、なんて自分勝手な奴だと二人揃って思う。
「それで西口杏さんの事は、話したの?」
「はい。確認してくれるそうです」
「じゃあ、次、横領については?」
「それなんですが、証言が取れていないそうです」
「私頭さん、横領の件は何人程の社員さんが知っていたんですか?」
「大多数知っていた訳ではありませんでした」
「じゃあ、知っていた人物を薫ちゃんに教えてください。薫ちゃんはすぐさまそれを確認して」
「分かりました」
「では、お答えください」
「社長。営業課課長。そして、自分の三人だけです」
「という事らしい。宜しくぅ~」
「はい!!」
薫は再びその場を後にした。
「という事で、また邪魔者は居なくなりました」
「え?」
「私頭さん。手荷物検査をしても?」
「どういうことですか? 私の無実は証明されたはずでは?」
「あれ以上言うと、薫ちゃんに殴られそうだったので調子を合しただけですよ」
「それ、どういうことですか?」
「いい加減気付いているじゃないんですか? 俺が何を言いたいのか?」
「・・・・・・分かりませんね?」
「お待たせしました・・・・・・」
戻ってきた薫は、京助と私頭の間に不穏な空気が流れていた。
「また、揉めているんですか?」
「いいや、揉めてはいないよ。只、手荷物を見せてください。そう頼んでいただけ」
「なんで、手荷物検査なんですか?」
「何でって。ここのテナントの鍵を持っているから」
「はい? 何で、私頭さんが鍵を持っているんですか?」
「何でって。それはぁ~」
「それは?」
「それは、私頭さんが犯人だからでしょ」
「は、はいぃ~」
京助から出た唐突な発言に、驚愕する薫であった。
「ちょっと、何があったんですか?」
薫は揉める二人にこれまでの経緯について、説明を求める。
「いや、別に」理由を答えようとしない私頭に対して京助は「私頭さんが敢えて、西口杏さんを陥れようとしているんじゃないですか? って聞いたの」と答えた。
「何、言っているんですか! そんな訳ないじゃないですか!!」
「そんなに怒られなくても・・・・・・」
「怒りますよ。すいません。失礼なことを言ってしまって」薫は私頭に謝罪する。
「いえ、刑事さんが謝る必要はないですよ」
「そんな事よりさ、他の刑事達と情報交換してきた結果を教えてよ」
京助は情報交換の結果を求める。
「それなんですが。まず、このテナントの鍵ですが守衛には昨日の段階で戻ってきてないそうです。そして、最後に退勤した社員も分からないとのことでした」
「なるへそ。じゃあ、その社員が協力者かもしれないし、犯人って事か」
「そうかもしれませんね」
「という事で、私頭さん。昨日は何時頃、退社されたんですか?」
「またそういう質問を」
「まぁまぁ、薫ちゃん」
「定時の17時半には退社しましたが」
「そうですか」つまらなそうに返事をする京助。
「これで、私頭さんの疑いは晴れましたね」
「そだねー」
「あの、私の疑いは晴れたことですし、もう帰っても」
「どうしてそう、帰ろうとするかなぁー」と言う京助に自分も帰ろうとしてた癖にと思う薫は「金智さん、どうしてそこまでして頑なに私頭さんを帰したくないんですか?」とその真意を尋ねる。
「だって、事件解決の糸口になる人だよ。解決が遅れたら俺が帰れなくなるじゃない」
薫と私頭は、なんて自分勝手な奴だと二人揃って思う。
「それで西口杏さんの事は、話したの?」
「はい。確認してくれるそうです」
「じゃあ、次、横領については?」
「それなんですが、証言が取れていないそうです」
「私頭さん、横領の件は何人程の社員さんが知っていたんですか?」
「大多数知っていた訳ではありませんでした」
「じゃあ、知っていた人物を薫ちゃんに教えてください。薫ちゃんはすぐさまそれを確認して」
「分かりました」
「では、お答えください」
「社長。営業課課長。そして、自分の三人だけです」
「という事らしい。宜しくぅ~」
「はい!!」
薫は再びその場を後にした。
「という事で、また邪魔者は居なくなりました」
「え?」
「私頭さん。手荷物検査をしても?」
「どういうことですか? 私の無実は証明されたはずでは?」
「あれ以上言うと、薫ちゃんに殴られそうだったので調子を合しただけですよ」
「それ、どういうことですか?」
「いい加減気付いているじゃないんですか? 俺が何を言いたいのか?」
「・・・・・・分かりませんね?」
「お待たせしました・・・・・・」
戻ってきた薫は、京助と私頭の間に不穏な空気が流れていた。
「また、揉めているんですか?」
「いいや、揉めてはいないよ。只、手荷物を見せてください。そう頼んでいただけ」
「なんで、手荷物検査なんですか?」
「何でって。ここのテナントの鍵を持っているから」
「はい? 何で、私頭さんが鍵を持っているんですか?」
「何でって。それはぁ~」
「それは?」
「それは、私頭さんが犯人だからでしょ」
「は、はいぃ~」
京助から出た唐突な発言に、驚愕する薫であった。
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