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第1話-出会
出会-7
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「刑事さん、私の業務日誌が事件と関りがあるんですか?」私頭の質問に「さぁ、私も分からないんです。すいません」と申し訳なさそうに答える。
「私頭さんの業務日誌はこまめですね。相手が何を言ったかまで書かれている。僕も見習わなくちゃな」
「え、貴方、刑事じゃないんですか?」
「あ、言ってませんでしたね。私、ポリティス株式会社で営業をやっております。金智京助と申します。ご挨拶が遅れてすいません」
京助は私頭に名刺を渡す。
「でも、刑事じゃない金智さんが事件の捜査を?」
「その疑問はごもっともです。俺自身も何で捜査に協力しているのか、分からないんですから」
「はぁ」府に落ちないといった感じの私頭は薫を見る。
薫もどう返せば良いのか分からず、愛想笑いで誤魔化す。
「それより良いですか? 去年の12月に私頭さんは飯田さんの取引先へと出張してますよね。かなり、遠方の奄美大島まで。これはどういった用件で? 業務日誌には珍しく書かれていなかったもので」
「それは・・・・・・ですね」
「何か言いにくい話ですか?」薫が尋ねると私頭は黙って頷く。
「もしかして、俺に話しにくいことでしたら席外しますけど」
「いえ、そんな必要は」京助の提案を断る私頭。
「でしたら、話して頂けますよね?」
「分かりました。但し、この事は外部に漏らさないようにしてください」と前置きし私頭は話を続ける。
「実は、飯田には取引先から不正な取引があったという噂がありまして」
「不正な取引?」
「多分、取引先から不正に金を受け取っていた。いや、違うな。その逆だ。金をばら撒いていた。そうですよね?」京助が尋ねると「そうです」とだけ答える。
「詳しく話して頂けませんか?」
薫に事の詳細を求められ、私頭は少し戸惑いながら語り始めた。
「このことが公に発覚したのは先週の事なんです」
「先週ですか?」
「はい。実はこの12月の出張は、個人的に調べていたものでして」
「成程。それで何か掴めたんですか?」京助にそう聞かれ「少し待っていてください」と二人に告げ私頭は席を外した。
「なんか、急に話が動き出しましたね」
薫が感想を述べると、どこかへと意識を飛ばしていた京助は我に返る。
「あ、何だっけ?」
「何でもないです」
「でも、気になるよね。何をきっかけに私頭さんは、飯田さんの不正に気付いたんだろ?」
「さあ? 本人に聞いてみたらどうです?」
「聞いても良いんだけど、部外者の質問に答えてくれるかなぁ~」
「答えてくれるんじゃないですか?」
「答えてくれないんじゃない? 俺の正体バレちゃったし」
「バラしたのは、金智さん自身じゃないですか!」
「そうだっけ?」
「そうです!!」
「お待たせしました・・・・・・」
戻ってきたらかなり険悪な雰囲気で、私頭は言葉に詰まる。
そして、場の空気が落ちついたタイミングで話を始めた。
「私が飯田の不正に気付いたのは、昨年の10月でした」
2022年の10月、私頭は良くして貰っている取引先からある噂を聞いた。
飯田が遠方の取引先に個人的に賄賂を渡し、見返りに製品を買って貰っているという噂である。
真偽の程を確かめる為、私頭は一人で調査を開始した。関東近郊で飯田取引している会社から調査を開始したのだがこれといって成果はなかった。
それで私頭は関東近郊から離れて調査をすることにし、最初に着手したのが奄美大島にある取引先であった。
相手の取引先に訴訟する旨を伝えると、あっさりと自供した上に不正の証拠まで渡してくれた。これを証拠に会社へと報告し、飯田は今月末に会議で処分が下されるところまで話は上がっていたのだ。
「そこまで話は進んでいたんですね」
「ええ」
「では、この資料は私頭さんが作って御社の上層部に上げたということですか?」
「そうなります。それが何か?」京助に問い返す私頭。
「深い意味はありませんよ。すいませんが少し考える時間をください。良いよね? 薫ちゃん」
「あ、はい。分かりました」
薫が許可すると京助は事件現場を後にした。
「私頭さんの業務日誌はこまめですね。相手が何を言ったかまで書かれている。僕も見習わなくちゃな」
「え、貴方、刑事じゃないんですか?」
「あ、言ってませんでしたね。私、ポリティス株式会社で営業をやっております。金智京助と申します。ご挨拶が遅れてすいません」
京助は私頭に名刺を渡す。
「でも、刑事じゃない金智さんが事件の捜査を?」
「その疑問はごもっともです。俺自身も何で捜査に協力しているのか、分からないんですから」
「はぁ」府に落ちないといった感じの私頭は薫を見る。
薫もどう返せば良いのか分からず、愛想笑いで誤魔化す。
「それより良いですか? 去年の12月に私頭さんは飯田さんの取引先へと出張してますよね。かなり、遠方の奄美大島まで。これはどういった用件で? 業務日誌には珍しく書かれていなかったもので」
「それは・・・・・・ですね」
「何か言いにくい話ですか?」薫が尋ねると私頭は黙って頷く。
「もしかして、俺に話しにくいことでしたら席外しますけど」
「いえ、そんな必要は」京助の提案を断る私頭。
「でしたら、話して頂けますよね?」
「分かりました。但し、この事は外部に漏らさないようにしてください」と前置きし私頭は話を続ける。
「実は、飯田には取引先から不正な取引があったという噂がありまして」
「不正な取引?」
「多分、取引先から不正に金を受け取っていた。いや、違うな。その逆だ。金をばら撒いていた。そうですよね?」京助が尋ねると「そうです」とだけ答える。
「詳しく話して頂けませんか?」
薫に事の詳細を求められ、私頭は少し戸惑いながら語り始めた。
「このことが公に発覚したのは先週の事なんです」
「先週ですか?」
「はい。実はこの12月の出張は、個人的に調べていたものでして」
「成程。それで何か掴めたんですか?」京助にそう聞かれ「少し待っていてください」と二人に告げ私頭は席を外した。
「なんか、急に話が動き出しましたね」
薫が感想を述べると、どこかへと意識を飛ばしていた京助は我に返る。
「あ、何だっけ?」
「何でもないです」
「でも、気になるよね。何をきっかけに私頭さんは、飯田さんの不正に気付いたんだろ?」
「さあ? 本人に聞いてみたらどうです?」
「聞いても良いんだけど、部外者の質問に答えてくれるかなぁ~」
「答えてくれるんじゃないですか?」
「答えてくれないんじゃない? 俺の正体バレちゃったし」
「バラしたのは、金智さん自身じゃないですか!」
「そうだっけ?」
「そうです!!」
「お待たせしました・・・・・・」
戻ってきたらかなり険悪な雰囲気で、私頭は言葉に詰まる。
そして、場の空気が落ちついたタイミングで話を始めた。
「私が飯田の不正に気付いたのは、昨年の10月でした」
2022年の10月、私頭は良くして貰っている取引先からある噂を聞いた。
飯田が遠方の取引先に個人的に賄賂を渡し、見返りに製品を買って貰っているという噂である。
真偽の程を確かめる為、私頭は一人で調査を開始した。関東近郊で飯田取引している会社から調査を開始したのだがこれといって成果はなかった。
それで私頭は関東近郊から離れて調査をすることにし、最初に着手したのが奄美大島にある取引先であった。
相手の取引先に訴訟する旨を伝えると、あっさりと自供した上に不正の証拠まで渡してくれた。これを証拠に会社へと報告し、飯田は今月末に会議で処分が下されるところまで話は上がっていたのだ。
「そこまで話は進んでいたんですね」
「ええ」
「では、この資料は私頭さんが作って御社の上層部に上げたということですか?」
「そうなります。それが何か?」京助に問い返す私頭。
「深い意味はありませんよ。すいませんが少し考える時間をください。良いよね? 薫ちゃん」
「あ、はい。分かりました」
薫が許可すると京助は事件現場を後にした。
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第6回ホラー・ミステリー小説大賞で投票してくださった方々、誠にありがとうございました。お気に入り,エール,感想をお待ちしております。
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