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第1話-出会
出会-4
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非常口は事務所の奥にあったのだが、その扉の前には段ボールが積み上げられていた。
「これは出入りできなさそうですね」先に感想を述べたのは,薫であった。
「そうだねぇ~」
京助はそう返事しながら、段ボールをどかそうとするのだが「うっ」という言葉と共に固まる。
「どうしました?」
「いや、腰がギクッて。ギクッてなったかも」
京助はギックリ腰になりかけているらしく、薫はすぐ様、京助が抱えていた段ボールを取り上げ元あった場所に戻した。
「あー危なかった。ありがとう、薫ちゃん」
「いえ、それより腰。大丈夫ですか?」
「力持ちの薫ちゃんのおかげで、危機を脱したよ」
京助の余計な一言に怒りを覚えるが、それをぐっと堪え薫は話を続ける。
「それで、非常口はこの様に塞がれてますけど、何か分かりました?」
「はっはっはっ、さっぱり分からない」
「もしかして、ふざけてます?」
「とんでもない。事件解決の為、一生懸命、学のない頭を働かせているんだから」
完全に敬語からため口に切り替わった京助を受け入れた薫は、「学のないって。でも、北澤さんの口ぶりじゃそんな感じには聞こえなかったですけど」と返答する。
「正直、あいつが誰だか分からないんだよね」
「え?」
「ホントよ。だから、帰って良い?」
最後の「帰って良い?」で薫は察した。京助はウソをついてこの場から逃げ出そうとしている事を。
「ダメです」
「何でぇ~一般市民を捜査に巻き込んでええの」
「ええんです。ほらっ、次はどうしますか?」
「どうしようか?」そう言いながら、視線を別の場所に移すと刑事から聞き込みを受けている男がいた。
「ねぇ、あの人は誰?」
京助は聴取を受けている男を指さしながら尋ねる。
「さぁ?」
「ちょっと、聞いて来て」
「わ、分かりました」
これで事件解決に繋がるのか、疑念を抱きながら薫は事情聴取される男の元へと向かう。
「ですから、月曜日に使えるようにならないんですか!」男は語気を強くし、聴取を行う刑事に詰め寄る。
「そう言われましても、現場保存がありますから」
「そんなのうちには関係がないですよ」
「あのどうかされました?」薫はそう言いながら、会話に入っていく。
「いや、うんぬんかんぬんで」聴取を行っていた刑事がここまでの経緯を説明すると「うんぬんかんぬんで」と理解した薫。
「それで、どうなんです? 月曜の朝には使えるようになるんですか?」
「それは無理です。何か、急がれることでも?」
「いや、上司から月曜日にはオフィスを使えるように交渉しとけと言われましてね。どうにかなりませんか?」
男は困った顔を浮かべながら、薫に懇願する。
「そう言われましても・・・・・・」薫も月曜日から使用しても良いと言える権限がないので困っていると「すいません。どこかでお着替えになられました?」ここで男に質問する京助。
「はい?」
「いや、着ていらっしゃるジャケットにタグが付いているんで」
「えっ!」
男は慌てた様子でジャケットを脱いで指摘された事を確認すると、確かにタグが付いていた。
「あ、ホントだ。上司から連絡受けて慌てて駆けつけたものですから」
「そうでしたか。個人的な事を聞いてしまうようで申し訳ないのですが、ご自宅は会社の近所なんですか?」
「いいえ、違いますが。それが何か?」
「いやね、警察が臨場して1時間経つか経たないかで来ていたので。ご自宅が近いのかなと思いまして」
「はぁ」
「もし良かったらなんですけど、我々の捜査に協力してもらえませんか?」
「ちょっと!!」薫が止めるのを無視し、京助は続ける。
「ここで、犯人を見つけることが出来れば月曜日にはオフィスを使えるかもですよ」
「それは本当ですか?」
「は、はい! 本当です」薫は京助のウソに乗ることにした。
「分かりました。協力させて頂きます」
男はすんなりと了承し、共に捜査することになった。
「これは出入りできなさそうですね」先に感想を述べたのは,薫であった。
「そうだねぇ~」
京助はそう返事しながら、段ボールをどかそうとするのだが「うっ」という言葉と共に固まる。
「どうしました?」
「いや、腰がギクッて。ギクッてなったかも」
京助はギックリ腰になりかけているらしく、薫はすぐ様、京助が抱えていた段ボールを取り上げ元あった場所に戻した。
「あー危なかった。ありがとう、薫ちゃん」
「いえ、それより腰。大丈夫ですか?」
「力持ちの薫ちゃんのおかげで、危機を脱したよ」
京助の余計な一言に怒りを覚えるが、それをぐっと堪え薫は話を続ける。
「それで、非常口はこの様に塞がれてますけど、何か分かりました?」
「はっはっはっ、さっぱり分からない」
「もしかして、ふざけてます?」
「とんでもない。事件解決の為、一生懸命、学のない頭を働かせているんだから」
完全に敬語からため口に切り替わった京助を受け入れた薫は、「学のないって。でも、北澤さんの口ぶりじゃそんな感じには聞こえなかったですけど」と返答する。
「正直、あいつが誰だか分からないんだよね」
「え?」
「ホントよ。だから、帰って良い?」
最後の「帰って良い?」で薫は察した。京助はウソをついてこの場から逃げ出そうとしている事を。
「ダメです」
「何でぇ~一般市民を捜査に巻き込んでええの」
「ええんです。ほらっ、次はどうしますか?」
「どうしようか?」そう言いながら、視線を別の場所に移すと刑事から聞き込みを受けている男がいた。
「ねぇ、あの人は誰?」
京助は聴取を受けている男を指さしながら尋ねる。
「さぁ?」
「ちょっと、聞いて来て」
「わ、分かりました」
これで事件解決に繋がるのか、疑念を抱きながら薫は事情聴取される男の元へと向かう。
「ですから、月曜日に使えるようにならないんですか!」男は語気を強くし、聴取を行う刑事に詰め寄る。
「そう言われましても、現場保存がありますから」
「そんなのうちには関係がないですよ」
「あのどうかされました?」薫はそう言いながら、会話に入っていく。
「いや、うんぬんかんぬんで」聴取を行っていた刑事がここまでの経緯を説明すると「うんぬんかんぬんで」と理解した薫。
「それで、どうなんです? 月曜の朝には使えるようになるんですか?」
「それは無理です。何か、急がれることでも?」
「いや、上司から月曜日にはオフィスを使えるように交渉しとけと言われましてね。どうにかなりませんか?」
男は困った顔を浮かべながら、薫に懇願する。
「そう言われましても・・・・・・」薫も月曜日から使用しても良いと言える権限がないので困っていると「すいません。どこかでお着替えになられました?」ここで男に質問する京助。
「はい?」
「いや、着ていらっしゃるジャケットにタグが付いているんで」
「えっ!」
男は慌てた様子でジャケットを脱いで指摘された事を確認すると、確かにタグが付いていた。
「あ、ホントだ。上司から連絡受けて慌てて駆けつけたものですから」
「そうでしたか。個人的な事を聞いてしまうようで申し訳ないのですが、ご自宅は会社の近所なんですか?」
「いいえ、違いますが。それが何か?」
「いやね、警察が臨場して1時間経つか経たないかで来ていたので。ご自宅が近いのかなと思いまして」
「はぁ」
「もし良かったらなんですけど、我々の捜査に協力してもらえませんか?」
「ちょっと!!」薫が止めるのを無視し、京助は続ける。
「ここで、犯人を見つけることが出来れば月曜日にはオフィスを使えるかもですよ」
「それは本当ですか?」
「は、はい! 本当です」薫は京助のウソに乗ることにした。
「分かりました。協力させて頂きます」
男はすんなりと了承し、共に捜査することになった。
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第6回ホラー・ミステリー小説大賞で投票してくださった方々、誠にありがとうございました。お気に入り,エール,感想をお待ちしております。
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