上 下
7 / 27

第一話-7

しおりを挟む
スケさんが真似沢さんと鑑識を行っている時、俺達は誘拐された女性の部屋に来ていた。
現場から5分ともかからない距離にある何の変哲もないマンション。
部屋の鍵は、飯田さんが合鍵を持っていたのですんなりと入れた。
部屋の中は、ごく普通のワンルームの一人暮らし部屋だ。
几帳面な性格が出ているのか部屋は綺麗に整理整頓されている。
とは言え、適当に物色するわけにもいかない。
なんせ女性の部屋なのだから。
取り敢えず、行方不明の女性の名前をまだ聞いてなかったので聞くことにした。
「あの飯田さん。彼女さんの名前まだ聞いていないのですが・・・」
女性のパソコンを操作する飯田さんは手を止め、部屋に置いてあった写真を見せながら教えてくれた。
「僕の隣に写っている彼女の名前は、白鳥 雅(しらとり みやび)。
商社に勤めています。」
写真を見て彼女、中々の美人だなと思う雫。
飯田から彼女の地球における具体的な情報を聞き出し、スマホにメモをする振りをして社長に照会を依頼した。
「あの、本当に手伝ってくれるんですか?」
「はい、『 困っている人の役に立つようになれ 』というのが僕の家の家訓なので」
勿論、噓だ。
「じゃあ、えっと・・・」ジャケットのポケットから名刺を取り出そうとする。
「雫です。これから呼び捨てで構いません。
明らかに飯田さんの方が年上そうなんで・・・」
「じゃあ、雫君。これからよろしく。」
握手を求めてくる飯田。
「こちらこそよろしくお願いします。」
固い握手を交わす二人であった。
その後も、飯田さん立会いのもと調査したが、良い収穫を得られなかった。
そして、スケさんから収穫ありとの連絡を受け、スケさんの部屋に来ていた。
「雫氏。部屋ではなくラボと呼んでくれ。」
「嗚呼、御免。」
スケさんは、自室をラボと呼ばないと怒る。
なんでそう言わせるかは、分からない。
「スケさん、話を戻そう。
得られた収穫っていうのは?」
俺が尋ねるとスケさんは、ニンマリと笑顔になり机のボタンを押した。
次の瞬間、俺とスケさんは眩い光と共に部屋から消えた。
目を開けると謎のドアの前に立っていた。
「スケさん、こんなギミックがあるなんて。
オラ、聞いてねぇぞ!」
「うん、だって言ってないもの。」
そう言うとスケさんは、ドアを開けた。
ドアの向こう側には・・・
「ナレーションさん」とスケさん。
“はいは~い。
ここはねスケさんの家の地下300Mにあるスケさん専用のラボ。
最先端の宇宙科学技術が詰まっている部屋になっとるたい。
それじゃあ、スケさんにお返ししま~す。”
「理解してくれたかい?雫氏。」
「まあ」
心の台詞を取られた事と、この部屋の設備に呆気を取られる俺。
「早速、本題に入ろう。」
スケさんは、ポリ袋に入ったバッジを見せてきた。
「このバッジは?」
「現場にこれが落ちていた。
ここのコンピューターにこのバッジに該当する学校・企業があるかチェックした所・・・」
スケさんがキーボードを叩くとラボの投影巨大スクリーンが映る。
このバッジを所持しているのは、企業であった。
社名 オルガナイザー
主な事業は、軍事兵器の開発・販売。
「オルガナイザーねえ。」腕を組む雫。
「一応、落し物の可能性もあるから、この会社のサーバーをハッキングして社員個人情報を頂いた。
そのデータを基に、現場付近に住居する社員がいないか調査したのだが該当する社員はいなかった。」
「つまり、こんな住宅街に軍事会社の社員が立ち寄る理由がないと。
でも、偶々この近所に住む友人宅等に遊びに来てその際、道中に落とした可能性もあるぞ。」当然の疑問をスケさんにぶつける俺。
『その可能性は、低いわね。』
雫が声のする方を向くと真似沢さんが立っていた。
「おっ、真似沢さん久しぶり。」
『本当に久しぶり~雫ちゃん!』
俺は、床に立っている真似沢さんを拾い上げ机の上に載せてあげた。
『雫ちゃん、今日も男前ね。』
いつも真似沢さんは俺と会うとお世辞大会が始まる。
「いやいやそういう真似沢さんだって今日も御綺麗ですよ。」
『やだ~』照れる真似沢さん。
「あのお二人さん。話が先に進まないんだが。」諌めるスケさん。
『何よ!意地悪!』舌を出す真似沢さん。
「怒らないで真似沢さん。せっかくの美貌が台無しですよ。」
俺は、真似沢さんを褒めて宥める。
『もうっ、雫ちゃんったら~。
よしっ、切り替えて行きましょう。
落し物の可能性が低いっていうのはね、これを見て。』
真似沢さんは、自分専用タブレットを操作する。
モニターにバッジの拡大図が映し出される。
バッジには、衣服の繊維が付いていた。
真似沢さんは証拠品のバッジについて解説を始めてくれた。
『このバッジについている繊維なんだけど、どうも無理矢理取られた繊維の付き方なの。
そして、その繊維の中に皮膚辺が付着していたわ。
DNAの型を調べたら女性に分類する型と判明した。』
「どうだい、限りなく濃い線だろ雫氏。」
スケさんが俺に聞いてくる。
「そうだな。真似沢さん申し訳ないがこの髪の毛のDNAと一致するか調べてくれない?」
俺は、女性の部屋でこっそりと採取した髪の毛が入ったポチ袋を真似沢さんに渡す。
『分かったわ。早速調べてみる。』真似沢さんはそう言うと机からジャンプしラボの中にある自室へと直行した。
「スケさん、取り敢えず現段階までの情報を社長に報告するわ。」
部屋から出ていこうとする俺を呼び止めるスケさん。
「そうだ、雫氏。」
「何、スケさん。」
「あの男は、どうするんだい?」
「嗚呼、飯田さんのことか。
考えてなかったわ。」
「君らしいな。所で雫氏、この部屋からどう出ていくつもりなんだい?」
「あ、考えてなかったわ。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

女子竹槍攻撃隊

みらいつりびと
SF
 えいえいおう、えいえいおうと声をあげながら、私たちは竹槍を突く訓練をつづけています。  約2メートルほどの長さの竹槍をひたすら前へ振り出していると、握力と腕力がなくなってきます。とてもつらい。  訓練後、私たちは山腹に掘ったトンネル内で休憩します。 「竹槍で米軍相手になにができるというのでしょうか」と私が弱音を吐くと、かぐやさんに叱られました。 「みきさん、大和撫子たる者、けっしてあきらめてはなりません。なにがなんでも日本を守り抜くという強い意志を持って戦い抜くのです。私はアメリカの兵士のひとりと相討ちしてみせる所存です」  かぐやさんの目は彼女のことばどおり強い意志であふれていました……。  日米戦争の偽史SF短編です。全4話。

高校生とUFO

廣瀬純一
SF
UFOと遭遇した高校生の男女の体が入れ替わる話

ワイルド・ソルジャー

アサシン工房
SF
時は199X年。世界各地で戦争が行われ、終戦を迎えようとしていた。 世界は荒廃し、辺りは無法者で溢れかえっていた。 主人公のマティアス・マッカーサーは、かつては裕福な家庭で育ったが、戦争に巻き込まれて両親と弟を失い、その後傭兵となって生きてきた。 旅の途中、人間離れした強さを持つ大柄な軍人ハンニバル・クルーガーにスカウトされ、マティアスは軍人として活動することになる。 ハンニバルと共に任務をこなしていくうちに、冷徹で利己主義だったマティアスは利害を超えた友情を覚えていく。 世紀末の荒廃したアメリカを舞台にしたバトルファンタジー。 他の小説サイトにも投稿しています。

ファイナルアンサー、Mrガリレオ?

ちみあくた
SF
 1582年4月、ピサ大学の学生としてミサに参加している若きガリレオ・ガリレイは、挑戦的に議論をふっかけてくるサグレドという奇妙な学生と出会った。  魔法に似た不思議な力で、いきなりピサの聖堂から連れ出されるガリレオ。  16世紀の科学レベルをはるかに超えるサグレドの知識に圧倒されつつ、時代も場所も特定できない奇妙な空間を旅する羽目に追い込まれるのだが……  最後まで傍観してはいられなかった。  サグレドの望みは、極めて深刻なある「質問」を、後に科学の父と呼ばれるガリレオへ投げかける事にあったのだ。

果てしなき宇宙の片隅で 序章 サラマンダー

緋熊熊五郎
SF
果てしなき宇宙の片隅で、未知の生物などが紡ぐ物語 遂に火星に到達した人類は、2035年、入植地東キャナル市北東35キロの地点で、古代宇宙文明の残滓といえる宇宙船の残骸を発見した。その宇宙船の中から古代の神話、歴史、物語とも判断がつかない断簡を発掘し、それを平易に翻訳したのが本物語の序章、サラマンダーである。サラマンダーと名付けられた由縁は、断簡を納めていた金属ケースに、羽根を持ち、火を吐く赤い竜が描かれていたことによる。

西涼女侠伝

水城洋臣
歴史・時代
無敵の剣術を会得した男装の女剣士。立ち塞がるは三国志に名を刻む猛将馬超  舞台は三國志のハイライトとも言える時代、建安年間。曹操に敗れ関中を追われた馬超率いる反乱軍が涼州を襲う。正史に残る涼州動乱を、官位無き在野の侠客たちの視点で描く武侠譚。  役人の娘でありながら剣の道を選んだ男装の麗人・趙英。  家族の仇を追っている騎馬民族の少年・呼狐澹。  ふらりと現れた目的の分からぬ胡散臭い道士・緑風子。  荒野で出会った在野の流れ者たちの視点から描く、錦馬超の実態とは……。  主に正史を参考としていますが、随所で意図的に演義要素も残しており、また武侠小説としてのテイストも強く、一見重そうに見えて雰囲気は割とライトです。  三國志好きな人ならニヤニヤ出来る要素は散らしてますが、世界観説明のノリで注釈も多めなので、知らなくても楽しめるかと思います(多分)  涼州動乱と言えば馬超と王異ですが、ゲームやサブカル系でこの2人が好きな人はご注意。何せ基本正史ベースだもんで、2人とも現代人の感覚としちゃアレでして……。

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

サイバシスト[PSYBER EXORCIST]

多比良栄一
SF
VRMMO世界をむしばむ「電幽霊」を霊能力で退治する血筋の者たち VRMMO世界をむしばむ「電幽霊」を霊能力で退治する血筋の者たち 世界同時多発事故の基地局喪失(サーバー・バニッシュド)によって、一瞬にして数億人もの人々の意識の一部がヴァーチャル・ワールドに取り残された。 それから数年後、ちぎりとられた残留思念が悪意をもって人々を襲うようになった。それは人間の意識の成れの果て「電幽霊(サイバー・ゴースト)」 平家の血筋の主人公平平平(たいらへいべい)は源家の末裔 源源子(みなもとみなこ)は、陰陽師を育成する陰陽学園高校に入学すると、バディを組まされ、破天荒な先生と個性的なクラスメイトとともに「電幽霊」退治に挑むことになる。 連載中の「いつかぼくが地球を救う」の「電幽霊戦」の元の世界観。 ただし、「サイバシスト」ゲーム化を視野にいれた作品設定になっています。 読み切りの第一話部分です。どうぞ気楽にお楽しみください。

処理中です...