探偵は女子高生と共にやって来る。

飛鳥 進

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第参拾話-将軍

将軍-14

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「大馬鹿者っ!!」
 光浦の怒声が大会議室に響き渡る。
 ゲネラール事件を担当する捜査員全員が集められての𠮟責であった。
「あれだけの人数を費やして、容疑者を確保できないとはどういう事だっ!」
 机をバンッと叩きながら詰問するが、捜査員の誰一人として光浦の問いに答えるものはいなかった。寧ろ、あの状況でどう逮捕できるのか。逆に聞きたいぐらいだった。
「あいつ、やけに怒るじゃん」
 会議室の端の方に座る燐が長四郎にだけ聞こえるように話し始めた。
「多分、上から責められたんだろうよ。知らんけど」
 長四郎が答えた途端、「探偵はどこだ!!」と光浦が長四郎を呼び出す。
「喚かなくても、キチンとここに居るぜ。ベイビー」
 長四郎は困ったちゃんだなといった顔で立ち上がる。
「出たよ。ベイビー」自分の横でカッコつける長四郎にツッコミを入れる。
「何がベイビーだ! 今回の失態、全ての原因はお前だ! お前にあるんだ!!」
「何を言うかね? ゲネちゃんも言っていたでしょ? 予定外の事態だったって。俺もあんな所で取材を受けるなんて思ってなかったし」
「屁理屈を言うな! お前があの記者を追っ払っていればこんな事にはならなかったんだぞ!」
「そうなの?」
 長四郎は燐にそう聞くと「そうなんじゃない?」という答えが返ってきた。
「で、あの記者は君に何を聞いたんだ?」
「何って。マッチングアプリをしている男のプロフィールがふざけていると女性は寄って来ないとか来るとかっていう話を」
「ふざけているのか?」
「滅相もない。ゲネちゃんはマジで姿を現そうと思っていたんじゃない? 電話の向こうで悔しがってたもん。それに奴は、俺が居る事を確認してのあの行動だったはずだから」
「御託はいい!!」
「御託はって。あのなぁ! お前が俺の言う通りにすれば第五の殺人事件は起きなかったかもしれないし。自分の失敗を押し付けてくんな!」
「言いたい事はそれだけか?」光浦の顔は憎悪に満ち満ちていた。
「なんだ? 俺を公務執行妨害で逮捕する気か? だったら、それこそ止めた方が良いね。あの記者にタレこむことになるからな」
 長四郎はそれだけ言うと、大会議室を出ていく。
 それに続いて燐、会議に参加していた命捜班の面々も出ていった。
「探偵さん。あんな事言ったら協力してくれなくなりますよ」
 明野巡査が長四郎に文句を言う。
「協力? 元からそんなものなんかないでしょ」
「そうそう」燐もこれに賛同した。
「班長ぉ~」明野巡査は佐藤田警部補に助けを求めると「で、探偵さんはゲネラールとどう戦うの?」指針を聞く佐藤田警部補。
「う~ん。当のご本人、連絡が来るらしいですけどね。来ないと何もできないですよ」
「長さん。第五の殺人事件はどうすると?」一川警部にそう聞かれた長四郎は少し考えてから口を開いた。
「調べますかぁ~ 連絡来ませんし」
「捜査資料・・・・・・ どうします?」と絢巡査長が言う。
 今、喧嘩別れしてすぐに捜査資料をくださいとは言い出しづらいといった空気になる。
「う~ん」
 その場に居た全員が同じ事を言って腕を組んで考え込み始める。
「じゃんけんで公平に決めよう」
 長四郎がそう提案し、満場一致で決まった。
「何しに来た?」光浦は怒りを募らせた顔で長四郎にそう尋ねる。
「ええっとぉ~ ねぇ~ そのねぇ~」
「早く用件を言え」
「第五の殺人事件の捜査資料を貰えないかなぁ~ なんて」
「ふざけるな!」怒ったのは光浦じゃなくその横に座る管理官であった。
「ふざけてなんていませんよ。事件解決の為にね」
 そう答えると同じタイミングで、長四郎のスマホに着信が入る。
 通知相手は、非通知となっていた。
「奴からか?」管理官にそう聞かれた長四郎は小指を立て「これだよ。これ」と答え電話に出る。
「仕事中は掛けてくるなと言ったろ。ベイビー」
 長四郎は不敵な笑みを浮かべスマホに指すライトニングケーブルを要求するのだった。
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