探偵は女子高生と共にやって来る。

飛鳥 進

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第弐拾漆話-大物

大物-10

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 午後八時、紅音々救出作戦は開始された。
 折り畳み式の脚立を担いだ長四郎が大きな音を立てないように森下邸へと近づいて行く。
 森下邸を囲む2m近くある塀の前で脚立を組み立て塀に立てかける。
 倒れてこないかを確認した長四郎は、ゆっくりと昇り始める。
 塀の頂上にたどり着くと、手提げバッグの中からドッグフードを出す。
「ほぉ~れ、ご飯だぞぉ~」
 長四郎はドッグフードを塀の向こうにばら撒く。
 庭内を徘徊するドーベルマン達が、ばら撒いたドッグフードに食いつく。
 その隙に長四郎はロープを垂らし、森下邸に潜入した。
「よっ!!」
 着地に成功した長四郎は目的の石畳の倉庫に向かって、そろりそろりと歩を進める。
 目的の場所は直線上にあるので、そこまで時間はかからず辿り着いた。
 倉庫の扉は、それは扉というにはあまりにも大きすぎた。大きく分厚く重くそして大雑把すぎる扉だった。というのは噓で旧家にありそうな鉄の扉であった。
 南京錠で鍵が掛けられており、長四郎はこれを開錠させようと腰に付いたキーチェーンを伸ばして南京錠の鍵穴に挿す。
「こんな古臭い道具が使い物にならないとお思いでしょうが」
 カチンっという音を立てて南京錠は開錠した。
「開くんだな。これが」
 重い扉をゆっくりと開けると、倉庫の中は薄暗く灯りが灯ってはいるがよく見えない状況であった。長四郎はヘルメットに付いたヘッドライトを点灯させる。
「もしもしぃ~ 紅音々さんは居ますかぁ~」
 長四郎の問いかけも虚しく、沈黙の時が流れる。
「富澤富有子さんの依頼で、救出しに来ましたぁ~」
「富有子さん?」
 部屋の隅の方から弱弱しい声が聞こえてきたので、ヘッドライトの灯りを少し落とし声がした方向に頭を向けた。
 そこには、ランジェリー姿で首輪で繋がれた音々が怯えるように身体を震わせながら固まっていた
「紅音々さんですね?」長四郎の問いかけにコクリと頷く音々。
「ご無事で何より。さ、ここから出ましょう」
 長四郎は首輪を外しながら、音々に話しかける。
「あの、貴方は誰なんです?」
「そうだな。現代の悪に立ち向かう正義の騎士、マイケル・ナイト。とでもしておきましょう。さ、ここを出てからの説明をしますからよぉ~く聞いてくださいね」
 音々は返事をせず、首を振って返事をする。
「音々さんは正面の入り口に出てください。そこで通りかかった通行人に助けを求めてください。少々、恥ずかしい恰好で申し訳ないですがやむを得ません」
「はい」
「取り敢えず、これを」
 長四郎は来ていたジャケットを羽織らせる。
「ありがとうございます」
「では、ここを出て一目散に走ってくださいね」
「はい」
 二人は倉庫の入り口に立つと餌にありつけなかったドーベルマン達が徘徊していた。
「ワンちゃん達は、俺が惹きつけるのでご安心をさ、行きますよ」
 長四郎はドッグフードの袋を片手に一目散に走り出した。
「さ、ご飯ご飯ぅ~」
 ドーベルマンに追われる形で来た道を戻り、ドーベルマンに噛まれる前に塀を乗り越える為に必死で昇り音々の様子を確認すると正面玄関に走り去って行くのが見えたのでロープを回収し脚立を使って地面に降着すると手際よく脚立を畳んで森下邸を後にした。
 その頃、正面玄関横にある勝手口から森下邸を脱出した音々は下校中の高校生に話しかける。
「た、助けてください」
「はい!!」
 その女子高生は快くこれを快諾し、音々を連れて近くの交番に連れ込もうと歩いていると覆面パトカーの刑事二人に職務質問され音々はそのパトカーに乗り警察に保護されるのだった。
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