491 / 750
第弐拾漆話-大物
大物-4
しおりを挟む
九月になったとはいえ、まだまだ陽射しは強い。
長四郎はバイクを走らせながら、そんな事を考えていた。というのは噓で警視庁を出てから自分を監視するように尾行する車がありこの車をどうやり過ごそうか。
それについて思案していた。
尾行している車はLEXUS LS、ハイヤーの中でもハイグレードクラスの車種であり、そんな車種に乗る人間は限られている。
つまりは、森下邸から尾行されていた事になる。
「どうしようかなぁ~」
信号待ちの隙に、長四郎は自分を尾行するハイヤーの方へ振り向き運転手に笑顔で手を振る。
相手はスーツを着た推定年齢・三十歳前半の男性が運転していた。
そして、長四郎の手を振った反応はというと、運転手の男はムスッとするだけだった。
「つまんねぇ~」
残念がる長四郎はバイクをフルアクセルで走らせるのだが、ハイヤーは追走してくる事はなかった。
長四郎は何事もなく事務所に戻る事ができた。
事務所の前にバイクを停車させ、周辺に監視者が居ないかを確認した。
そのような人間を確認できなかったので、事務所がビルに入って行く。
階段を上がり、事務所の入り口の前に立つ長四郎は眉をひそめる。
「はぁ~」と溜息をつき、長四郎は勢いよくドアを開ける。
「あ、お帰りぃ~」
「何がお帰りぃ~ だよ。厄介な依頼を持ち込みやがって」
長四郎を笑顔で出迎える燐に嫌味を言う。
「でも、報酬は良いはずだけど?」
百万円に釣られて依頼を受けた長四郎は、何も言い返せなかった。
「それで? どうだったのかな?」
「どうとは?」
「だから、行方不明者は見つけたのかってことよ」
「いいや。でも、収穫はあった」
「収穫。聞かせてもらおうじゃない」
燐はソファー深く腰掛ける。
「嫌だね」
「あんた、仕事を回してあげた人への感謝ってものがないの?」
「厄介事を持ち込み奴に感謝せにゃあならんのよ」
「という事は、厄介な事になりつつあるって事ね」
「そういう事は察しが良いんだな」
長四郎はそう言いながら、お気に入りのゲーミングチェアに座る。
「で、厄介な事って何々?」
興味津々といった感じの顔で燐が聞いてくる。
「ラモちゃん。今回の相手は少し骨が折れる。若い子は元気あって宜しいかもしれんがフォロー出来るにも限界があるのよ」
「何それ?」
「ま、不登校高校生には分からんのよ」
「不登校高校生って言うけどさ。今日の恰好見て、それ言う訳?」
燐はソファーから立ち上がり、スカートをひらりと回転させながら一回転する。
「そう言うのは、可愛い女子高生がやるもんなんだぜ。小憎らしい娘がやってもなぁ~」
燐は静かにクッションを取り、長四郎に投げつける。
「グゲボッ!!」
クッションは長四郎の顔面にクリーンヒットし、長四郎はゲーミングチェアから崩れ落ちるのだった。
その夜、森下邸では当屋敷の主人・森下衆男が秘書の瓜野 殴から近所をうろついていた男・熱海長四郎の報告を受けていた。
「高校生の時は、甚だしい活躍を見せていたようですが、今現在は浮気調査を専門の私立探偵のようです。しかし」
「しかし?」
「はぁ。ここ数ヶ月、一人の女子高生と共に幾つかの事件解決に導いているという事も分かっております」
「ほぉ~ それで? 何故、うちの周辺をうろついていたのかね?」
「それなのですが、どうも例の家政婦の捜索をしているのではないかと」
「それは、調べた結果なのか?」
「いえ、私の推測です」
「推測?」
齢、八十歳にしながら鋭い眼光を向ける森下にたじろいでしまう瓜野。
「ですが、探偵がうろつく理由としては理にかなっています」
そう進言したのは、森下の大のお気に入りの秘書・大日方 美麗であった。
美麗はゆっくりと森下の手を握り、指を絡める。
森下はニヤッと笑い「そうか。そうだな。美麗の言う通りだ」そう言いながら、口から涎を垂らす。
「もう、汚いですよ」
美麗は森下の耳元で囁きながら、涎を持っていたハンカチを拭きあげるのであった。
長四郎はバイクを走らせながら、そんな事を考えていた。というのは噓で警視庁を出てから自分を監視するように尾行する車がありこの車をどうやり過ごそうか。
それについて思案していた。
尾行している車はLEXUS LS、ハイヤーの中でもハイグレードクラスの車種であり、そんな車種に乗る人間は限られている。
つまりは、森下邸から尾行されていた事になる。
「どうしようかなぁ~」
信号待ちの隙に、長四郎は自分を尾行するハイヤーの方へ振り向き運転手に笑顔で手を振る。
相手はスーツを着た推定年齢・三十歳前半の男性が運転していた。
そして、長四郎の手を振った反応はというと、運転手の男はムスッとするだけだった。
「つまんねぇ~」
残念がる長四郎はバイクをフルアクセルで走らせるのだが、ハイヤーは追走してくる事はなかった。
長四郎は何事もなく事務所に戻る事ができた。
事務所の前にバイクを停車させ、周辺に監視者が居ないかを確認した。
そのような人間を確認できなかったので、事務所がビルに入って行く。
階段を上がり、事務所の入り口の前に立つ長四郎は眉をひそめる。
「はぁ~」と溜息をつき、長四郎は勢いよくドアを開ける。
「あ、お帰りぃ~」
「何がお帰りぃ~ だよ。厄介な依頼を持ち込みやがって」
長四郎を笑顔で出迎える燐に嫌味を言う。
「でも、報酬は良いはずだけど?」
百万円に釣られて依頼を受けた長四郎は、何も言い返せなかった。
「それで? どうだったのかな?」
「どうとは?」
「だから、行方不明者は見つけたのかってことよ」
「いいや。でも、収穫はあった」
「収穫。聞かせてもらおうじゃない」
燐はソファー深く腰掛ける。
「嫌だね」
「あんた、仕事を回してあげた人への感謝ってものがないの?」
「厄介事を持ち込み奴に感謝せにゃあならんのよ」
「という事は、厄介な事になりつつあるって事ね」
「そういう事は察しが良いんだな」
長四郎はそう言いながら、お気に入りのゲーミングチェアに座る。
「で、厄介な事って何々?」
興味津々といった感じの顔で燐が聞いてくる。
「ラモちゃん。今回の相手は少し骨が折れる。若い子は元気あって宜しいかもしれんがフォロー出来るにも限界があるのよ」
「何それ?」
「ま、不登校高校生には分からんのよ」
「不登校高校生って言うけどさ。今日の恰好見て、それ言う訳?」
燐はソファーから立ち上がり、スカートをひらりと回転させながら一回転する。
「そう言うのは、可愛い女子高生がやるもんなんだぜ。小憎らしい娘がやってもなぁ~」
燐は静かにクッションを取り、長四郎に投げつける。
「グゲボッ!!」
クッションは長四郎の顔面にクリーンヒットし、長四郎はゲーミングチェアから崩れ落ちるのだった。
その夜、森下邸では当屋敷の主人・森下衆男が秘書の瓜野 殴から近所をうろついていた男・熱海長四郎の報告を受けていた。
「高校生の時は、甚だしい活躍を見せていたようですが、今現在は浮気調査を専門の私立探偵のようです。しかし」
「しかし?」
「はぁ。ここ数ヶ月、一人の女子高生と共に幾つかの事件解決に導いているという事も分かっております」
「ほぉ~ それで? 何故、うちの周辺をうろついていたのかね?」
「それなのですが、どうも例の家政婦の捜索をしているのではないかと」
「それは、調べた結果なのか?」
「いえ、私の推測です」
「推測?」
齢、八十歳にしながら鋭い眼光を向ける森下にたじろいでしまう瓜野。
「ですが、探偵がうろつく理由としては理にかなっています」
そう進言したのは、森下の大のお気に入りの秘書・大日方 美麗であった。
美麗はゆっくりと森下の手を握り、指を絡める。
森下はニヤッと笑い「そうか。そうだな。美麗の言う通りだ」そう言いながら、口から涎を垂らす。
「もう、汚いですよ」
美麗は森下の耳元で囁きながら、涎を持っていたハンカチを拭きあげるのであった。
0
お気に入り登録,エール,感想をお待ちしております。
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。


美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~
トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。
旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。
この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。
こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる