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第拾陸話-愛猫
愛猫-3
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一川警部は所轄署の刑事と共に、レジの金額が合っているか。店に置かれていた帳簿と照らし合わせながら確認していた。
「どうやら、店の金には手は付けられてないみたいですね」
「じゃあ、強盗の線は薄いかもしれんね」
「そうですね」と返事する所轄署の刑事。
「一川さん」
「お、長さん。もう来とったと。早かねぇ~」
「まぁ。そんな事より、ちょっと良いですか?」
そう言って、バックヤードに呼び出す長四郎。
「なんか、見つかったと?」
「いや、今回の事件は身内の犯行ではないかと思いましてね」
長四郎のその発言を近くで聞いていた翡翠の身体が少しビクンと波打ったように見えたのを、長四郎は見逃さなかった。
「そうやね。店の金も盗まれとらんかったけん。そうなると思うばい」
「一川警部。周辺の防犯カメラの映像を入手出来ました」近所の防犯カメラ映像を収拾しに行っていたであろう刑事が報告した。
「じゃあ、署の方で確認しましょ」
「はい!」刑事は元気よく返事し、その場を去っていった。
「長さんも来る?」
「勿の論です」長四郎はドヤ顔で答えた。
そして、好江の遺体が運び出されるのを黙って見送る燐。
そのタイミングで、1人の男が店に慌てた様子で入ってきた。
「好江に会わせてくれ!」
男はそう言いながら制止する刑事達を振り払い、バックヤードに入って来る。
「好江!!」男は担架に乗せられた好江の遺体に縋りつく。
「ちょっと、あんた!」担架を運ぶ鑑識官が男を注意する。
「好江! 好江ぇ~」
はたから見ると、演技にしか見えないぐらい泣きじゃくる男。
「失礼ですが、貴方は?」絢巡査長が問いかけると、男は涙を拭きながら「夜田 久と申します」そう答えた瞬間、ケージ入っている猫達が一斉に鳴き始めた。
「どうしたの? 皆」
翡翠は驚きながら猫達に声を掛けるのだが、猫達は鳴き止むことはなく寧ろ酷くなっていく一方であった。
「やっぱり、家族と別れるのは寂しいと思うんやろうね」
一川警部はその光景を見ながら述べた。
横でそれを聞いていた長四郎はその感想はあまり的を得てないとも感じていた。何故なら、尚道は怒り狂ったかのようにゲージないで暴れていたからだ。
「すいませんが、お話を聞きたいので署までご同行願えませんか?」
「はい、分かりました」
絢巡査長の要請を受諾した夜田は、好江の担架と共に店を出て行った。
「あの、猫達をゲージから出しても宜しいでしょうか?」一川警部に許可を求める翡翠。
「ちょっと待ってください。確認してきますから」
一川警部は鑑識班の班長に許可を取りに行く。
「一つ良いですか?」長四郎は翡翠に質問を求めた。
「何でしょうか?」
「先程のような行動をすることはあるんですか?」
「私も初めて見たので、驚いているんです」
「そうですか」
長四郎は返事しながら尚道が入っているゲージを見ると、先程とは打って変わって大人しくなった尚道の姿があった。
「許可下りましたんで。どうぞ」
班長から許可を得た一川警部が戻ってきた。
「ありがとうございます」
翡翠は早速、猫達をケージから出しに行った。
「じゃ、長さん行こうか」
「あ、はい」
店を後にしようとする長四郎は燐の姿が見えないことに今になって気づいた。
「どうやら、店の金には手は付けられてないみたいですね」
「じゃあ、強盗の線は薄いかもしれんね」
「そうですね」と返事する所轄署の刑事。
「一川さん」
「お、長さん。もう来とったと。早かねぇ~」
「まぁ。そんな事より、ちょっと良いですか?」
そう言って、バックヤードに呼び出す長四郎。
「なんか、見つかったと?」
「いや、今回の事件は身内の犯行ではないかと思いましてね」
長四郎のその発言を近くで聞いていた翡翠の身体が少しビクンと波打ったように見えたのを、長四郎は見逃さなかった。
「そうやね。店の金も盗まれとらんかったけん。そうなると思うばい」
「一川警部。周辺の防犯カメラの映像を入手出来ました」近所の防犯カメラ映像を収拾しに行っていたであろう刑事が報告した。
「じゃあ、署の方で確認しましょ」
「はい!」刑事は元気よく返事し、その場を去っていった。
「長さんも来る?」
「勿の論です」長四郎はドヤ顔で答えた。
そして、好江の遺体が運び出されるのを黙って見送る燐。
そのタイミングで、1人の男が店に慌てた様子で入ってきた。
「好江に会わせてくれ!」
男はそう言いながら制止する刑事達を振り払い、バックヤードに入って来る。
「好江!!」男は担架に乗せられた好江の遺体に縋りつく。
「ちょっと、あんた!」担架を運ぶ鑑識官が男を注意する。
「好江! 好江ぇ~」
はたから見ると、演技にしか見えないぐらい泣きじゃくる男。
「失礼ですが、貴方は?」絢巡査長が問いかけると、男は涙を拭きながら「夜田 久と申します」そう答えた瞬間、ケージ入っている猫達が一斉に鳴き始めた。
「どうしたの? 皆」
翡翠は驚きながら猫達に声を掛けるのだが、猫達は鳴き止むことはなく寧ろ酷くなっていく一方であった。
「やっぱり、家族と別れるのは寂しいと思うんやろうね」
一川警部はその光景を見ながら述べた。
横でそれを聞いていた長四郎はその感想はあまり的を得てないとも感じていた。何故なら、尚道は怒り狂ったかのようにゲージないで暴れていたからだ。
「すいませんが、お話を聞きたいので署までご同行願えませんか?」
「はい、分かりました」
絢巡査長の要請を受諾した夜田は、好江の担架と共に店を出て行った。
「あの、猫達をゲージから出しても宜しいでしょうか?」一川警部に許可を求める翡翠。
「ちょっと待ってください。確認してきますから」
一川警部は鑑識班の班長に許可を取りに行く。
「一つ良いですか?」長四郎は翡翠に質問を求めた。
「何でしょうか?」
「先程のような行動をすることはあるんですか?」
「私も初めて見たので、驚いているんです」
「そうですか」
長四郎は返事しながら尚道が入っているゲージを見ると、先程とは打って変わって大人しくなった尚道の姿があった。
「許可下りましたんで。どうぞ」
班長から許可を得た一川警部が戻ってきた。
「ありがとうございます」
翡翠は早速、猫達をケージから出しに行った。
「じゃ、長さん行こうか」
「あ、はい」
店を後にしようとする長四郎は燐の姿が見えないことに今になって気づいた。
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