探偵は女子高生と共にやって来る。

飛鳥 進

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第拾弐話-監禁

監禁-15

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「ふぅー」
 二重は息を吐いてキーボードから手を離し、スマホのアプリを起動させる。
「うん?」
 そのアプリは監視カメラの映像を確認できる物で、そこに映っていたのはスーツに身を包んだ男二人が監禁場所を訪れていた。
 男達は建物を指差しながら、何か話し込んでいる。
 二重はその様子をすぐさま、スクリーンショットで残した。
 そして、上司に次の頼みごとをした。
「すいません。体調が優れないので早退させて頂いて宜しいでしょうか?」
「構わないけど。珍しいね、二重君が早退なんて」
「申し訳ありません」
「いや、謝ることはないよ。はい、これ」
 上司は早退届を渡し、記入するよう促した。
 二重はその場で自身の早退理由を記入させてもらい、無事に受理されたその足で表裏の病院へと向かった。
 勿論、齋藤刑事と絢巡査長の尾行付きで。
 病院の近くで張り込んでいた長四郎と合流した絢巡査長達は、これからの作戦を練る。
「どうやら、あの作戦が効いたみたいだな」
「あの作戦?」長四郎の言っている意味が分からない齋藤刑事に絢巡査長っが補足説明を入れる。
「実は、指定された場所には一川さんが居ないという推論の元、周辺の空き倉庫を調べているの」
「そういう事でしたか。とういう事は、我々の誰かが監禁場所を見つけたので焦ってこちらに赴いたそういう事でしょうか?」
「モブ刑事の仰る通りです」長四郎は頭をペコリと下げながら同意する。
「で、どうします? 乗り込みますか?」
「今、乗り込んでも爆弾の起爆スイッチを入れられる可能性があるから。それは辞めよう」
 絢巡査長の提案を却下した長四郎はぶつぶつと呟き始め、次の一手を考える。
「急に呟き始めたんですけど、どうしたんですか?」絢巡査長にそう聞くと「長さんは集中すると一人でぶつぶつと呟く癖があるんだって」と答え病院を観察する。
 それから暫く呟いていた長四郎が話し始めた。
「物件の探索に当たっている捜査員全員に、入口周辺に監視カメラが付いていた物件があったか確認して」
「はい。分かりました」絢巡査長は捜査員に情報を共有する為、グループチャットに指示された内容を書き記していく。
「そんで、モブ刑事。その場所が分かったらその場所に向かってくれない?」長四郎の指示を受けた齋藤刑事は黙って頷いて了承した。
「場所が分かったんですけど。該当箇所が3つ程あるんですけど」
 絢巡査長はそう言って、該当箇所にマークが打ってある地図が表示されたスマホを見せた。
「ここから一番近いのは、この場ね」と言いながら地図を操作する長四郎に「どうしますか?」絢巡査長は方針を尋ねた。
「じゃあ、モブ刑事にはここへ乗り込んでもらおうか」
「了解」
 病院から一番近い倉庫に向かった。
「私達はどうしますか?」
「その前に」
 長四郎は制し、事務所に居る燐に電話を掛ける。
「もしもし。ラモちゃん。ラモちゃんよぉ~」
 長四郎は替え歌を歌いながら話し始めると、燐の呆れた感じの溜息が受話器から聞こえてきた。
「早く用件を言いなさいよ」
「一川さんの様子に変わりはない?」
「え? ちょっと待ってて」
 燐はそう答え、パソコンに映る一川警部を確認する。
「あ~起きてる」
「それだけ」
「うん。カメラをじっと見ている。なんか、キモイ」
 この女子高生の言葉を一川警部が聞いたら泣くぞと思いながら、長四郎は話を続ける。
「頷いてたりとかはしていない?」
「うん、していない」
「そうか・・・・・・」
「それがどうかしたの?」
「そちらに人を向かわすから、対応を宜しく」
「えっ! ちょっと待って!!」説明を求める燐を無視して、通話を切った長四郎はメッセージアプリを開き、誰かに連絡を取った。
「絢ちゃん、モブ刑事は倉庫に着いた.のかな?」
「どうでしょうか?」
 長四郎達がそんな会話をしている頃、齋藤刑事は倉庫に着き裏口を探していた。
「どこか良い場所はないか・・・・・・」
 倉庫の周りは高い塀で囲まれており、簡単に敷地内に入ることは不可能であった。
 ここへ来る前長四郎に「正攻法で入らず、監視カメラには気を付けろ」との指示を受けており、監視カメラがなく正面口ではない倉庫裏から侵入しようと画策しているのだが良案が思いつかず困っていた。
 すると、一台の軽トラが塀に寄せる形で駐車した。
「あれだ!!」
 軽トラの運転手が車から離れた隙に、空いている荷台に上がりそこから運転席の屋根に上って塀を越えて敷地内に潜入する事に成功したのだった。
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