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第一話-始動
始動-1
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最悪だ。
久しぶりに死体を見た。
まぁ、俺自身は久しぶりに見たといった感じなのだが・・・・・・
隣にいる女子高生はそうではないらしい。
ショックのあまり、声を出せなくなっている。
数分前までは、マシンガンから発せられる弾の如く言葉を飛ばしていたのに。
それが今ではすっかり、だんまりを決め込んでいる。普段は見ない光景だから、無理もない。
もし、時間を巻き戻せるなら、依頼を受けた時まで遡ってやり直したいくらいだ。
五日前
熱海 長四郎は珈琲を飲みながら、先日、行った不倫調査の報告書を事務所で作成していた。
この調査は酷い目にあった。
今回の調査も普段通りに行くはずだった。
調査内容は、浮気調査なのだが都内のホテルの前で見張っとけば良いのかと思ったのだが、対象は静岡県熱海市に旅行に出かけ高級旅館へと入るわ。
そこまでは、まだ良かった。高級旅館での調査に神経を使いまくった。
対象不倫相手の女が手ごわかった。
あれは、手練れだ。
不倫経験豊富といった感じで、こちら手の内がバレているのか。
危うくバレそうになること十数回。
そして、埼玉県春日部市から来たという五歳の男児に付きまとわれそのせいで余計にバレそうになったことか。
普段の調査より神経を使い果たし、温泉も楽しめずクタクタになり調査を終え今に至る。
自分で言うのも何だが、十年程前までは全国津々浦々に高校生探偵として名を馳せていた。
それが今では、そこら辺に居る浮気調査をメインの業務とするしがない私立探偵。
意外と、毛利小五郎や金田一耕助、明智小五郎のように殺人事件の依頼は来ない。
金田一少年は35歳の会社員になっても、事件解決しているというのに俺は・・・・・・
そんな事を考えていると、事務所のドアが開いた。
「あのぉ~すいません」
ドアから恐る恐る顔を覗かせる推定年齢二十代前半の女性がこちらを見ていた。
「いらっしゃいませ」長四郎はそう言いながら席を立ち、女性に近づく。
「ここ、探偵事務所ですか?」
「ええ。依頼ですか?」
その問いに黙って頷いて答える女性。
長四郎は女性の服装を見て少し驚く。真夏なのに薄手とはいえ長袖のTシャツ、ロングスカート、左右揃っていないサンダルを履いていたからだ。
「あの・・・・・・初めてで・・・・・・」
女性は追われているのか、辺りをキョロキョロと見回す。
「ま、取り敢えず中に入ってください」
長四郎は女性を応接用のソファーに座らせて、客用の珈琲カップにコーヒーを注ぎ入れながら本題に入る。
「DVの調査ですか?」
「いえ、違います。浮気調査です」
「浮気調査」
女性の恰好、様子からDV被害にあっていると推測していたのだが、そうではなく肩透かしを食らう。
「はい。友人に相談したら調査した方が良いと言われたので」
「友人にですか・・・・・・」
長四郎は女性の前に珈琲を差し出す。
「ありがとうございます。それで、調べて欲しいのはこの人です」
女性は長四郎に画面の割れたスマホに映った彼氏の写真を見せてきた。
久しぶりに死体を見た。
まぁ、俺自身は久しぶりに見たといった感じなのだが・・・・・・
隣にいる女子高生はそうではないらしい。
ショックのあまり、声を出せなくなっている。
数分前までは、マシンガンから発せられる弾の如く言葉を飛ばしていたのに。
それが今ではすっかり、だんまりを決め込んでいる。普段は見ない光景だから、無理もない。
もし、時間を巻き戻せるなら、依頼を受けた時まで遡ってやり直したいくらいだ。
五日前
熱海 長四郎は珈琲を飲みながら、先日、行った不倫調査の報告書を事務所で作成していた。
この調査は酷い目にあった。
今回の調査も普段通りに行くはずだった。
調査内容は、浮気調査なのだが都内のホテルの前で見張っとけば良いのかと思ったのだが、対象は静岡県熱海市に旅行に出かけ高級旅館へと入るわ。
そこまでは、まだ良かった。高級旅館での調査に神経を使いまくった。
対象不倫相手の女が手ごわかった。
あれは、手練れだ。
不倫経験豊富といった感じで、こちら手の内がバレているのか。
危うくバレそうになること十数回。
そして、埼玉県春日部市から来たという五歳の男児に付きまとわれそのせいで余計にバレそうになったことか。
普段の調査より神経を使い果たし、温泉も楽しめずクタクタになり調査を終え今に至る。
自分で言うのも何だが、十年程前までは全国津々浦々に高校生探偵として名を馳せていた。
それが今では、そこら辺に居る浮気調査をメインの業務とするしがない私立探偵。
意外と、毛利小五郎や金田一耕助、明智小五郎のように殺人事件の依頼は来ない。
金田一少年は35歳の会社員になっても、事件解決しているというのに俺は・・・・・・
そんな事を考えていると、事務所のドアが開いた。
「あのぉ~すいません」
ドアから恐る恐る顔を覗かせる推定年齢二十代前半の女性がこちらを見ていた。
「いらっしゃいませ」長四郎はそう言いながら席を立ち、女性に近づく。
「ここ、探偵事務所ですか?」
「ええ。依頼ですか?」
その問いに黙って頷いて答える女性。
長四郎は女性の服装を見て少し驚く。真夏なのに薄手とはいえ長袖のTシャツ、ロングスカート、左右揃っていないサンダルを履いていたからだ。
「あの・・・・・・初めてで・・・・・・」
女性は追われているのか、辺りをキョロキョロと見回す。
「ま、取り敢えず中に入ってください」
長四郎は女性を応接用のソファーに座らせて、客用の珈琲カップにコーヒーを注ぎ入れながら本題に入る。
「DVの調査ですか?」
「いえ、違います。浮気調査です」
「浮気調査」
女性の恰好、様子からDV被害にあっていると推測していたのだが、そうではなく肩透かしを食らう。
「はい。友人に相談したら調査した方が良いと言われたので」
「友人にですか・・・・・・」
長四郎は女性の前に珈琲を差し出す。
「ありがとうございます。それで、調べて欲しいのはこの人です」
女性は長四郎に画面の割れたスマホに映った彼氏の写真を見せてきた。
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