16 / 17
ガンタンの想い【4】
しおりを挟む
面白い人物との間で話が尽きないというのは、楽しいものだ。向こうもこっちに興味を持ち、お互いに聞きたいことが山ほどある状況ならなおさら。
しかし、取材には引き際も肝心だ。
「このあとはどこに、行く予定にしているんだい?」と私は聞いた。
「キャスの村に行こう思ってる」と、翔が言うと、キャスがペコンとお辞儀をする。
専門的な会話に対して、必要不可欠な時以外は入ってこないスタンスのキャス。アナリストやファンドマネージャーといった職種を支える“アシスタント”において、極めて重要な資質である。もちろん、キャスの有能さは、言葉の端々などからビンビンに感じてはいたのだが。
「次もあるなら、アドレスの交換をしましょう」と私は提案した。やり方がわかっていなかったようなので、イチからレクチャー。といっても、簡単なものなのだが。
彼らと別れた後、私は少し街をブラつくことにした。なんの目的も持たず、街を歩くという行為は、私たちの間では珍しい。非効率的だからだ。しかし私は“歩きながら物を考えること”が好きだ。 むしろ歩いているうちに様々な考えが、頭の中でまとまってくる。脳を活性化させるために歩くということは、私にとって極めて高い効率を追求できる行為なのだ。
歩きながら、戯れに服装を変えてみることにした。向こうの世界でいうところの、中世ヨーロッパ風の服装だ。ホログラムにより、一瞬できらびやかで豪華な服装に切り替わった。しかし、すぐにいつものスタイルに戻す。
我々が来ている服には、こうしたホログラム機能が備わっている。しかし、今はほとんどの人は使わない。ホログラム機能は、導入された最初の頃こそ、みんな珍しがって使っていたが、服装を変えるという“非効率的”なことに、興味を持たなくなったのだ。向こうの世界でも、大IT会社のCEOたちが、朝に服装で悩むなどという非効率的な選択に「時間という貴重なリソースを取られないよう」に、毎日同じ服装を着ていると聞いた。全く同じことだ。
「効率」といえば、亜人に対する考え方もそうだ。輩《ヤカラ》は、明確に“差別”を行なっている。我々はやらない。その答えは、非常に単純なもので、「差別は非生産的。差別をしても何も生み出さない」からだ。非論理的根拠による行動は、“無駄”の原因になる。我々の中に、そんな“無駄”を引き起こすような概念は一切必要無い。
能力において、人間と亜人に全く違いはない。むしろ、亜人の方が高い 適性を示す領域もある。 愚かな輩《ヤカラ》たちは、それを認めたがらないが、我々は早々にそうした無駄に思考から脱却している存在なのだ。
そんな、効率や非効率について思考を巡らせていたころ、翔から連絡が入り、私はすぐに返信後、通話モードに切り替えたのだった。
しかし、取材には引き際も肝心だ。
「このあとはどこに、行く予定にしているんだい?」と私は聞いた。
「キャスの村に行こう思ってる」と、翔が言うと、キャスがペコンとお辞儀をする。
専門的な会話に対して、必要不可欠な時以外は入ってこないスタンスのキャス。アナリストやファンドマネージャーといった職種を支える“アシスタント”において、極めて重要な資質である。もちろん、キャスの有能さは、言葉の端々などからビンビンに感じてはいたのだが。
「次もあるなら、アドレスの交換をしましょう」と私は提案した。やり方がわかっていなかったようなので、イチからレクチャー。といっても、簡単なものなのだが。
彼らと別れた後、私は少し街をブラつくことにした。なんの目的も持たず、街を歩くという行為は、私たちの間では珍しい。非効率的だからだ。しかし私は“歩きながら物を考えること”が好きだ。 むしろ歩いているうちに様々な考えが、頭の中でまとまってくる。脳を活性化させるために歩くということは、私にとって極めて高い効率を追求できる行為なのだ。
歩きながら、戯れに服装を変えてみることにした。向こうの世界でいうところの、中世ヨーロッパ風の服装だ。ホログラムにより、一瞬できらびやかで豪華な服装に切り替わった。しかし、すぐにいつものスタイルに戻す。
我々が来ている服には、こうしたホログラム機能が備わっている。しかし、今はほとんどの人は使わない。ホログラム機能は、導入された最初の頃こそ、みんな珍しがって使っていたが、服装を変えるという“非効率的”なことに、興味を持たなくなったのだ。向こうの世界でも、大IT会社のCEOたちが、朝に服装で悩むなどという非効率的な選択に「時間という貴重なリソースを取られないよう」に、毎日同じ服装を着ていると聞いた。全く同じことだ。
「効率」といえば、亜人に対する考え方もそうだ。輩《ヤカラ》は、明確に“差別”を行なっている。我々はやらない。その答えは、非常に単純なもので、「差別は非生産的。差別をしても何も生み出さない」からだ。非論理的根拠による行動は、“無駄”の原因になる。我々の中に、そんな“無駄”を引き起こすような概念は一切必要無い。
能力において、人間と亜人に全く違いはない。むしろ、亜人の方が高い 適性を示す領域もある。 愚かな輩《ヤカラ》たちは、それを認めたがらないが、我々は早々にそうした無駄に思考から脱却している存在なのだ。
そんな、効率や非効率について思考を巡らせていたころ、翔から連絡が入り、私はすぐに返信後、通話モードに切り替えたのだった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
魔石と神器の物語 ~アイテムショップの美人姉妹は、史上最強の助っ人です!~
エール
ファンタジー
古代遺跡群攻略都市「イフカ」を訪れた新進気鋭の若き冒険者(ハンター)、ライナス。
彼が立ち寄った「魔法堂 白銀の翼」は、一風変わったアイテムを扱う魔道具専門店だった。
経営者は若い美人姉妹。
妹は自ら作成したアイテムを冒険の実践にて試用する、才能溢れる魔道具製作者。
そして姉の正体は、特定冒険者と契約を交わし、召喚獣として戦う闇の狂戦士だった。
最高純度の「超魔石」と「充魔石」を体内に埋め込まれた不死属性の彼女は、呪われし武具を纏い、補充用の魔石を求めて戦場に向かう。いつの日か、「人間」に戻ることを夢見て――。
引きこもり転生エルフ、仕方なく旅に出る
Greis
ファンタジー
旧題:引きこもり転生エルフ、強制的に旅に出される
・2021/10/29 第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞 こちらの賞をアルファポリス様から頂く事が出来ました。
実家暮らし、25歳のぽっちゃり会社員の俺は、日ごろの不摂生がたたり、読書中に死亡。転生先は、剣と魔法の世界の一種族、エルフだ。一分一秒も無駄にできない前世に比べると、だいぶのんびりしている今世の生活の方が、自分に合っていた。次第に、兄や姉、友人などが、見分のために外に出ていくのを見送る俺を、心配しだす両親や師匠たち。そしてついに、(強制的に)旅に出ることになりました。
※のんびり進むので、戦闘に関しては、話数が進んでからになりますので、ご注意ください。
種族【半神】な俺は異世界でも普通に暮らしたい
穂高稲穂
ファンタジー
旧題:異世界転移して持っていたスマホがチートアイテムだった
スマホでラノベを読みながら呟いた何気ない一言が西園寺玲真の人生を一変させた。
そこは夢にまで見た世界。
持っているのはスマホだけ。
そして俺は……デミゴッド!?
スマホを中心に俺は異世界を生きていく。
没落貴族の異世界領地経営!~生産スキルでガンガン成り上がります!
武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生した元日本人ノエルは、父の急死によりエトワール伯爵家を継承することになった。
亡くなった父はギャンブルに熱中し莫大な借金をしていた。
さらに借金を国王に咎められ、『王国貴族の恥!』と南方の辺境へ追放されてしまう。
南方は魔物も多く、非常に住みにくい土地だった。
ある日、猫獣人の騎士現れる。ノエルが女神様から与えられた生産スキル『マルチクラフト』が覚醒し、ノエルは次々と異世界にない商品を生産し、領地経営が軌道に乗る。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。

チートを極めた空間魔術師 ~空間魔法でチートライフ~
てばくん
ファンタジー
ひょんなことから神様の部屋へと呼び出された新海 勇人(しんかい はやと)。
そこで空間魔法のロマンに惹かれて雑魚職の空間魔術師となる。
転生間際に盗んだ神の本と、神からの経験値チートで魔力オバケになる。
そんな冴えない主人公のお話。
-お気に入り登録、感想お願いします!!全てモチベーションになります-

毎日スキルが増えるのって最強じゃね?
七鳳
ファンタジー
異世界に転生した主人公。
テンプレのような転生に驚く。
そこで出会った神様にある加護をもらい、自由気ままに生きていくお話。
※ストーリー等見切り発車な点御容赦ください。
※感想・誤字訂正などお気軽にコメントください!
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる