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ガンタンの想い【1】
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──時は少し遡る──
私、ガンタンは向こうの世界の専門家だと自負している。向こうの世界に興味を持ったきっかけは、まず彼らの話が面白いからだ。だいたい45歳以上のベテラン投資家が多く、中には70、80代という御老体もいる。全員に言えるのは、それぞれ独自の投資ロジックを持ち、資産形成で結果を出していることだった。
彼らと話をしていて、魅力的だと感じるのはその生気に溢れた考え方や、話す内容だ。我々“ 統べりし者”の民たちは、徹底して無駄の排除を優先している。だから、効率化に最大の障壁となる『感情』を理性でコントロールする術を身に付けている。感情は社会の効率化において、もっとも大きな無駄。冗長的な時間を削ることで最適化していく。
かくして人々の意志は統一化され、AIがそれを加速させていく社会を我々は実現した。この街は住みやすく、経済格差による軋轢なども一切無いという理想郷を現実化させたのだ。
しかし感情の排除や効率化は、人々の遊びの部分を奪い「人間のロボット化」にも繋がっているように感じる。たとえば衣類。「好み」という非論理的な『感情』による選択で時間をとられるのは、バカげた話なので、みんな同じ衣類を着ている。画一化による効率化を目指した方が便利だし、スマートだからだ。私もその点だけを切り取ると「正しい」とは思うのだが、本来「無駄」とされているところに、人間らしさ、人間の存在理由があったのではないだろうか?そんな風にも思うのだ。彼らとの付き合いを深めることで、向こうの世界のことをより理解できるようになったし、考え方についても徐々にわかるようになった。まだまだ学び中だが。
「生活は便利になり、社会も安定したが人間性が失われているのではないか?」そんな考え方をする者は、我々の世界では極々少数派だ。だから、向こうの世界の連中と感情に溢れた話をしている時、自分が自分らしく人間的であるような感覚を覚えるのだ。
ただ、彼らは投資家である。「感情的」に見えるのは、こっちの世界での基準であって、向こうの世界では「完全に感情を排している存在」だ。投資には、鋼のメンタルが不可欠なのだから。
効率化を追求した結果、感情の起伏が乏しくなった我々だが、一方で、やはり人間の本質である「娯楽」に飢えているところがある。いや、むしろ貪欲なのではないかとも感じる。
そんな事を思いながら街に出ている時、たまたま前から向こうの世界の住民と、亜人がキャッキャと楽しそうに話しながら歩いてくるのが見えた。向こうの世界の住民は、衣類が奇抜なのですぐにわかる。ただ、3つ違った。「スーツでは無い」「若者」「亜人と一緒」。向こうの世界の住民は全員が、貴族街に住まいを構えており、交流するのも貴族街の中だけだ。
3つの違いなど、色々と疑問に思うことは多いが、話を聞くには、とにかく話しかけるしかない。
だから、「外からの人かい?」と、声をかけたのだ。
私、ガンタンは向こうの世界の専門家だと自負している。向こうの世界に興味を持ったきっかけは、まず彼らの話が面白いからだ。だいたい45歳以上のベテラン投資家が多く、中には70、80代という御老体もいる。全員に言えるのは、それぞれ独自の投資ロジックを持ち、資産形成で結果を出していることだった。
彼らと話をしていて、魅力的だと感じるのはその生気に溢れた考え方や、話す内容だ。我々“ 統べりし者”の民たちは、徹底して無駄の排除を優先している。だから、効率化に最大の障壁となる『感情』を理性でコントロールする術を身に付けている。感情は社会の効率化において、もっとも大きな無駄。冗長的な時間を削ることで最適化していく。
かくして人々の意志は統一化され、AIがそれを加速させていく社会を我々は実現した。この街は住みやすく、経済格差による軋轢なども一切無いという理想郷を現実化させたのだ。
しかし感情の排除や効率化は、人々の遊びの部分を奪い「人間のロボット化」にも繋がっているように感じる。たとえば衣類。「好み」という非論理的な『感情』による選択で時間をとられるのは、バカげた話なので、みんな同じ衣類を着ている。画一化による効率化を目指した方が便利だし、スマートだからだ。私もその点だけを切り取ると「正しい」とは思うのだが、本来「無駄」とされているところに、人間らしさ、人間の存在理由があったのではないだろうか?そんな風にも思うのだ。彼らとの付き合いを深めることで、向こうの世界のことをより理解できるようになったし、考え方についても徐々にわかるようになった。まだまだ学び中だが。
「生活は便利になり、社会も安定したが人間性が失われているのではないか?」そんな考え方をする者は、我々の世界では極々少数派だ。だから、向こうの世界の連中と感情に溢れた話をしている時、自分が自分らしく人間的であるような感覚を覚えるのだ。
ただ、彼らは投資家である。「感情的」に見えるのは、こっちの世界での基準であって、向こうの世界では「完全に感情を排している存在」だ。投資には、鋼のメンタルが不可欠なのだから。
効率化を追求した結果、感情の起伏が乏しくなった我々だが、一方で、やはり人間の本質である「娯楽」に飢えているところがある。いや、むしろ貪欲なのではないかとも感じる。
そんな事を思いながら街に出ている時、たまたま前から向こうの世界の住民と、亜人がキャッキャと楽しそうに話しながら歩いてくるのが見えた。向こうの世界の住民は、衣類が奇抜なのですぐにわかる。ただ、3つ違った。「スーツでは無い」「若者」「亜人と一緒」。向こうの世界の住民は全員が、貴族街に住まいを構えており、交流するのも貴族街の中だけだ。
3つの違いなど、色々と疑問に思うことは多いが、話を聞くには、とにかく話しかけるしかない。
だから、「外からの人かい?」と、声をかけたのだ。
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