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アンバランスな世界の片隅で。
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「で、デイトレでは何を扱ってるの?うーん。多額の証拠金が必要なオプション取引がやれるほどの資金力はなさそうだし、かと言ってFXのデイトレやるほどギャンブラーっぽくもない。国内株のデイトレでしょ?」
当たりだ。やっているのは値動きの激しい国内銘柄にBETしていくデイトレ方式。どうしてわかったのだろうと?と翔は思ったが、少なくとも資金力は無さそうとキャスが即判断を下した理由は、すぐに理解できた。
翔の服装はパーカーにジーパン。どう考えても、金持ちには見えない。ただ、その他の推理については詳しく聞きたいところ。
「僕がやってるのは、日本株のデイトレ。証拠金に対し、数十倍のお金を動かすことができるレバレッジの高いFXはハイリスクハイリターンだし、オプションは僕の資金力じゃあリターンが少ないし。となると、100万円単位でゴリゴリと回していくデイトレの方が向いてるってなったんだ。てか、どうしてわかったの?」
デイトレード、デイトレとはその名の通り、1日だけで取引を終わらせる投資スタンス。資産にBETしてるのではなく、儲かりそうな機会にBETしているので、厳密に言えば“投資家”ではなく、“投機家”と表現した方が正しい。
翔の場合、1日に何回も、時には数百回にも及ぶトレードをすることで、コツコツと利益を積み上げていく。損が出たときもすぐに切ることで、損を減らしトータルで利益を確保している。社会に対して生産的とは言えないが、それで生きていくしか、今のところ手段を知らなかったのだった。
「これでもいろんな投資家を見てきたから。ギャンブラータイプか、金持ちタイプかとかはすぐに解る。あなたにはガツガツしたところ感じない。でも、なんだろ、目に力がある」
いや、あんたの目ヂカラの方が、すさまじいよ──と、翔は思ったが心の中に留めておいた。
「なぜ、そんなに投資に詳しいの?見たところ、この世界って牧歌的だから…」
古くて田舎っぽい──と言いそうになったが、グッとこらえ牧歌的という言葉に置き換える。
そんな翔の考えを知っているかのように、キャスは言う。
「ここが、あなたたちの世界より遅れてるって、思ってるでしょ?実際は多分、あなたたちの世界より進んでるよ。あと、私が投資に詳しいのは、証券アナリストのアシスタントだから。ずっとPL/BSの分析をしてたもの」
キャスに、いたずらっ子のような笑みが浮かぶ。これが、少女の本質的な気質なのだろう。逃げていた時のこわばったような表情はとっくに消え去っていた。ちなみに、PLは損益計算書、BSはバランスシートの略。どちらも、企業の基礎体力を知るために不可欠な要素だ。
「ずっとデータを見続けるだけって、つまらないじゃん。だから逃げ出してきちゃった」
確かに、勝ち気な性格っぽいキャスにとって、毎日単調な分析作業だけというのは、向いていないだろう。
「で、あなたが助けてくれたってわけ。お礼代わりに、この世界を案内しましょうか?」
と話すキャスの口ぶりには、この街から早く離れたいというニュアンスが含まれているのを、翔は見逃さなかった。それを鑑みて周りを見渡すと、無機質なだけではなく、話をしている人々の口調も荒く、殺伐とした雰囲気も感じる。
ただ、翔にとって、キャスの申し出は願ったり叶ったりだった。ちょっと把握できたように感じ始めたこの世界だが、幻想的なのにデイトレード?的な、アンバランスな話を聞いていると、思っている認識にズレもありそうだ。何より翔は、この世界に興味を持っていたのだった。
当たりだ。やっているのは値動きの激しい国内銘柄にBETしていくデイトレ方式。どうしてわかったのだろうと?と翔は思ったが、少なくとも資金力は無さそうとキャスが即判断を下した理由は、すぐに理解できた。
翔の服装はパーカーにジーパン。どう考えても、金持ちには見えない。ただ、その他の推理については詳しく聞きたいところ。
「僕がやってるのは、日本株のデイトレ。証拠金に対し、数十倍のお金を動かすことができるレバレッジの高いFXはハイリスクハイリターンだし、オプションは僕の資金力じゃあリターンが少ないし。となると、100万円単位でゴリゴリと回していくデイトレの方が向いてるってなったんだ。てか、どうしてわかったの?」
デイトレード、デイトレとはその名の通り、1日だけで取引を終わらせる投資スタンス。資産にBETしてるのではなく、儲かりそうな機会にBETしているので、厳密に言えば“投資家”ではなく、“投機家”と表現した方が正しい。
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「これでもいろんな投資家を見てきたから。ギャンブラータイプか、金持ちタイプかとかはすぐに解る。あなたにはガツガツしたところ感じない。でも、なんだろ、目に力がある」
いや、あんたの目ヂカラの方が、すさまじいよ──と、翔は思ったが心の中に留めておいた。
「なぜ、そんなに投資に詳しいの?見たところ、この世界って牧歌的だから…」
古くて田舎っぽい──と言いそうになったが、グッとこらえ牧歌的という言葉に置き換える。
そんな翔の考えを知っているかのように、キャスは言う。
「ここが、あなたたちの世界より遅れてるって、思ってるでしょ?実際は多分、あなたたちの世界より進んでるよ。あと、私が投資に詳しいのは、証券アナリストのアシスタントだから。ずっとPL/BSの分析をしてたもの」
キャスに、いたずらっ子のような笑みが浮かぶ。これが、少女の本質的な気質なのだろう。逃げていた時のこわばったような表情はとっくに消え去っていた。ちなみに、PLは損益計算書、BSはバランスシートの略。どちらも、企業の基礎体力を知るために不可欠な要素だ。
「ずっとデータを見続けるだけって、つまらないじゃん。だから逃げ出してきちゃった」
確かに、勝ち気な性格っぽいキャスにとって、毎日単調な分析作業だけというのは、向いていないだろう。
「で、あなたが助けてくれたってわけ。お礼代わりに、この世界を案内しましょうか?」
と話すキャスの口ぶりには、この街から早く離れたいというニュアンスが含まれているのを、翔は見逃さなかった。それを鑑みて周りを見渡すと、無機質なだけではなく、話をしている人々の口調も荒く、殺伐とした雰囲気も感じる。
ただ、翔にとって、キャスの申し出は願ったり叶ったりだった。ちょっと把握できたように感じ始めたこの世界だが、幻想的なのにデイトレード?的な、アンバランスな話を聞いていると、思っている認識にズレもありそうだ。何より翔は、この世界に興味を持っていたのだった。
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