FLY HIGH

真山マロウ

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衝撃

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(もう来ないかもしれない……)

 そんなふうに思うほど、あれからのシロは意気消沈。その光景がよみがえるたび、罪悪感にさいなまれていた。

 けど、よく考えたら悪いことしてないよね、私。質問されて正直に答えた。そしたらなんでかシロが落ちこんだ。どっちも悪くない。結果的にそうなってしまっただけのこと。

 だが、それにしてもだ。どうしてシロは、あんなに私の夢を知りたがるんだろう。主張どおり恩返しが目的っていうなら、そこにこだわる必要なさそうだけども。

 どのみち学校が始まればバイトの日はへる。シロと会う回数もへる。それが一気になくなっただけ。というか、もともと一人で過ごしていたんだし、元に戻ったと思えば。

 ぽっかりあいた心の穴に無理やり蓋をして、翌日の休憩時間も外にいく。ベンチが近づくにつれ――目をこらし二度見。春の陽気の幻影かと思った。

「今日もお仕事? 悠乃は働き者だね」

 すでに座っていたシロが私に気づき、笑顔で手をふる。にやけそうになるのを我慢して、しれっと隣に座る。

「春休みのあいだ集中的に入ってるだけ。新学期になったら週二か三になると思う」

 裏返り気味の声がでて焦ったけど、シロは頓着せず。

「勉強もするんだね。悠乃は頑張り屋さんだ。偉いなぁ」

 ごくナチュラルに褒めてくれるのが嬉しいやら照れくさいやらで、こそばゆい。

 私の心配をよそにシロはいつもどおり、よく喋り、よく笑い、全肯定。けれど多少は思うところがあったらしく、この日、初めて夢のことを言ってこなかった。

 ようやく気持ちが伝わったんだと安堵。手放しでシロとの時間を楽しむことができた。が、そんな喜びもつかのま。もしかしたら相当やばい人に絡まれてるのかもと恐怖したのは、その翌日。バイトが休みの平日の午後、近所のスーパーに出かけようとしたときだ。

 はっ、と息をのみ総毛立つ。アパートの前の電柱のそばに、なんとシロが佇んでいた。教えてもいないのに待ちかまえているなんて、これはもう犯罪の香りしかない。

「あ、悠乃。どこいくの? お散歩?」

 私を見るなり声をかけてくる。さも普通なのが余計に恐ろしくて無視して通りすぎたら、すぐさまあとを追ってきた。

「どうしたの? ぼくだよ? シロだよ? 忘れちゃった?」

「見りゃわかるよ!」とも「これ以上つきまとうなら警察呼ぶ!」とも言えない。下手に刺激して逆上でもされようものなら……。くそっ、こんなことなら護身術でも習っておくんだった!
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