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第二の不思議
デリカシーとは
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花岡さんの顔が、余すところなく赤く染まる。
「すみません、私もう行かないと。お菓子ごちそうさまでした」
そうして言い捨て、脇目もふらずに走りさった。ぽかんと見送る私たち。我に返って、夏木くんをたしなめる。
「ダメだよ、あんなこと言うのは」
「なんでだよ」
「デリカシーとか」
「なら、図星ってことか」
「そうかもしれないけど」
この様子だと、諭したところで埒があかなそうだ。
「ちょっと花岡さんと話してくるね」
また泣いているんじゃないかと危惧したのが的中、花岡さんは廊下を曲がったところでしゃがみこんでいた。
「ごめんね。あんなふうだけど夏木くんに悪気はないんだ。変に正直っていうか、ストレートな言い方しかできないっていうか」
フォローしてみたものの効果は薄かったようだ。反応もかんばしくない。
「これから部活だよね。ほんとごめんね、引きとめて」
再三お詫びを伝え、きびすを返す。と、背後から弱々しい声がして、足がとまる。
「……今日は行くのやめます」
まつ毛ぱっちりの大きな目から、涙がぽろぽろこぼれ落ちている。この状況で放置して帰るなんて、できっこない。
「もし時間あるなら、もう少し話せるかな」
承諾を確認後、私だけ一旦戻り、みんなに断りをいれ、帰らせてもらうことにした。
駅前のコーヒーショップでテイクアウトして、近くの公園のベンチに座る。頭の上は曇り空。もうじき梅雨がはじまるのかと思うと、湿気で髪が爆発する身としては憂鬱だ。
「すみません、おごってもらって」
隣に座る花岡さんが、ぺこぺこと頭をさげる。
「気にしないで。こっちこそ付きあってもらって助かるよ。この新作、飲んでみたかったから」
私たちの手には、お揃いのドリンク。もりもりのホイップにチョコチップたっぷりの、クッキーアンドクリーム味。もなかで小腹を満たしたあとでも、するすると入っていく。まあ、お菓子は食べ物でドリンクは飲み物だから、いわゆる別物ってやつだ。
「もしかして、みなさん気づいてましたか。私が部長のこと……」
半分くらい飲んだところで、花岡さんのほうから本題に。
「ああ、えっと、私は、もしかしたらって思った程度かな。夏木くんは、なにかと敏感ぽくて察しがいいみたい」
始終あんな調子だから周りに無関心なのかと思いきや、実は意外とひとの話を聞いているし、変化なんかもよく見ている。このあいだも、一センチ前髪を切ってきた志倉くんに、夏木くんだけが気づいていた。
「すみません、私もう行かないと。お菓子ごちそうさまでした」
そうして言い捨て、脇目もふらずに走りさった。ぽかんと見送る私たち。我に返って、夏木くんをたしなめる。
「ダメだよ、あんなこと言うのは」
「なんでだよ」
「デリカシーとか」
「なら、図星ってことか」
「そうかもしれないけど」
この様子だと、諭したところで埒があかなそうだ。
「ちょっと花岡さんと話してくるね」
また泣いているんじゃないかと危惧したのが的中、花岡さんは廊下を曲がったところでしゃがみこんでいた。
「ごめんね。あんなふうだけど夏木くんに悪気はないんだ。変に正直っていうか、ストレートな言い方しかできないっていうか」
フォローしてみたものの効果は薄かったようだ。反応もかんばしくない。
「これから部活だよね。ほんとごめんね、引きとめて」
再三お詫びを伝え、きびすを返す。と、背後から弱々しい声がして、足がとまる。
「……今日は行くのやめます」
まつ毛ぱっちりの大きな目から、涙がぽろぽろこぼれ落ちている。この状況で放置して帰るなんて、できっこない。
「もし時間あるなら、もう少し話せるかな」
承諾を確認後、私だけ一旦戻り、みんなに断りをいれ、帰らせてもらうことにした。
駅前のコーヒーショップでテイクアウトして、近くの公園のベンチに座る。頭の上は曇り空。もうじき梅雨がはじまるのかと思うと、湿気で髪が爆発する身としては憂鬱だ。
「すみません、おごってもらって」
隣に座る花岡さんが、ぺこぺこと頭をさげる。
「気にしないで。こっちこそ付きあってもらって助かるよ。この新作、飲んでみたかったから」
私たちの手には、お揃いのドリンク。もりもりのホイップにチョコチップたっぷりの、クッキーアンドクリーム味。もなかで小腹を満たしたあとでも、するすると入っていく。まあ、お菓子は食べ物でドリンクは飲み物だから、いわゆる別物ってやつだ。
「もしかして、みなさん気づいてましたか。私が部長のこと……」
半分くらい飲んだところで、花岡さんのほうから本題に。
「ああ、えっと、私は、もしかしたらって思った程度かな。夏木くんは、なにかと敏感ぽくて察しがいいみたい」
始終あんな調子だから周りに無関心なのかと思いきや、実は意外とひとの話を聞いているし、変化なんかもよく見ている。このあいだも、一センチ前髪を切ってきた志倉くんに、夏木くんだけが気づいていた。
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