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18 知らないままで
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狭い路地に足を踏み入れると、落とし穴にでもハマったかの様に地面が抜け、落下した。
悲鳴をあげそうになったのをなんとか歯を噛み締めて堪える。着地に失敗し、俺は尻もちをついた。
落ちてきた場所を見上げると既に穴は塞がっている。一種の転移魔法陣を踏んだらしい。
落下した先は地下室のような場所で窓もなく、目が慣れるまで辺りがよく見えなかった。
目が慣れてから壁をつたってゆっくり歩くと、探していた少女は意外と近くにいた事に気がついた。
「大丈夫?」
呆然と座り込んでいた少女と目が合うと少女は声をあげて泣き初めてしまった。我に返って怖くなったのだろう。まだ4、5歳くらいの子どもだし、感情の自制が利かないのも無理はない。
「うわあぁん」
「大丈夫だから、おいで」
俺は少女を抱き上げた。この状況でこの子が逃げ出したらたまらないからだ。
コツコツと何十人かの足音が聞こえ、半径30メートルくらいで立ち止まる。完全に包囲されていた。
これ、突っ切れるか?1人だったらどうとでもなるが子どもを抱えたままでは難しいかもしれない。攻撃魔法を使うか…。
覚悟を決めて攻撃魔法を放った。幸い、包囲してあた人たちも光で目が眩んだようだ。俺は攻撃を放った方向に全力で走った。その時、脚に鋭い痛みを感じて床に倒れ込んだ。慌てて子どもを庇って転んだせいで肩を強打する形で倒れ込む。
この暗い中矢が飛んできたのだ。古典的な手法だが、相当な腕前の持ち主らしい。脚を狙ったのは多分わざとだな。幸か不幸かこの集団はまだ俺を殺すつもりはないらしい。
薄暗い視界の中、俺は視界にその男を捕らえた。
「予想外の収穫だな」
俺を見下ろす男に驚愕せずには居られなかった。
「…なんだ、てっきり俺をおびき寄せる罠かと思った」
この時は冷静を装ったというよりも、驚愕が一定量を超えて逆に冷静になってしまった。
その男の顔の造形はニールスと同じだ。それでも俺に向ける視線がまるで違うから同一人物だとは思えないが。
「いや、罠だとしたら間抜けすぎる。まさか引っかかるとは思わなかったぞ。でも丁度いい。息子もお世話になっていることだし、ご挨拶しておこう」
「息子」、俺はその言葉に笑いすら込み上げてきた。ニールスの親族は揃いも揃って皆同じだ。形ばかりは親族と認めながらも親族としての情は微塵もないのだから。
何か言葉を返そうと口を開くと、吐き気に襲われ、言葉ではなく、血が出てきそうになった。
「毒矢だ。何もない所だけど、どうぞごゆっくり」
不敵に笑う男に怒りをおぼえながら意識を手放した。
「…アルネ様!」
冷たい石畳の上で、俺は目を覚ました。
肩を揺すっていたニールスに俺はギョッとしてニールスを突き飛ばした。
「あっ、悪い…」
先ほどの男とニールスの顔がそっくりだったから一瞬混乱したのだ。
「いえ、早くここから出ましょう」
ニールスは俺を抱き上げた。
まさかのお姫様抱っこ。俺は気まずくなってニールスの顔がまともに見れない。
「捕まってくれないと落としてしまいます」
いっそ落としてくれ、そう思いながらもニールスの首に手をまわす。
「ここにくるまでに誰かに会ったか?」
「会ったは会いましたけど…会った人は全員拘束しました」
ニールスは質問の意図がよく分かっていないようだ。この様子だとあの男には会っていないのだろう。
俺は安心して胸を撫で下ろした。
こんな事をニールスに知られたくない。自分の父親と対立することも、肉親が自分に何の情もなさそうなことも。
通路には気絶し、拘束魔法がかけられた人が所々転がっている。
首にまわしていた腕に自然と力がこもり、泣きそうになっているのが分からないようにニールスの胸に顔をうずめた。
悲鳴をあげそうになったのをなんとか歯を噛み締めて堪える。着地に失敗し、俺は尻もちをついた。
落ちてきた場所を見上げると既に穴は塞がっている。一種の転移魔法陣を踏んだらしい。
落下した先は地下室のような場所で窓もなく、目が慣れるまで辺りがよく見えなかった。
目が慣れてから壁をつたってゆっくり歩くと、探していた少女は意外と近くにいた事に気がついた。
「大丈夫?」
呆然と座り込んでいた少女と目が合うと少女は声をあげて泣き初めてしまった。我に返って怖くなったのだろう。まだ4、5歳くらいの子どもだし、感情の自制が利かないのも無理はない。
「うわあぁん」
「大丈夫だから、おいで」
俺は少女を抱き上げた。この状況でこの子が逃げ出したらたまらないからだ。
コツコツと何十人かの足音が聞こえ、半径30メートルくらいで立ち止まる。完全に包囲されていた。
これ、突っ切れるか?1人だったらどうとでもなるが子どもを抱えたままでは難しいかもしれない。攻撃魔法を使うか…。
覚悟を決めて攻撃魔法を放った。幸い、包囲してあた人たちも光で目が眩んだようだ。俺は攻撃を放った方向に全力で走った。その時、脚に鋭い痛みを感じて床に倒れ込んだ。慌てて子どもを庇って転んだせいで肩を強打する形で倒れ込む。
この暗い中矢が飛んできたのだ。古典的な手法だが、相当な腕前の持ち主らしい。脚を狙ったのは多分わざとだな。幸か不幸かこの集団はまだ俺を殺すつもりはないらしい。
薄暗い視界の中、俺は視界にその男を捕らえた。
「予想外の収穫だな」
俺を見下ろす男に驚愕せずには居られなかった。
「…なんだ、てっきり俺をおびき寄せる罠かと思った」
この時は冷静を装ったというよりも、驚愕が一定量を超えて逆に冷静になってしまった。
その男の顔の造形はニールスと同じだ。それでも俺に向ける視線がまるで違うから同一人物だとは思えないが。
「いや、罠だとしたら間抜けすぎる。まさか引っかかるとは思わなかったぞ。でも丁度いい。息子もお世話になっていることだし、ご挨拶しておこう」
「息子」、俺はその言葉に笑いすら込み上げてきた。ニールスの親族は揃いも揃って皆同じだ。形ばかりは親族と認めながらも親族としての情は微塵もないのだから。
何か言葉を返そうと口を開くと、吐き気に襲われ、言葉ではなく、血が出てきそうになった。
「毒矢だ。何もない所だけど、どうぞごゆっくり」
不敵に笑う男に怒りをおぼえながら意識を手放した。
「…アルネ様!」
冷たい石畳の上で、俺は目を覚ました。
肩を揺すっていたニールスに俺はギョッとしてニールスを突き飛ばした。
「あっ、悪い…」
先ほどの男とニールスの顔がそっくりだったから一瞬混乱したのだ。
「いえ、早くここから出ましょう」
ニールスは俺を抱き上げた。
まさかのお姫様抱っこ。俺は気まずくなってニールスの顔がまともに見れない。
「捕まってくれないと落としてしまいます」
いっそ落としてくれ、そう思いながらもニールスの首に手をまわす。
「ここにくるまでに誰かに会ったか?」
「会ったは会いましたけど…会った人は全員拘束しました」
ニールスは質問の意図がよく分かっていないようだ。この様子だとあの男には会っていないのだろう。
俺は安心して胸を撫で下ろした。
こんな事をニールスに知られたくない。自分の父親と対立することも、肉親が自分に何の情もなさそうなことも。
通路には気絶し、拘束魔法がかけられた人が所々転がっている。
首にまわしていた腕に自然と力がこもり、泣きそうになっているのが分からないようにニールスの胸に顔をうずめた。
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