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11 討伐②
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壁をつたって洞窟を歩きながら思考を巡らせる。魔法の発動を抑える魔法か…少し懐かしい。
師匠も使っていたが、魔法書を探してもそんな魔法は見つからなかった。師匠は過去に戦ったことのある魔族の魔法をそのまま転用して使っていたのだ。
「ここに何かあります」
ニールスの言葉に立ち止まってしゃがみ込み、触れて確認すると石碑のようだ。文字が彫ってあり、指でなぞれば読むことができた。
「古代語で書いてあるな。ということは500年以上前に立てたものだ」
「なにが書いてあるんですか?」
俺は指を滑らいき、気になる部分で指を止めた。
「名前が書いてある。ヨナス・ベルグ」
「アルネ師匠の師匠のお名前が…?」
「あぁ、どうやら師匠が建国前に封印した魔族らしい。師匠が亡くなって封印が緩んで出てきたんだろう」
師匠は魔族が支配していたエルドラニアの地を奪還するために多くの魔族と戦い、封印してきた。それを知らなかった訳では無いが、こうしてそのことを実感するのは初めてだ。
何も見えない暗がりで慣れない文字を解読しようと夢中になっていると、突然地面に敷いてあった魔法陣が光りだして消えた。
よく見えないが、ゴブリンのような小型の魔物が召喚され出したらしい。他にも大型魔族の気配もあって術者が近くに居るのかもしれない。
こんな狭い中、2人で戦うのは無理がある。ニールスと背中合わせになってどうしたらいいか思考を巡らせていた。その時、ニールスが目配せしたのが分かって嫌な予感がした。
地面が燃え、陣は破られた。その火によって俺も視界に術者を捕らえ、攻撃魔法を放った。
ほんの一瞬の事だが、確かに手応えがあり、魔族は消滅したのを感じる。
「こういう闘い方は関心しない」
魔法で明かりをつけると、ニールスの手首から血がドバドバと流れ出ている。
短刀で自身の手首を刺し、血に含まれる魔力を媒介として陣を破ったのだ。
「お怪我はありませんか?」
俺の話を聞いてないのか?怪我したのはお前だろ。俺が呆れて黙っていると、ニールスは少し項垂れた。
「他に方法が思いつかなくて」
血は止まることなく流れ、地面に滴っているが、ニールスの顔色には何の変化もなかった。
ニールスは確かに居てくれると本当に役に立つが、一緒に任務に行きたくないのは怪我を恐れる気持ちが全くなく、平気で俺の前に出て庇ったりしてくるのが嫌だからだ。こんな事をしてもらう必要は微塵もないのに。
「もう分かったから、顔を上げなさい。お前が傷付くと俺が苦しいよ。だからもう危ないことはするな」
ニールスの手を掴んで治癒魔法をかけると、血は止まった。しかし、傷はまだ塞がっていない。相当容赦なく刺したのだろう。
「戻ったらクラウス兄さんに治してもらいなさい」
「いえ、十分です。ありがとうございます」
嬉しそうに手首を眺めるニールスを見ると背筋が凍る。一体何がそんなに嬉しかったんだ。
「…早く出よう」
「はい!」
洞窟を出ると辺りは夕方で赤く染まっていた。陣の中は時間の流れが異なっていたのかもしれない。
ニールスは俺の半歩後ろを歩く。
「ところで、あの魔族はどうしてあんなに弱かったんですか?殺さず封印する位だからもっと強いのかと思っていました」
「いや、強すぎるくらいだな。普通は封印から100年も経てば力が弱まって消滅するんだ。それなのに700年以上経って出てくるなんて、昔は相当強かったんだろう」
当時は魔族が力を持っていたが、現在は力のない魔族だらけで倒した方が早く、封印は一般的な方法ではない。ニールスが知らないのも当然だろう。
「なるほど、ヨナス大魔法使いが封印した魔族って最低でも100以上ですよね。何体かはまた出てくるか既に出ている可能性があるんですか?」
「…ない、そう願うしかないな」
100カ所以上の封印された地域に赴いて確認してまわるなんて考えただけでうんざりする。
今日は体力というより、精神面で疲れた。その日は宿屋に戻って、いつもよりほんの少し深い眠りについた。
師匠も使っていたが、魔法書を探してもそんな魔法は見つからなかった。師匠は過去に戦ったことのある魔族の魔法をそのまま転用して使っていたのだ。
「ここに何かあります」
ニールスの言葉に立ち止まってしゃがみ込み、触れて確認すると石碑のようだ。文字が彫ってあり、指でなぞれば読むことができた。
「古代語で書いてあるな。ということは500年以上前に立てたものだ」
「なにが書いてあるんですか?」
俺は指を滑らいき、気になる部分で指を止めた。
「名前が書いてある。ヨナス・ベルグ」
「アルネ師匠の師匠のお名前が…?」
「あぁ、どうやら師匠が建国前に封印した魔族らしい。師匠が亡くなって封印が緩んで出てきたんだろう」
師匠は魔族が支配していたエルドラニアの地を奪還するために多くの魔族と戦い、封印してきた。それを知らなかった訳では無いが、こうしてそのことを実感するのは初めてだ。
何も見えない暗がりで慣れない文字を解読しようと夢中になっていると、突然地面に敷いてあった魔法陣が光りだして消えた。
よく見えないが、ゴブリンのような小型の魔物が召喚され出したらしい。他にも大型魔族の気配もあって術者が近くに居るのかもしれない。
こんな狭い中、2人で戦うのは無理がある。ニールスと背中合わせになってどうしたらいいか思考を巡らせていた。その時、ニールスが目配せしたのが分かって嫌な予感がした。
地面が燃え、陣は破られた。その火によって俺も視界に術者を捕らえ、攻撃魔法を放った。
ほんの一瞬の事だが、確かに手応えがあり、魔族は消滅したのを感じる。
「こういう闘い方は関心しない」
魔法で明かりをつけると、ニールスの手首から血がドバドバと流れ出ている。
短刀で自身の手首を刺し、血に含まれる魔力を媒介として陣を破ったのだ。
「お怪我はありませんか?」
俺の話を聞いてないのか?怪我したのはお前だろ。俺が呆れて黙っていると、ニールスは少し項垂れた。
「他に方法が思いつかなくて」
血は止まることなく流れ、地面に滴っているが、ニールスの顔色には何の変化もなかった。
ニールスは確かに居てくれると本当に役に立つが、一緒に任務に行きたくないのは怪我を恐れる気持ちが全くなく、平気で俺の前に出て庇ったりしてくるのが嫌だからだ。こんな事をしてもらう必要は微塵もないのに。
「もう分かったから、顔を上げなさい。お前が傷付くと俺が苦しいよ。だからもう危ないことはするな」
ニールスの手を掴んで治癒魔法をかけると、血は止まった。しかし、傷はまだ塞がっていない。相当容赦なく刺したのだろう。
「戻ったらクラウス兄さんに治してもらいなさい」
「いえ、十分です。ありがとうございます」
嬉しそうに手首を眺めるニールスを見ると背筋が凍る。一体何がそんなに嬉しかったんだ。
「…早く出よう」
「はい!」
洞窟を出ると辺りは夕方で赤く染まっていた。陣の中は時間の流れが異なっていたのかもしれない。
ニールスは俺の半歩後ろを歩く。
「ところで、あの魔族はどうしてあんなに弱かったんですか?殺さず封印する位だからもっと強いのかと思っていました」
「いや、強すぎるくらいだな。普通は封印から100年も経てば力が弱まって消滅するんだ。それなのに700年以上経って出てくるなんて、昔は相当強かったんだろう」
当時は魔族が力を持っていたが、現在は力のない魔族だらけで倒した方が早く、封印は一般的な方法ではない。ニールスが知らないのも当然だろう。
「なるほど、ヨナス大魔法使いが封印した魔族って最低でも100以上ですよね。何体かはまた出てくるか既に出ている可能性があるんですか?」
「…ない、そう願うしかないな」
100カ所以上の封印された地域に赴いて確認してまわるなんて考えただけでうんざりする。
今日は体力というより、精神面で疲れた。その日は宿屋に戻って、いつもよりほんの少し深い眠りについた。
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