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21 新たな旅へ①

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 立ち寄った村の露点で買ったローブを羽織ると髪の色は隠せたが、怪しい人物に見えて田舎の地方では逆に目立ってしまった。
 地図を確かめるとオーレンは歩き続けて2日はかかる。どうしたものかと頭を抱えていると民家に繋がれた馬が一頭目に入った。金貨1枚で引き渡してもらい、1日走り続けてやっとオーレンの港にたどり着いた。

「1人になるのも久しぶりだな」

 しつこいほどだったライオネルがいなくなると、不安が募り、この世界に来てから久しぶりに寂しいと感じた。
 オーレンに着くと、辺りは戦々恐々とした雰囲気だ。ここも反乱軍の戦場となっているのだろうか。
 もう引き返せないし…とオーレンの港付近まで行くと、一筋の雷轟が落ちてきた。この天気のいい日に雷轟。俺は直ぐにそれがライオネルの魔法だと分かった。
 くそっ!どうして4年前、やけになってあんな嘘をついた!どうして許してもらえるなんて考えてたんだ!俺は港へ全力で走り出した。

「おい、辞めろ!」

 やはり、魔法はライオネルのものでユスタフに放った一撃だった。辺りには王族の護衛隊らしき人が十数名が倒れていて、そこの中心で2人は剣を交えている。
 ユスタフの方は満身創痍で、これ以上戦えそうも無いのに対してライオネルの太刀筋はいつも通りだった。ユスタフの…と言っていいか分からないが、水魔法は戦闘向きでもなく、長い間は使えないというハンデもあり、ライオネルに勝てるはずもない。

「思ったより早かったね。リュカがオーレンにつく前に片付けたかったんだけど」
「あぁ、間に合って良かった」

 俺は迷わず2人の間に入ってライオネルの目の前に立った。
 ライオネルの顔を改めて見るととてつもなく悲しそうだった。

「お前、俺を置いていっただろ」

 顔を見たら真っ先に謝ろうと思っていたのに、口をついてそんな台詞がでてきた。

「…ごめん」
「別にいいよ。これからは置いて行くなよ。ほら、もう帰ろう?」

 とは言ってもスピア王国に戻るつもりは全くない。帰る場所は…まぁ、これから探せばいいだろう。

「ごめん」

 ライオネルは少し項垂れると、俺を避けて倒れているユスタフに剣を振り下ろそうとする。慌てて手を拡げ、ユスタフを庇うと、ライオネルは動きを止めた。

「どうしてユスタフ殿下を殺そうとするんだ」
「…ユスタフが生きてるとくるしい。どうしてリュカに苦しい思いをさせてのうのうと生きている人間がいるんだ」

 ゆっくりとした口調だが、生気がなく、正気だとは思えなかった。

「ユスタフが死んで何になるんだ。全て無駄になるだけだ」

 4年前の苦しみもユスタフが死ねば全く無意味で、何のために失ったのか分からなくなる。

「俺にも分からないんだ、誰のためか何の為なのか」
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