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16 再会
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「いたた…」
昨日泊まった宿屋のベッドが堅かったせいで背中を痛めてしまった。その後も馬車に乗ったり、歩いたりを繰り返してようやく目的地にたどり着いた。
それにしても黙って後ろをついてくるライオネルをそろそろなんとかしたい。どこがで巻こうにもライオネルはどんな人込みでも俺を見つけて走ってくる。追いかけっこになればライオネルに勝てるはずもないのだ。
「逃げないでよ。本当はリュカのしたいことはなんだって俺が叶えてあげたい。もうアリアに会うことも止めたりしないから逃げないで…」
後ろを意識しながらなんとか距離を置けないかと考えていた時、唐突にライオネルが手首を掴んだ。ライオネルがどうしてここまで俺に執着してくるのはなぜなのか気にしないようにしていたが、もし記憶を取り戻したら分かったりするのだろうか。俺は大きな不安と少しの恐怖をおぼえた。
「逃げないよ。どうせ逃げられないし」
「それは…」
俺はライオネルの手を振り払ってまた歩き出した。
詳しい住所はレオンから聞かなかったが大した問題ではない。ティリス共和国自体が小さな国で人口も多くはない。現在地の港町も田舎の小さな町だ。
俺は市場で果物を売っていた初老の婦人に声をかけた。
「すみません、少しお尋ねしてもよろしいですか」
「なんだい?」
「最近ここら辺に越してきた凄く美人な女の子知りませんか?」
「あぁ!」
婦人はすぐにピンときたようで住所を教えてくれた。他人に勝手に住所を教えるなよと聞いておいて少し呆れたが、婦人はこれからどんな面白い観劇が起こるのかみに行きたいと野次馬根性まで発揮しているようだった。
住所を頼りに一つの建物を見つけ、ノックしたが、何の反応もなっかた。ドアを押すと開いている。
「お客さん、まだ準備中です」
テーブルがいくつも並んだ空間を掃除していた女性が言ってからちらりとこちらを見た途端に固まった。
「久しぶりだね、アリア」
「うわっ、何しにきたの?」
開口一番それかよ。アリアがいなくなったせいでいろいろ大変だったんだぞ。という言葉を飲み込んでアリアに向き直る。
「ちょっと頼みがあって」
アリアは体を捻って俺の後ろにいる人物を認識すると苦虫を嚙み潰したような顔をした。
「ちょっと、ライオネルは入ってこないで」
「は?俺に聞かれたらまずいようなことでも?」
「フン、婚約した男女の密会に入ってくるなんて無粋だとは思わないの?」
「何が婚約した男女だ!破談に決まってるだろ!」
ああ、二人は顔をあわせるとこんな感じだったなとひどく懐かしく感じた。しかし、ライオネルは他人に意外と淡泊なので本気で感情を出せるってことは相性がいいんだろう。
「とにかくライオネルは出て行って!」
そう言って本当にライオネルを押すと、ライオネルも渋々自分の足で出ていった。
昨日泊まった宿屋のベッドが堅かったせいで背中を痛めてしまった。その後も馬車に乗ったり、歩いたりを繰り返してようやく目的地にたどり着いた。
それにしても黙って後ろをついてくるライオネルをそろそろなんとかしたい。どこがで巻こうにもライオネルはどんな人込みでも俺を見つけて走ってくる。追いかけっこになればライオネルに勝てるはずもないのだ。
「逃げないでよ。本当はリュカのしたいことはなんだって俺が叶えてあげたい。もうアリアに会うことも止めたりしないから逃げないで…」
後ろを意識しながらなんとか距離を置けないかと考えていた時、唐突にライオネルが手首を掴んだ。ライオネルがどうしてここまで俺に執着してくるのはなぜなのか気にしないようにしていたが、もし記憶を取り戻したら分かったりするのだろうか。俺は大きな不安と少しの恐怖をおぼえた。
「逃げないよ。どうせ逃げられないし」
「それは…」
俺はライオネルの手を振り払ってまた歩き出した。
詳しい住所はレオンから聞かなかったが大した問題ではない。ティリス共和国自体が小さな国で人口も多くはない。現在地の港町も田舎の小さな町だ。
俺は市場で果物を売っていた初老の婦人に声をかけた。
「すみません、少しお尋ねしてもよろしいですか」
「なんだい?」
「最近ここら辺に越してきた凄く美人な女の子知りませんか?」
「あぁ!」
婦人はすぐにピンときたようで住所を教えてくれた。他人に勝手に住所を教えるなよと聞いておいて少し呆れたが、婦人はこれからどんな面白い観劇が起こるのかみに行きたいと野次馬根性まで発揮しているようだった。
住所を頼りに一つの建物を見つけ、ノックしたが、何の反応もなっかた。ドアを押すと開いている。
「お客さん、まだ準備中です」
テーブルがいくつも並んだ空間を掃除していた女性が言ってからちらりとこちらを見た途端に固まった。
「久しぶりだね、アリア」
「うわっ、何しにきたの?」
開口一番それかよ。アリアがいなくなったせいでいろいろ大変だったんだぞ。という言葉を飲み込んでアリアに向き直る。
「ちょっと頼みがあって」
アリアは体を捻って俺の後ろにいる人物を認識すると苦虫を嚙み潰したような顔をした。
「ちょっと、ライオネルは入ってこないで」
「は?俺に聞かれたらまずいようなことでも?」
「フン、婚約した男女の密会に入ってくるなんて無粋だとは思わないの?」
「何が婚約した男女だ!破談に決まってるだろ!」
ああ、二人は顔をあわせるとこんな感じだったなとひどく懐かしく感じた。しかし、ライオネルは他人に意外と淡泊なので本気で感情を出せるってことは相性がいいんだろう。
「とにかくライオネルは出て行って!」
そう言って本当にライオネルを押すと、ライオネルも渋々自分の足で出ていった。
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