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9 何かした?
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「リュカ…」
無言でライオネルが抱きついてくるものだから更に動けなくなる。
「どうした?具合悪い?」
俺は軽く押しのけるが、微動だにしていない。本当にどこかおかしくなったのかと疑い始めた頃にやっと離れてくれた。
「ごめん、リュカが来てくれると思ってなかったから嬉しくて。取り敢えず入って」
背中を向けたライオネルの雰囲気がいつもと違う気がする。不安になりながらもついていくと、そこはソファとローテーブルが置かれた一般家庭のような内装の一室だった。ライオネルが先に座って隣を無言でポンポンと叩いたので大人しくそこに座った。
「体調悪い?大丈夫か?」
「もうなんともない。リュカの方が顔色悪いよ」
「ああ、大会後から疲れが取れてないだけ」
ライオネルのお見舞いに来たのにどうして俺が心配されているんだ?思わず少し小首を傾げる。
「あの後、ユスタフの魔力は使った?」
「使ってない」
俺は首を横に振った。普段から魔力を使わないので使い方がイマイチよく分からないが、普通に魔力を生成できる人は血液のように体内を循環して常に新しい魔力が生成されているらしい。
「古い魔力が残っていると身体に悪いからその魔力は俺に渡して?」
「適当に魔力を消費した方がよくないか?」
俺の言葉にライオネルは少しの間一時停止したかのように固まった。
「魔力は一長一短で扱えるようにはならないし、それに…放っておくとどんどん体調が悪くなるよ」
脅しをかける口調に俺は不安になってくる。
「確かに…?じゃあ、お願いします」
「うん、ちょっと口開けて」
どんな羞恥プレイだよ。早く終わらせてくれ!強く瞼を閉じると左頬の黒子がある辺りに何かが触れたのがわかった。
不意打ちをくらい、唖然としているところに間髪入れずに口を合わせた。
「んっ…むう」
あまりに長いこと口を塞がれたままでいるから呼吸が苦しくなってライオネルを押しのけて口を離した。なんとか一呼吸するとライオネルが顎を掴んで今度は舌を滑り込ませた。苦しすぎて反射的にライオネルの舌を噛むとやっと口は離された。
「何してんだ!」
「ごめん、やり方が分からなくて…」
ライオネルは如何にも申し訳なさそうで、いつも通りのライオネルだった。
呼吸を落ち着かせてみると、確かに体調が良くなっている。
「リュカ、怒ってる?」
目を潤ませているライオネルを見ると可哀想に見えてくる。まあ、俺の為にしたことだよね。だったら頬にキスした理由はわからないが…。
「怒ってないよ。こっちこそごめん。舌痛いだろ?」
「痛くないよ」
絶対嘘だろ。思いっ切り噛んだんだから。
「でね、」
「うん?」
「リュカが助けたい人がいたら俺に言って。俺が助けるから。リュカに辛いおもいしてほしくない」
ライオネルの発言は根本的に違う。人を助けようと思って助けたことはないし、別に辛い想いをしたこともない。口に出そうとしたが、上手く言えそうになかった。代わりに疑問だけが言葉になった。
「どうしてそこまでするの?俺に何も返せるものはないのに」
「逆だよ。俺がリュカに返してる途中」
記憶を辿っても俺は何もした覚えがない。転生前のリュカが何かしたのか?そう考えると深くは追求できなかった。でも、ゲーム内ではライオネルがリュカを助けたことは一度もなかったはずだ。
結局、自分の中でライオネルの発言を消化しきれないまま自宅に帰って眠ってしまった。
無言でライオネルが抱きついてくるものだから更に動けなくなる。
「どうした?具合悪い?」
俺は軽く押しのけるが、微動だにしていない。本当にどこかおかしくなったのかと疑い始めた頃にやっと離れてくれた。
「ごめん、リュカが来てくれると思ってなかったから嬉しくて。取り敢えず入って」
背中を向けたライオネルの雰囲気がいつもと違う気がする。不安になりながらもついていくと、そこはソファとローテーブルが置かれた一般家庭のような内装の一室だった。ライオネルが先に座って隣を無言でポンポンと叩いたので大人しくそこに座った。
「体調悪い?大丈夫か?」
「もうなんともない。リュカの方が顔色悪いよ」
「ああ、大会後から疲れが取れてないだけ」
ライオネルのお見舞いに来たのにどうして俺が心配されているんだ?思わず少し小首を傾げる。
「あの後、ユスタフの魔力は使った?」
「使ってない」
俺は首を横に振った。普段から魔力を使わないので使い方がイマイチよく分からないが、普通に魔力を生成できる人は血液のように体内を循環して常に新しい魔力が生成されているらしい。
「古い魔力が残っていると身体に悪いからその魔力は俺に渡して?」
「適当に魔力を消費した方がよくないか?」
俺の言葉にライオネルは少しの間一時停止したかのように固まった。
「魔力は一長一短で扱えるようにはならないし、それに…放っておくとどんどん体調が悪くなるよ」
脅しをかける口調に俺は不安になってくる。
「確かに…?じゃあ、お願いします」
「うん、ちょっと口開けて」
どんな羞恥プレイだよ。早く終わらせてくれ!強く瞼を閉じると左頬の黒子がある辺りに何かが触れたのがわかった。
不意打ちをくらい、唖然としているところに間髪入れずに口を合わせた。
「んっ…むう」
あまりに長いこと口を塞がれたままでいるから呼吸が苦しくなってライオネルを押しのけて口を離した。なんとか一呼吸するとライオネルが顎を掴んで今度は舌を滑り込ませた。苦しすぎて反射的にライオネルの舌を噛むとやっと口は離された。
「何してんだ!」
「ごめん、やり方が分からなくて…」
ライオネルは如何にも申し訳なさそうで、いつも通りのライオネルだった。
呼吸を落ち着かせてみると、確かに体調が良くなっている。
「リュカ、怒ってる?」
目を潤ませているライオネルを見ると可哀想に見えてくる。まあ、俺の為にしたことだよね。だったら頬にキスした理由はわからないが…。
「怒ってないよ。こっちこそごめん。舌痛いだろ?」
「痛くないよ」
絶対嘘だろ。思いっ切り噛んだんだから。
「でね、」
「うん?」
「リュカが助けたい人がいたら俺に言って。俺が助けるから。リュカに辛いおもいしてほしくない」
ライオネルの発言は根本的に違う。人を助けようと思って助けたことはないし、別に辛い想いをしたこともない。口に出そうとしたが、上手く言えそうになかった。代わりに疑問だけが言葉になった。
「どうしてそこまでするの?俺に何も返せるものはないのに」
「逆だよ。俺がリュカに返してる途中」
記憶を辿っても俺は何もした覚えがない。転生前のリュカが何かしたのか?そう考えると深くは追求できなかった。でも、ゲーム内ではライオネルがリュカを助けたことは一度もなかったはずだ。
結局、自分の中でライオネルの発言を消化しきれないまま自宅に帰って眠ってしまった。
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