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肆
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「白軒虎の母親は、劉賢妃に仕える宮女だったの。宮女という立場では、陛下のお手付きを拒むことは不可能だったでしょうね。……けれど、主を裏切ったことには変わりない。子のいない劉賢妃を差し置いて、その宮女はたった一度の恩情で子を身ごもった。……これを聞いても、白軒虎が劉賢妃に愛されている、なんて馬鹿なことをいうつもり?」
蘭玲は両目を見開いて、ただ口を閉ざすしかなかった。
「それにしても……お前がこなたに逆らおうとするなんて、思いもしなかったわ。『軒虎と婚姻したい』と言っていたのは、戯言ではなく本気だったのね」
「でも、残念」と、殷貴妃は花咲くように笑った。
「白軒虎は、近々、こなたの養子になることが決まっているの。殷お兄様の口添えのお陰で、陛下からの許可も下りているわ。……こなたの養子となる白軒虎には、必ず、白蘭花と婚姻を結んでもらわなくちゃね」
「そんな……っ」
蘭玲の悲痛な叫びなど聞こえていない殷貴妃は、ホホホと笑って再び花鋏を手に持った。そして――
「お前たち。蘭玲を例の部屋へ閉じ込めてきてちょうだい」
その言葉に、蘭玲の顔が恐怖に引き攣る。一気に恐慌状態に陥った蘭玲は、顔を青ざめさせ、涙を流して殷貴妃に這い寄った。
「いっ、いや……っ、嫌ですお母様ぁっ! あたしが悪かったんです! あたしが無知で愚鈍で役立たずなのが悪いんですぅ……っ! だからお母様……っ」
「早く連れて行きなさい」
「いやっ! いやぁっ! お母様っ! お母様ぁーーっ!」
暗殺者たちに引きずられながら、例の部屋――拷問部屋へと連れ去られた蘭玲を見て、殷貴妃はフンと鼻を鳴らした。
「大した能力の無い子だけど、回復力が人並み外れているのだけは利点だわね」
「お陰で躾けのしがいがあるもの」と、殷貴妃はフフッと笑って、パチンと内芽を切ったのだった。
蘭玲は両目を見開いて、ただ口を閉ざすしかなかった。
「それにしても……お前がこなたに逆らおうとするなんて、思いもしなかったわ。『軒虎と婚姻したい』と言っていたのは、戯言ではなく本気だったのね」
「でも、残念」と、殷貴妃は花咲くように笑った。
「白軒虎は、近々、こなたの養子になることが決まっているの。殷お兄様の口添えのお陰で、陛下からの許可も下りているわ。……こなたの養子となる白軒虎には、必ず、白蘭花と婚姻を結んでもらわなくちゃね」
「そんな……っ」
蘭玲の悲痛な叫びなど聞こえていない殷貴妃は、ホホホと笑って再び花鋏を手に持った。そして――
「お前たち。蘭玲を例の部屋へ閉じ込めてきてちょうだい」
その言葉に、蘭玲の顔が恐怖に引き攣る。一気に恐慌状態に陥った蘭玲は、顔を青ざめさせ、涙を流して殷貴妃に這い寄った。
「いっ、いや……っ、嫌ですお母様ぁっ! あたしが悪かったんです! あたしが無知で愚鈍で役立たずなのが悪いんですぅ……っ! だからお母様……っ」
「早く連れて行きなさい」
「いやっ! いやぁっ! お母様っ! お母様ぁーーっ!」
暗殺者たちに引きずられながら、例の部屋――拷問部屋へと連れ去られた蘭玲を見て、殷貴妃はフンと鼻を鳴らした。
「大した能力の無い子だけど、回復力が人並み外れているのだけは利点だわね」
「お陰で躾けのしがいがあるもの」と、殷貴妃はフフッと笑って、パチンと内芽を切ったのだった。
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