私の心はあなたのもの

みミリィ

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比べちゃいけないんだろうけど……

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「お嬢様っ!」
 
 昨日あの様な・・・・事があったのに、今まさに更に緊急事態なのか!!
 ノックするのも忘れて扉を開いて中に入る。
 
 と、ソファーに腰掛けてびっくりしているマリエナが居た。
 周りを見るが1人だった。
 
「マリエナお嬢様、大丈夫ですか?」
 
 駆け寄ってお嬢様を守る様に囲い込んだ両手をソファーの背もたれへ伸ばす。
 辺りの様子を伺って誰も居ないとわかると、ほっと一息つく。そして目の前には見る見るうちに真っ赤な顔になるマリエナ。
 
「あの……その……」
 
 聞くと昨日は途中で覚醒し、よく眠れなくて昼寝をしていたらしい。
 ならば、彼女は今、夢でうなされていたのか。
 彼女が受けたであろう心の傷は、いかほどのものだったのだろう。
 
 夢の内容は覚えていないそうで、それだけは幸いだと思った。
 
 は、と距離が近い事に気が付きあわてて距離を取る。
 
 
 
 
 
 
 マリエナが昨夜眠れなかったのは色々考えていたからだ。
 思い返せば婚約者のエクトルの乱暴で強引さには不快を覚えた。
 それに比べてアデラールの手つきの繊細さやこちらに気遣ってくれる優しさ。
 同じ男なのにこうも違うのかと驚いた。
 
 アデラールの事は前から知っていたし特に気にも止めてなかった。
 昨日、強引な事をされるまでエクトルへの淡い恋心は確かにあった。
 アデラールの優しさに触れてしまってからは婚約者エクトルに対して嫌悪感しか残らない。
 
 昨夜はずっとアデラールにもっと触れられていたらどうなっちゃうのかなと妄想して眠れなかったのだ。
 婚約者の事なんてすっかり忘れていた。
 
 先程まで見ていたのは、アデラールに抱きしめられてチュッチュされていた夢、なんてアデラール本人に口が裂けても言えない。
(しかも勿体ぶって「いや」なんて言っていたのが寝言に出ていたなんてとても言えない)
 
 しかも夢が覚めると、彼の腕の中(というほど密着していないが)で守られて(敵も何も無いのだが)胸がかつて無いほどに鼓動を刻む。俗にいう「頭がふっとーしちゃうよぉ」状態だ。
 
 すぐさま距離を取られて残念に思うが、またそのマリエナに対する真摯しんしな態度が最高にこれ以上無いくらいマリエナを感動で震えさせた。
 
 
「マリエナお嬢様、大変失礼をいたしました」
 
「(まっったく失礼なんかじゃないので、ぎゅっと抱きしめて下さい)」
 
 言葉にならない言葉アイコンタクトで返したのだが、うまく伝わらない。
 この時のマリエナは男性が近くにいるせいで恐怖に震えてアデラールを涙目で見上げている……様に見えていた。
 
 お嬢様を怖がらせてしまった……アデラールは己の行動を後悔していた。
 アデラールはマリエナを怖がらせない様、微笑みかけた。後悔進行形の微笑みは少し影が差し、マリエナの心は(なんて素敵なの!)と更にきゅんきゅん締め付けられた。もはやマリエナの目はハートになっている。
 
 
「お嬢様、昨日の件ですが誰かに相談されましたか?」
 
 冷や水をかけられたように、はっとした。 
 目をハートにしている場合じゃなかった。
 婚約者があんなに乱暴な事をしてきたのだ。
 
 誰かに相談したほうがいいとは思うのだが、なぜあの様な事をしてきたのかまだよくわからない。
 でもなんと表現したらいいのか未だ整理できてない。
 
「旦那様に私からお伝えしましょうか」
 
 アデラールを見るとこちらをすごく心配してくれているのがよく分かる。
 様々な可能性を考えるが、エクトルがあんな事をしてきたとお父様に伝えたらどうなるのか想像もつかない。
 
 それでもまだ、エクトルを庇う様なきもちがあった。エクトルへの恋心は風前の灯、むしろ炎は消えてろうそくの芯の部分が少し赤く残ってるかな状態ではあったが。
 
 伝えてしまったら両家の関係が悪化しそうで、兄のマシューとも私のせいで仲を違えてしまうのは可哀想に思えた。
 それに婚約者が居る身分でアデラールの事を好ましく思う気持ちに少し後ろめたさを感じていた。
 
 もう少し自分の身のふりをよく考えてからでも、父に伝えるのは遅くはないだろう。
 首を横に振り、アデラールを見上げる。
 
 
「相談してほしくないです、機を見て私から言います」
 
 
 きっとデリケートな部分だからだろうか、アデラールはそれ以上意見を言う事なく引いてくれた。
 
 それでも、とアデラールは続ける。
「お嬢様が何かお困りのことがあれば、いつでもお力になります」
 
 
「ありがとうございます……」
 
 
 アデラールは小さな可愛らしい小壺をサイドテーブルに置いた。
 
「よく効く薬だそうで、よろしければお使い下さい」
 
 
 そう言い残して彼は私の部屋から出ていった。
 彼の残した薬壺は、ピンク色の本体にキラキラとしたガラスが宝石の様に施されていてとても可愛らしかった。
 蓋を外してみる。
 ジャコウの香りが強すぎず、心地よく感じた。
 早速薬を手に取り、痛めたところに塗るとすぐに痛みが引いて心なしか色が薄くなったかの様に感じる。
 昨日の今日で用意してくださったのだろうか。
 彼には本当にお世話になりっぱなしで、感謝してもしきれないなと考えていた。
 
 
 
 
 
 とりあえずあの乱暴者に真意を確認すべく、会いに行くことにした。
 何か私の考えもつかない様な深い理由があったりするのかと、本人に聞かないことにははじまらないなとの結論に達したからだ。
 だからといって、あの様な事を再びされたら嫌なのでマシューお兄様を使うことにした。
 
「なぜ僕がこんなことを……」
 
 すごく不満そうな兄は馬車の中でぶつぶつ文句を言っていた。
 昨日途中でエクトルを回収してくれた事で未遂に終わったから、感謝しなければならないとは思うのだが、それを理由に会いに行くのについてきて欲しいと懇願したのだ。
 マシューお兄様は何処かに遊びに行こうとしていたので、無理矢理だったのは否めない。
 だけど、1人では会いに行きたくないので必死についてきて欲しいと頼み込んだら折れてくれた。
 
 エクトルのお家に着いたところ、家令より庭で魚釣りをして遊んでいるとの回答が来た。
 勝手知ったる婚約者兼、幼馴染の家なので庭にてエクトルを探す。
 庭といっても、広大な土地があるので探すのにも一苦労だった。
 かなりの距離がある森を抜けると湖があり、そのほとりには東屋がある。
 
 マシューと共にエクトルを探して歩いて茂みから東屋を目指していると何かが聞こえてきた。
 
 
「あっ! あっ!」
 
 ぱんぱんぱんぱん
 
 ……
 あそこの東屋で昔みんなでサンドウィッチを食べたっけ。
 かつての思い出が詰まった白亜はくあのテーブルの上にてお尻が丸出しになってヘコヘコと動いていた。
 
 白く細いニーソックスの足がよく蠢くお尻を挟む様にクロスしていた。
 
「あらま」
 
 思わず声が出る。
 その口を塞いてきたマシューお兄様を見上げる。
 可哀想なくらい真っ青になっていた。
 私の口を塞いでいる手も心なしか震えてる?
 
 
「エルー! 気持ちいいの! ああっ!」
 
 エルーだって。エクトル様ってそう呼ばれてるのね。
 ふむふむと感心しながら観察する。
 むき出しのお尻がせわしなく動いていたかと思うとぴくりぴくりと痙攣して静止した。
 
 はぁー、はぁー、とすごい呼吸が荒いエルーはリップ音をたてて白い足の持ち主に情熱的なキスをしている。
 
 めっちゃ腕を首に回されて抱き締めてるじゃん?
 
「アリス、良かったよ……もう一回……」
 
 ちゅ、ちゅ、からぬちゃぬちゃまですごい水っぽい音が響く。
 
 あらー、こちらにまだ気付いてないのかしら。
 
「今まで、なぜ、我慢していたのだ。昨日のアイツは、硬くて入らなくて、全然! 気持ち良く、なかったけど、アリスは、ふわふわで、中が熱くて、蕩けそうだ」
 
 すっごい息切れてるじゃん? 運動不足なのかしら。
 
「ああっ」と少し情けない声がしてまた動きが止まった。
 
 石像と化したマシューお兄様の拘束から逃れて 
「エルー様気持ちよさそうですね」
 と、声をかけてみた。
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