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第303話:予期せぬ訪問
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「ふい~、やっと予定決まったな」
「ああ、そうだな。
バーミリオンには些か厳しい条件になってしまったがな」
「うう…、まだ信じられません。
僕なんかがあの族長と闘うことになるなんて…」
〝対立試合〟の日程とスケジュールを詰め終わり、俺たちは宿へ戻っていた。
ザベっさんだけはまだご家族と話すことがあるようで、家に残っている。
『族会』が開かれるのは十日後。
本来の予定は二日後だったそうだが、魔族の襲撃もあり、今月は後倒しになるようだ。
まあ、正直俺たちとしても助かる。
闘いの傷がまだ完全に癒えていないのもあるし、一度モネのいる『理の国』に戻りたかったしな。
…『仮面遊戯』の件で、激おこ確定してっけど。
「ともあれ、これで君の願望を叶えることに一歩前進したのは間違いないじゃないか。
君の手でナイセルを『外』へ連れ出したいのだろう?」
「エッ!? な、なんでそれを…」
「いや…あんな熱い演説されちゃあさすがに分かるって。
お前、なんであれをミアに言わねえんだよ?」
「い、言えませんよ!
ほとんど告白じゃないですか!」
カァァと、トマトみてえに顔を赤くした照れ照れのイザーク。
でもなー、当の本人が誰も好きな人が居ないってんなら、尚のこと意識させるべきだと俺は思う。
…まあ、ヘタに玉砕されても責任持てねえし、そんな野暮なことは言わんけど。
「しかし、君の杞憂はもっともではありそうだ。
たしか…センチュリー族長は、先代の〝戦士長〟だったか?」
「はい…。
代々ドノヴァンで引き継がれてきた〝戦士長〟とは、必ず〝最強〟でなければならない、とても厳しい役職なんです」
「でもそれは『村の最強』だろ?
なら、こう自分に問えばいい。
『ドラゴンと元村最強…どっちの相手をすんのが楽だ?』って」
「「………」」
俺的にナイスなアドバイスをしたつもりだが、二人の表情は苦虫を噛み潰したような変な顔だった。
あ、あれ?
「あの…普通はドラゴンを敵に回すことなんて滅多にありませんよ?」
「いや…仕方ないんだバーミリオン。
零人は昔からずっとドラゴンと闘ってきたゆえに、もはや竜との戦闘は彼の一部と化している」
「おいコラ!!
いつ誰がドラゴンとの闘いをルーティーンにした!?」
カン! カン! カン! カン!
俺がルカに詰め寄った時だった。
村の出入口の方から、鐘を叩くような音が鳴り響いた。
な、なんだ…? 変な気配も感じるような?
すると、入り口に設置されたヤグラに立っている見張りの男の人が大声を叫んだ。
「大変だああああ!!!
〝ドラゴン〟がこっちにやって来るぞおお!!」
「「「!!!」」」
なんでだああああああ!!?
とうとう『ドラゴン』を口にしただけで、俺んとこに現れやがったぞ!!!
い、いや待て落ち着け…。
おそらく…
「カ、カーティスかオズのおっさんなんじゃないのか!?
多分、アイツらまたドラゴンに化けて…」
「…いや、それならあれほど騒がんだろう。
ダアトは訓練所に居るうえ、バルガは宿でイビキをかいて寝ている。
そもそも彼らのドラゴンの形態は既に村の人々に認知されてるはずだ」
「…僕、ちょっと行ってきます!」
「あっ!? イザーク!」
村中が騒然とするなか、イザークは武器も持たずに入り口の方へ駆け出して行った。
ア、アイツ…こういうところでは勇気あるな。
残されたルカと俺は顔を見合わせる。
「ひとまず私たちも入り口へ行こう。
…〝責任〟は、取らないとな」
「やっぱ俺のせいなの!? ねえ!」
☆☆☆
「おい!? ドラゴンの種族は!?」
「まだ分からん! 誰か戦士長を!」
「クソ…、なぜ昨日から立て続けに…!」
入り口へ行くと、比較的ケガが軽度な村の戦士たちが集結していた。
全員の首は上を向いており、太陽を背に近づいてくるドラゴンの陽炎を睨みつけている。
「…ったく、どうして俺の周りに竜ばっかり…」
「ボヤくのは後だ。
村に被害が出ないよう、まずは私たちがヤツを引き付けて……んん?」
隣で合体する準備をしていたルカが何かに気が付いた。
「ルカ…どうした?」
「あのエネルギー構成は…。
零人、シルエット的にも見覚えがないか?」
「え」
まさか俺の知ってるやつ?
眩く輝く太陽の光を目に浴びせながら、改めてドラゴンの姿を見てみる。
翼・胴・四肢・頭×2・尻尾…うん、別にどこにでもいる普通の…ん? 頭が二つ?
「竜種を確認した! 『双頭竜』だ!
ド、ドノヴァンの護り竜がなぜ…!?」
「急いで各班に伝えろ! 戦闘の用意だ!」
…………。ア、アイツだったのかぁ。
「おいアンタら待ってくれ!
多分あのドラゴンは村を襲いに来たんじゃない」
「お、お客人?」
「何を言い出すんだ! アンバインだぞ!?」
何の用で来たのかは知らんが、これ以上大ごとになっても困る。
奴さんには丁重にお帰り願おう。
「ちょっと待っててくれ。
俺とルカでアイツと話してくる」
「『は、話す』だって!?
だ、だが…、あの竜は暴れると手が付けられな…」
ボン!
「「「おおっ!?」」」
時間も惜しいので、ルカと合体を行なった。
形態は空を飛べる『融解』だ。
「大丈夫。あのドラゴンは〝イイ奴〟だ。
アンタらもそうカッカしないで、野郎に笑いかけてやってくれや。
こんな感じでさ」
「「「…ッ!?」」」
ニマっとスマイルを作って、村の戦士たちに送ってやると、全員なぜか息を飲んでしまった。
……あれ、なんかデジャヴ?
さっき顔を赤くしていた誰かさんみたい。
「あ、あの…レイト!」
「お、誰かさんか。なんだ?」
「何もかも任せきりになってゴメンなさい。
でも、魔物と心を通わせられるのはあなただけ…。
申し訳ないですが、よろしくお願いします!」
「ああ。イザークはミアの傍にでも居てやりな。
どれ…ちょっくら行ってくるぜ!」
「ああ、そうだな。
バーミリオンには些か厳しい条件になってしまったがな」
「うう…、まだ信じられません。
僕なんかがあの族長と闘うことになるなんて…」
〝対立試合〟の日程とスケジュールを詰め終わり、俺たちは宿へ戻っていた。
ザベっさんだけはまだご家族と話すことがあるようで、家に残っている。
『族会』が開かれるのは十日後。
本来の予定は二日後だったそうだが、魔族の襲撃もあり、今月は後倒しになるようだ。
まあ、正直俺たちとしても助かる。
闘いの傷がまだ完全に癒えていないのもあるし、一度モネのいる『理の国』に戻りたかったしな。
…『仮面遊戯』の件で、激おこ確定してっけど。
「ともあれ、これで君の願望を叶えることに一歩前進したのは間違いないじゃないか。
君の手でナイセルを『外』へ連れ出したいのだろう?」
「エッ!? な、なんでそれを…」
「いや…あんな熱い演説されちゃあさすがに分かるって。
お前、なんであれをミアに言わねえんだよ?」
「い、言えませんよ!
ほとんど告白じゃないですか!」
カァァと、トマトみてえに顔を赤くした照れ照れのイザーク。
でもなー、当の本人が誰も好きな人が居ないってんなら、尚のこと意識させるべきだと俺は思う。
…まあ、ヘタに玉砕されても責任持てねえし、そんな野暮なことは言わんけど。
「しかし、君の杞憂はもっともではありそうだ。
たしか…センチュリー族長は、先代の〝戦士長〟だったか?」
「はい…。
代々ドノヴァンで引き継がれてきた〝戦士長〟とは、必ず〝最強〟でなければならない、とても厳しい役職なんです」
「でもそれは『村の最強』だろ?
なら、こう自分に問えばいい。
『ドラゴンと元村最強…どっちの相手をすんのが楽だ?』って」
「「………」」
俺的にナイスなアドバイスをしたつもりだが、二人の表情は苦虫を噛み潰したような変な顔だった。
あ、あれ?
「あの…普通はドラゴンを敵に回すことなんて滅多にありませんよ?」
「いや…仕方ないんだバーミリオン。
零人は昔からずっとドラゴンと闘ってきたゆえに、もはや竜との戦闘は彼の一部と化している」
「おいコラ!!
いつ誰がドラゴンとの闘いをルーティーンにした!?」
カン! カン! カン! カン!
俺がルカに詰め寄った時だった。
村の出入口の方から、鐘を叩くような音が鳴り響いた。
な、なんだ…? 変な気配も感じるような?
すると、入り口に設置されたヤグラに立っている見張りの男の人が大声を叫んだ。
「大変だああああ!!!
〝ドラゴン〟がこっちにやって来るぞおお!!」
「「「!!!」」」
なんでだああああああ!!?
とうとう『ドラゴン』を口にしただけで、俺んとこに現れやがったぞ!!!
い、いや待て落ち着け…。
おそらく…
「カ、カーティスかオズのおっさんなんじゃないのか!?
多分、アイツらまたドラゴンに化けて…」
「…いや、それならあれほど騒がんだろう。
ダアトは訓練所に居るうえ、バルガは宿でイビキをかいて寝ている。
そもそも彼らのドラゴンの形態は既に村の人々に認知されてるはずだ」
「…僕、ちょっと行ってきます!」
「あっ!? イザーク!」
村中が騒然とするなか、イザークは武器も持たずに入り口の方へ駆け出して行った。
ア、アイツ…こういうところでは勇気あるな。
残されたルカと俺は顔を見合わせる。
「ひとまず私たちも入り口へ行こう。
…〝責任〟は、取らないとな」
「やっぱ俺のせいなの!? ねえ!」
☆☆☆
「おい!? ドラゴンの種族は!?」
「まだ分からん! 誰か戦士長を!」
「クソ…、なぜ昨日から立て続けに…!」
入り口へ行くと、比較的ケガが軽度な村の戦士たちが集結していた。
全員の首は上を向いており、太陽を背に近づいてくるドラゴンの陽炎を睨みつけている。
「…ったく、どうして俺の周りに竜ばっかり…」
「ボヤくのは後だ。
村に被害が出ないよう、まずは私たちがヤツを引き付けて……んん?」
隣で合体する準備をしていたルカが何かに気が付いた。
「ルカ…どうした?」
「あのエネルギー構成は…。
零人、シルエット的にも見覚えがないか?」
「え」
まさか俺の知ってるやつ?
眩く輝く太陽の光を目に浴びせながら、改めてドラゴンの姿を見てみる。
翼・胴・四肢・頭×2・尻尾…うん、別にどこにでもいる普通の…ん? 頭が二つ?
「竜種を確認した! 『双頭竜』だ!
ド、ドノヴァンの護り竜がなぜ…!?」
「急いで各班に伝えろ! 戦闘の用意だ!」
…………。ア、アイツだったのかぁ。
「おいアンタら待ってくれ!
多分あのドラゴンは村を襲いに来たんじゃない」
「お、お客人?」
「何を言い出すんだ! アンバインだぞ!?」
何の用で来たのかは知らんが、これ以上大ごとになっても困る。
奴さんには丁重にお帰り願おう。
「ちょっと待っててくれ。
俺とルカでアイツと話してくる」
「『は、話す』だって!?
だ、だが…、あの竜は暴れると手が付けられな…」
ボン!
「「「おおっ!?」」」
時間も惜しいので、ルカと合体を行なった。
形態は空を飛べる『融解』だ。
「大丈夫。あのドラゴンは〝イイ奴〟だ。
アンタらもそうカッカしないで、野郎に笑いかけてやってくれや。
こんな感じでさ」
「「「…ッ!?」」」
ニマっとスマイルを作って、村の戦士たちに送ってやると、全員なぜか息を飲んでしまった。
……あれ、なんかデジャヴ?
さっき顔を赤くしていた誰かさんみたい。
「あ、あの…レイト!」
「お、誰かさんか。なんだ?」
「何もかも任せきりになってゴメンなさい。
でも、魔物と心を通わせられるのはあなただけ…。
申し訳ないですが、よろしくお願いします!」
「ああ。イザークはミアの傍にでも居てやりな。
どれ…ちょっくら行ってくるぜ!」
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