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第271話:魔槍ゲイボルグ
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☆テオ・マスカットsides☆
「あ…う…ガフッ…」
俺の大切なクルゥに手をかけようとした『小鬼』の喉元が切り裂かれ、鮮血が吹き出す様を、場に居る一同が刮目する。
「ピュイイッ!」
「ああっ!! やっと助けが来たあああ!
もうちょっとで俺ちゃん殺されるとこだったぜ!」
ボロボロになったブレイズと鴉獣が歓喜の声をあげる。
…ふう、間一髪だが間に合った!
他のクルゥ達も敵に怯えてはいるが、どうやら命に別状なく無事のようだ。
改めてブレイズ達を痛ぶってくれた連中を見渡すと、『兎魔獣』、『棘鼠獣』、『黒極犬』など、敏捷力のある魔物どもで部隊が構成されていた。
そして、楠色の毛並みを際立たせたこの〝狼〟がカンバクが言ってやがった…
「犬人かと思えば『人狼』でしたか…。
うふふ、これは大変失礼をいたしましたね。
私は『パウロ・マッシブ』。
この通りただのしがない『狼獣』でございます。
〝狼〟を祖に持つ者同士、どうぞよしな…」
「死ねや! 『瞬速霞刃』!」
「おっと!」
ガギァンッ!!
「グッ!? 速え…!」
気取った口調でペラペラと語る魔族を無視し、問答無用で斬りかかるが、装備していた細剣であっけなく攻撃を弾かれてしまう。
俺のナイフをそんな針みてえな剣で…!?
魔物寄りの俺より、人型寄りのコイツの方が身体が軽い分、スピードを上回ってやがるのか!?
「テオマスカット!
だから最初にソイツを狙えと言ったんだ!
仕留め損なったツケは重くのしかかるぞ!」
「うるせぇっ! ブレイズが危なかったんだよ!」
「…!? 貴様は…!」
「カンバク・アイヴォリー!? 見つけた!!」
「待て、見張りのアイツらは何やってんだ!?」
俺が飛び出した茂みから、二番手のカンバクが片手剣を握りしめて戦場舞台へ登壇する。
そしてすぐさまパウロに向かい、『滑走』を駆使して地を蹴り出す。
「裏切り者が! くたばれぇっ!!」
「失せろ! 『土礫斬撃《ターマック・スラッシュ》』!」
「グアアッ!?」
土の魔力を纏わせた剣を一閃し、襲い来る魔物の一体を斬り捨てて、パウロの元へ真っ直ぐに飛び込んでいく。
「パウロォォ! 『土礫刺突』!」
「おやおや…。
お久しぶりですねぇ、カンバクさん!」
ガギンッ!
なんだと!?
カンバクの繰り出した一撃をも、パウロは平然と捌きやがった!
「フン…、デズモンドと同じく貴様もまだ生きていたとはな。
とっくに不敬罪や命令違反で首を落とされたと思っていたぞ」
「うふふ。
あんな野蛮な蛇男と一緒の括りにされては困りますよ。
それに不敬などと、〝裏切り者〟の貴方に言われたくはありませんがねぇ」
得物を構え合い、舌戦を繰り広げる二人。
先ほどの俺と同じように攻撃を弾かれたカンバクは間合いをとると、俺の近くへにじり寄り…自然と背中を預け合う。
すると、ブレイズと一緒に倒れていた鴉獣がダダダ!と、ものすごい勢いで走り寄ってきた。
「うおおおおカンバクー!!!
アイツら俺ちゃんとクルゥ達をボコボコにしてきやがったんだよ!!
あのクソ野郎どもに『伝説』に対する礼儀ってやつを教えてやろうぜ!」
パァァァ…!
鴉獣の身体から光が…!?
カーティスとセリーヌの人化魔法と似ている…?
…って、そうか!
『変身』の魔法か!
どうやらまた姿を変えるつもりのようだ。
「ああ、分かっている。
お前のチカラがあればこの程度の部隊などすぐに制圧できる。
よし、やるぞ!!」
「おうよ! 『変身』!」
光が一帯を包み込むほどの輝きを放った刹那、鴉獣の姿は無くなり、代わりにカンバクの手には一本の〝槍〟が握られていた。
おどろおどろしい、邪悪な気配を感じさせる歪な形をした槍…。
なんだ、あの武器は!?
「…! それは…まさか『魔槍ゲイボルグ』!?
かの武器は古の時代に壊されたと文献にあったはずですが…?」
「『鴉獣』は伝説の魔物だ。
彼の頭の中にこの武器が記憶として残っているだけのこと!」
片手剣を腰の鞘に収めたカンバクは、〝魔槍〟と呼ばれた得物を構えパウロに肉薄する。
やはり、あの黒ニワトリが変身したのか!
「穿つ!『乱鰐連突』!」
「うふふ、面白い!
よもや新たな『伝説』を宿していたとはね!
受けて立ちましょう、『乱豹反撃』!」
ガガガガガガガッ!!!
槍と細剣、相容れぬ二つの武器が激しくぶつかり合い火花を散らす。
あの狼、『乱豹』の型を習得してやがるのか…。
俺の『乱馬』の型に比べ、あれはカウンター技が多い。
カンバクの『乱鰐』もそうだが、どうやら魔族の国では格闘術の履修を義務付けられているらしいな。
俺は狂おしく舞い踊るそんな二人の魔族の姿に、いつの間にか釘付けになってしまっていた。
…そしてその隙を、他の魔物どもは見逃さなかった。
「オイ、どこ見てんだクソガキがあっ!!!」
「…!? しまっ…」
後ろから忍び寄った小鬼が棍棒を振り下ろしてきた!
ダメだ! 間に合わ…
「ピュイイイイッ!!!」
ドガッ!!!
「ぐわあっ!?」
「あっ! ドリアス!?」
愚かにも戦闘中によそ見をした俺を救ってくれたのはブレイズだった!
敵に体当たりをぶちかまし、血に染まった全身を躍動させて魔物どもに威嚇を行なう。
な、何をやってんだ俺は!!?
助けに来た奴が助けられてどうすんだ!
「このクソ鳥が! 死ねえええ!」
「ピュルルッ!!」
「…!? 待て! さ、下がれ!
このクルゥ…何か変だ!」
ブレイズはさらに襲ってきた魔物どもを、自慢の手羽を広げて牽制しながら、俺の横へ跳んできた。
まさか…お前も一緒に闘うってのか!?
「ブ、ブレイズ…?」
「ピュイッ!」
戸惑いつつ名前を呼ぶと、彼は片脚で地面を抉り、魔物に抵抗する意思を示す。
レイトではないが、魔物であるブレイズが伝えようとした〝言葉〟の意味が分かった。
きっとコイツは…こう言ったんだ。
「ああ、そうだな『ブチのめしてやろう』ぜ!
俺の隣は任せたぞ! ブレイズ!」
「ピュイイイイ!!!」
「あ…う…ガフッ…」
俺の大切なクルゥに手をかけようとした『小鬼』の喉元が切り裂かれ、鮮血が吹き出す様を、場に居る一同が刮目する。
「ピュイイッ!」
「ああっ!! やっと助けが来たあああ!
もうちょっとで俺ちゃん殺されるとこだったぜ!」
ボロボロになったブレイズと鴉獣が歓喜の声をあげる。
…ふう、間一髪だが間に合った!
他のクルゥ達も敵に怯えてはいるが、どうやら命に別状なく無事のようだ。
改めてブレイズ達を痛ぶってくれた連中を見渡すと、『兎魔獣』、『棘鼠獣』、『黒極犬』など、敏捷力のある魔物どもで部隊が構成されていた。
そして、楠色の毛並みを際立たせたこの〝狼〟がカンバクが言ってやがった…
「犬人かと思えば『人狼』でしたか…。
うふふ、これは大変失礼をいたしましたね。
私は『パウロ・マッシブ』。
この通りただのしがない『狼獣』でございます。
〝狼〟を祖に持つ者同士、どうぞよしな…」
「死ねや! 『瞬速霞刃』!」
「おっと!」
ガギァンッ!!
「グッ!? 速え…!」
気取った口調でペラペラと語る魔族を無視し、問答無用で斬りかかるが、装備していた細剣であっけなく攻撃を弾かれてしまう。
俺のナイフをそんな針みてえな剣で…!?
魔物寄りの俺より、人型寄りのコイツの方が身体が軽い分、スピードを上回ってやがるのか!?
「テオマスカット!
だから最初にソイツを狙えと言ったんだ!
仕留め損なったツケは重くのしかかるぞ!」
「うるせぇっ! ブレイズが危なかったんだよ!」
「…!? 貴様は…!」
「カンバク・アイヴォリー!? 見つけた!!」
「待て、見張りのアイツらは何やってんだ!?」
俺が飛び出した茂みから、二番手のカンバクが片手剣を握りしめて戦場舞台へ登壇する。
そしてすぐさまパウロに向かい、『滑走』を駆使して地を蹴り出す。
「裏切り者が! くたばれぇっ!!」
「失せろ! 『土礫斬撃《ターマック・スラッシュ》』!」
「グアアッ!?」
土の魔力を纏わせた剣を一閃し、襲い来る魔物の一体を斬り捨てて、パウロの元へ真っ直ぐに飛び込んでいく。
「パウロォォ! 『土礫刺突』!」
「おやおや…。
お久しぶりですねぇ、カンバクさん!」
ガギンッ!
なんだと!?
カンバクの繰り出した一撃をも、パウロは平然と捌きやがった!
「フン…、デズモンドと同じく貴様もまだ生きていたとはな。
とっくに不敬罪や命令違反で首を落とされたと思っていたぞ」
「うふふ。
あんな野蛮な蛇男と一緒の括りにされては困りますよ。
それに不敬などと、〝裏切り者〟の貴方に言われたくはありませんがねぇ」
得物を構え合い、舌戦を繰り広げる二人。
先ほどの俺と同じように攻撃を弾かれたカンバクは間合いをとると、俺の近くへにじり寄り…自然と背中を預け合う。
すると、ブレイズと一緒に倒れていた鴉獣がダダダ!と、ものすごい勢いで走り寄ってきた。
「うおおおおカンバクー!!!
アイツら俺ちゃんとクルゥ達をボコボコにしてきやがったんだよ!!
あのクソ野郎どもに『伝説』に対する礼儀ってやつを教えてやろうぜ!」
パァァァ…!
鴉獣の身体から光が…!?
カーティスとセリーヌの人化魔法と似ている…?
…って、そうか!
『変身』の魔法か!
どうやらまた姿を変えるつもりのようだ。
「ああ、分かっている。
お前のチカラがあればこの程度の部隊などすぐに制圧できる。
よし、やるぞ!!」
「おうよ! 『変身』!」
光が一帯を包み込むほどの輝きを放った刹那、鴉獣の姿は無くなり、代わりにカンバクの手には一本の〝槍〟が握られていた。
おどろおどろしい、邪悪な気配を感じさせる歪な形をした槍…。
なんだ、あの武器は!?
「…! それは…まさか『魔槍ゲイボルグ』!?
かの武器は古の時代に壊されたと文献にあったはずですが…?」
「『鴉獣』は伝説の魔物だ。
彼の頭の中にこの武器が記憶として残っているだけのこと!」
片手剣を腰の鞘に収めたカンバクは、〝魔槍〟と呼ばれた得物を構えパウロに肉薄する。
やはり、あの黒ニワトリが変身したのか!
「穿つ!『乱鰐連突』!」
「うふふ、面白い!
よもや新たな『伝説』を宿していたとはね!
受けて立ちましょう、『乱豹反撃』!」
ガガガガガガガッ!!!
槍と細剣、相容れぬ二つの武器が激しくぶつかり合い火花を散らす。
あの狼、『乱豹』の型を習得してやがるのか…。
俺の『乱馬』の型に比べ、あれはカウンター技が多い。
カンバクの『乱鰐』もそうだが、どうやら魔族の国では格闘術の履修を義務付けられているらしいな。
俺は狂おしく舞い踊るそんな二人の魔族の姿に、いつの間にか釘付けになってしまっていた。
…そしてその隙を、他の魔物どもは見逃さなかった。
「オイ、どこ見てんだクソガキがあっ!!!」
「…!? しまっ…」
後ろから忍び寄った小鬼が棍棒を振り下ろしてきた!
ダメだ! 間に合わ…
「ピュイイイイッ!!!」
ドガッ!!!
「ぐわあっ!?」
「あっ! ドリアス!?」
愚かにも戦闘中によそ見をした俺を救ってくれたのはブレイズだった!
敵に体当たりをぶちかまし、血に染まった全身を躍動させて魔物どもに威嚇を行なう。
な、何をやってんだ俺は!!?
助けに来た奴が助けられてどうすんだ!
「このクソ鳥が! 死ねえええ!」
「ピュルルッ!!」
「…!? 待て! さ、下がれ!
このクルゥ…何か変だ!」
ブレイズはさらに襲ってきた魔物どもを、自慢の手羽を広げて牽制しながら、俺の横へ跳んできた。
まさか…お前も一緒に闘うってのか!?
「ブ、ブレイズ…?」
「ピュイッ!」
戸惑いつつ名前を呼ぶと、彼は片脚で地面を抉り、魔物に抵抗する意思を示す。
レイトではないが、魔物であるブレイズが伝えようとした〝言葉〟の意味が分かった。
きっとコイツは…こう言ったんだ。
「ああ、そうだな『ブチのめしてやろう』ぜ!
俺の隣は任せたぞ! ブレイズ!」
「ピュイイイイ!!!」
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