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第258話:ナディアの出迎え
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「まったくもう!
二人ともヒヤヒヤさせてくれちゃって!」
「そうニャ!
レイト君もエリーちゃんも、少しはオトナらしい行動をしてほしいニャ!」
「あー分かったって、メンゴメンゴ」
「申し訳ございません」
ドノヴァン防衛作戦の会議が無事に終了した。
現在は元の衣服をザベっさん家から回収したその帰りだ(『族員』のおじ様方からめちゃくちゃ怒られた)。
詳しい布陣については宿に帰ってからみんなに報告するとして、今はもっぱらフレイとセリーヌからお叱りを受けている。
俺が言うのもおかしいけど、ザベっさんの〝ガキ大将〟に関してはホントぶったまげたなぁ。
こんな整った人形みたいな顔つきの女があんな男勝りな性格に…
「(ジー)」
「…レイト様。
あまり見られると、さすがの私も恥ずかしゅうございます。
どうかご自重なさりますようお願い申し上げます」
「あ、ゴメン…」
…ちなみに現在のザベっさんの顔は茹で上がっているかのように、めちゃくちゃ赤い。
会議の時はそんなでもなかったけど、公民館を出てからはロクに俺と目を合わせなくなってしまった。
いつもは目力で殺してやるってぐらいに俺を見てくるから珍しい。
…たぶん、さっきのザベっさんが『素』の性格をご披露してしまったため、顔を見られるのが恥ずかしいのかもしれないな。
たしかに普段とのギャップがえげつなかった。
「でも、さっきのエリーちゃんはシビレまくったニャ!
『ドノヴァンの戦士としては誇りに…!』」
「そうね! あとこうも言ってたわね!
『里帰りした妹にもう一度カッコいいところ見せてよ! にぃに!』」
「……………」
「「痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!」」
ガキ大将エリザベスのモノマネを始めたフレイ達が、エルフを象徴する尖り耳を引っ張られて粛清されている。
ほーら、からかうからこうなるんだ。
「アハハッ、ざまーねぇなお前ら」
「…レイト様」
「あん?」
二人の耳を引っ張り上げたまま俺の名前を呼んできた。
…ちぎれないのだろうか?
「…やはり、先ほどの私は『変』でしたか?」
赤い目線をチラチラ動かしながら、憂いの帯びた口調で質問を行う。
ハッ、そんな不安そうな顔すんなよ。
「まあ驚きはしたけど、それ以上に俺が思うより家族の仲が良いみたいで安心したぜ?
マキオンさん以外には心開いてないのかなーって思っていたから」
「…お戯れを。
私はドノヴァンのために喝を入れただけです。
愚兄がレイト様を襲った件についてはまだ許していません」
あーそういや、フレイから聞いたな。
実家の部屋で落ち込んでいるエドウィンをブチ殺そうとしたって。
さっきの会議で彼から一応謝罪の言葉をもらったし、別にそこまで怒らんでもいいのに。
「ちょっと過保護なだけで、ちゃんと村のことを考えてくれる良い兄貴じゃないか。
それと、ありがとうな。
俺のせいで塞ぎ込んだエドウィンを元気付けてくれて。
気合いを入れさせたザベっさんはお手柄だな」
「ッ…!?」
右手をザベっさんの頭に乗せてナデナデしてやると、ビックリしたのか目を見開いた。
あ、あれ…いきなり触ったのまずかったかな。
「……貴方様はやはりずるい殿方です」
「えっ? なんで?」
「私はあの性格の善し悪しを聞いたつもりですが、貴方様は…」
「ねえちょっと!?
いつまでもイチャついてないでいい加減私の耳離しなさいよ!!」
「ニャー!! 取れちゃうニャー!!」
☆☆☆
宿へ戻った俺たちは、厩舎に行きクルゥに化けている鴉獣に事の顛末を報告、『変身』を解いてもらった。
フレイは惜しんでいたが、やはり元の身体の方がしっくりくる。
魔物であるセリーヌも同様だった。
そして、すっかり俺たちの憩いの場と化してしまったミアの食事処に赴こうと、宿に入った時だった。
見覚えのある赤い髪をした女性が、ロビーのベンチに腰掛けて俺たちを待っていた。
「ただいまーっと…。あっ!」
「おはよう、マミヤ殿。
今朝はずいぶんと世話を掛けてしまったな」
「ナディアちゃん!」
「あら? アンタその格好は…」
苦笑いで話しかけてきたその女性は『炎獣』を身体に宿し勇猛果敢に闘う騎士、ナディアさんだ。
瞳が元の『降臨』前の、緑がかった輝きへと戻っている。
良かった…すっかり元気みたいだ。
「いえいえ…俺もやらかした側ですから。
それよりその服は?」
しかし、変わったのは目の色だけではなかった。
着用している服がいつもの黄金鎧じゃなく、ドノヴァンの村人が着ているものと同じ装束だった。
つうかさっき俺らも着ていた服装だ。
「ああ、これか。
情けないことに私の鎧は敵の攻撃で穴だらけになってしまったからな。
ミュアヘッド殿が代わりの着替えを用意してくれたんだ。
…おかげで貴公だけではなく、彼女にも一つ借りができてしまったよ」
気まずそうに笑いながら頬をかくナディアさん。
彼女が着ている服は、ザベっさんが着ている装束とは別系統のデザインだ。
可愛らしいチュニックではなく、主に男性が着用するようなオーソドックスなパンツに陣羽織を組み合わせた、機能的なスタイル。
燃えるような赤髪と合わさって、遠くから見てもなかなか迫力がある。
「そっか…。よく似合ってますよナディアさん」
「はい。村出身の私よりもよっぽど。
彼女を『変身』させるべきでした」
スタイリッシュな姿に変わったナディアさんを俺とザベっさんが褒めると、彼女はキョトンと首を傾げた。
「『変身』?
そういえば貴公らはどこへ出掛けていたのだ?
帰りが遅いと、ルカ殿も心配していたが…」
「それは今から説明しますよ。
とりあえず食事処に行きましょう」
二人ともヒヤヒヤさせてくれちゃって!」
「そうニャ!
レイト君もエリーちゃんも、少しはオトナらしい行動をしてほしいニャ!」
「あー分かったって、メンゴメンゴ」
「申し訳ございません」
ドノヴァン防衛作戦の会議が無事に終了した。
現在は元の衣服をザベっさん家から回収したその帰りだ(『族員』のおじ様方からめちゃくちゃ怒られた)。
詳しい布陣については宿に帰ってからみんなに報告するとして、今はもっぱらフレイとセリーヌからお叱りを受けている。
俺が言うのもおかしいけど、ザベっさんの〝ガキ大将〟に関してはホントぶったまげたなぁ。
こんな整った人形みたいな顔つきの女があんな男勝りな性格に…
「(ジー)」
「…レイト様。
あまり見られると、さすがの私も恥ずかしゅうございます。
どうかご自重なさりますようお願い申し上げます」
「あ、ゴメン…」
…ちなみに現在のザベっさんの顔は茹で上がっているかのように、めちゃくちゃ赤い。
会議の時はそんなでもなかったけど、公民館を出てからはロクに俺と目を合わせなくなってしまった。
いつもは目力で殺してやるってぐらいに俺を見てくるから珍しい。
…たぶん、さっきのザベっさんが『素』の性格をご披露してしまったため、顔を見られるのが恥ずかしいのかもしれないな。
たしかに普段とのギャップがえげつなかった。
「でも、さっきのエリーちゃんはシビレまくったニャ!
『ドノヴァンの戦士としては誇りに…!』」
「そうね! あとこうも言ってたわね!
『里帰りした妹にもう一度カッコいいところ見せてよ! にぃに!』」
「……………」
「「痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!」」
ガキ大将エリザベスのモノマネを始めたフレイ達が、エルフを象徴する尖り耳を引っ張られて粛清されている。
ほーら、からかうからこうなるんだ。
「アハハッ、ざまーねぇなお前ら」
「…レイト様」
「あん?」
二人の耳を引っ張り上げたまま俺の名前を呼んできた。
…ちぎれないのだろうか?
「…やはり、先ほどの私は『変』でしたか?」
赤い目線をチラチラ動かしながら、憂いの帯びた口調で質問を行う。
ハッ、そんな不安そうな顔すんなよ。
「まあ驚きはしたけど、それ以上に俺が思うより家族の仲が良いみたいで安心したぜ?
マキオンさん以外には心開いてないのかなーって思っていたから」
「…お戯れを。
私はドノヴァンのために喝を入れただけです。
愚兄がレイト様を襲った件についてはまだ許していません」
あーそういや、フレイから聞いたな。
実家の部屋で落ち込んでいるエドウィンをブチ殺そうとしたって。
さっきの会議で彼から一応謝罪の言葉をもらったし、別にそこまで怒らんでもいいのに。
「ちょっと過保護なだけで、ちゃんと村のことを考えてくれる良い兄貴じゃないか。
それと、ありがとうな。
俺のせいで塞ぎ込んだエドウィンを元気付けてくれて。
気合いを入れさせたザベっさんはお手柄だな」
「ッ…!?」
右手をザベっさんの頭に乗せてナデナデしてやると、ビックリしたのか目を見開いた。
あ、あれ…いきなり触ったのまずかったかな。
「……貴方様はやはりずるい殿方です」
「えっ? なんで?」
「私はあの性格の善し悪しを聞いたつもりですが、貴方様は…」
「ねえちょっと!?
いつまでもイチャついてないでいい加減私の耳離しなさいよ!!」
「ニャー!! 取れちゃうニャー!!」
☆☆☆
宿へ戻った俺たちは、厩舎に行きクルゥに化けている鴉獣に事の顛末を報告、『変身』を解いてもらった。
フレイは惜しんでいたが、やはり元の身体の方がしっくりくる。
魔物であるセリーヌも同様だった。
そして、すっかり俺たちの憩いの場と化してしまったミアの食事処に赴こうと、宿に入った時だった。
見覚えのある赤い髪をした女性が、ロビーのベンチに腰掛けて俺たちを待っていた。
「ただいまーっと…。あっ!」
「おはよう、マミヤ殿。
今朝はずいぶんと世話を掛けてしまったな」
「ナディアちゃん!」
「あら? アンタその格好は…」
苦笑いで話しかけてきたその女性は『炎獣』を身体に宿し勇猛果敢に闘う騎士、ナディアさんだ。
瞳が元の『降臨』前の、緑がかった輝きへと戻っている。
良かった…すっかり元気みたいだ。
「いえいえ…俺もやらかした側ですから。
それよりその服は?」
しかし、変わったのは目の色だけではなかった。
着用している服がいつもの黄金鎧じゃなく、ドノヴァンの村人が着ているものと同じ装束だった。
つうかさっき俺らも着ていた服装だ。
「ああ、これか。
情けないことに私の鎧は敵の攻撃で穴だらけになってしまったからな。
ミュアヘッド殿が代わりの着替えを用意してくれたんだ。
…おかげで貴公だけではなく、彼女にも一つ借りができてしまったよ」
気まずそうに笑いながら頬をかくナディアさん。
彼女が着ている服は、ザベっさんが着ている装束とは別系統のデザインだ。
可愛らしいチュニックではなく、主に男性が着用するようなオーソドックスなパンツに陣羽織を組み合わせた、機能的なスタイル。
燃えるような赤髪と合わさって、遠くから見てもなかなか迫力がある。
「そっか…。よく似合ってますよナディアさん」
「はい。村出身の私よりもよっぽど。
彼女を『変身』させるべきでした」
スタイリッシュな姿に変わったナディアさんを俺とザベっさんが褒めると、彼女はキョトンと首を傾げた。
「『変身』?
そういえば貴公らはどこへ出掛けていたのだ?
帰りが遅いと、ルカ殿も心配していたが…」
「それは今から説明しますよ。
とりあえず食事処に行きましょう」
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