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第223話:鴉獣《レイヴン》
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「ガホッ…! な、なぜ俺ちゃんの位置が…!?」
「フン、簡単なことじゃ。
魔力の奔流の行き先を辿ったまで。
しかし、本当にキサマ『伝説』なのか?
『変身』は見事じゃったが、魔力の扱いがまるでなっとらん。
下手なのかそれとも阿呆なのか…」
私と正反対の位置でため息をつく白竜。
『伝説』…そうか! この魔物は!
「リストで見たぞ…貴様『鴉獣』だな?」
「…あ、ああ? だ、だったらなんだってんだ!」
黒い羽毛と四肢、鴉の頭を持った獣型の魔物。
背中からは漆黒の翼が展開し、さながら黒い鷲獅子と言ったところか。
こちらの方がサイズは幾分小型だが。
よく見れば、全身が半透明…この幽霊のような姿にも憶えがある。
以前、ウォルトが炎獣を出現させてしまったあの魔物と酷似しているな。
だがコイツは炎獣とは違い、直接人語を操れる『伝説』のようだ。
「フハハ! それにしてもよう気付きおったな!
さすが儂の『逆鱗』を一瞬で見つけただけのことはあるわい!」
「………………」
『鴉獣』は良いとして、新たな問題は後ろにいる白竜だ。
なぜ奴がこんな所へいる?
「オエエ…ッ! お、お前ら!
は、話すことがあんなら、まず俺ちゃんから拳を引き抜いておくれよ!
というかなんでよりによって二人とも俺ちゃんのいっちゃん弱えお腹にパンチかますんだ!?」
「おっと。 忘れておったわい」
「フン……」
鴉獣がギャアギャアと吠えるため、しぶしぶ拳を戻す。
本当ならこのままとどめを刺したいところだが、私の腕力だけでは不可能だ。
しかし、白竜は充分殺害が可能なはず…。
なぜ奴まで拳を収めた?
「なぜここに?
零人とウォルトとは会わなかったのか?
共に『黒の騎士』と邂逅していると思っていたが」
「うむ、儂の用事はもう済んだのでな。
ここへ来たのは他ならぬ小僧の願いじゃ」
「零人の?」
ということは、零人たちと合流はしていた?
…まさか二人を置いてきたのか!?
すると白竜はニヤリと笑みを浮かべ、両の指を自身の長い脚へ添わせた。
「ああ、そうじゃ。 ふふん、見物じゃったぞ~?
『足でもなんでも舐めますからバリアを消してください』なんてせがみおってのう。
あそこまで必死に頼まれては、さすがのこの儂も一肌脱ぐしかあるまいて」
「なっ、なんだと!?
あの(竜嫌いの)零人が君の脚を舐めたのか!?」
「フフフ…さあ、どうじゃろなぁ?
本人に聞いてみれば良いのではないか?」
カラカラと笑うアクセサリーまみれの女。
れ、零人から身体を舐められ…?
な、なんて羨ま…じゃない、けしからんことを!!
「さて、これでようやく儂の任務は終わった。
今回はたっぷり残業してしまったからの~。
フハハ、給金が楽しみじゃわい」
「あ!? どこへ行く白竜!」
白竜は軽く背伸びをして、北の方角へ飛び立ち始めた!
まさかこのまま帰るつもりか!?
「もちろん、儂の『会社』じゃよ。
だが、いずれまた会おうぞ蒼の。
ついでに小僧にも『貸し』の件を添えてよろしく伝えておいてくれ」
「まっ、待て!」
フッ…
捕らえようと手を伸ばすも姿がかき消えた!
チッ、得意の『擬態』か。
丁寧にエネルギー反応まで隠すとは…。
「「……………」」
そしてこの場に残されたのは、私と鴉獣。
なんともいえない空気が張り詰める。
このまま私も零人のいる場へ向かってもいいが、この魔物を放置するのは危険だ。
「……処遇はさておき、まず所属を確認する。
貴様は『黒の騎士』の一味か?」
「…へ? クロノキシ??
もしかしてカンバクのこと言ってんのか?」
「『カンバク』…? それが奴の名か」
…山頂に到達する前、強大なエネルギー反応を感じた原因はおそらくコイツだ。
先のバリアへ『変身』をした影響だろう。
見た目は少々抜けているが、侮れん魔物だ。
とはいえ、私と白竜に脆弱部位を突かれたことが幸いしているのか、今のところ明確な戦意は感じられない。
「も、もしかしてお前『強者』なのか!?
そうだ…そもそもニンゲンが空飛ぶなんてありえねえし!
なんだよ! それなら俺ちゃん通行を〝許可〟したぜ!」
「なっ、いきなりなんだ!? 私に近寄るな!」
突然、鴉獣はハッと何かに気付いたように、私の所へ近寄ってきた!
『許可』だと? いったいどういう意味だ?
「いやー悪かったな!
弱そうだったからつい弾いちまった。
あり? ていうとさっきのフードの奴と、別の所から入ってきた浮遊蛇はお前のオトモダチ?」
「待て! 何もわからん、全て説明しろ!
いったい貴様はここでなにをしていたんだ!?」
☆間宮 零人sides☆
「ハッハーーーー!!!」
「おおおおおおッ!!!」
ガッ、ガンッ! ゴッ!!
展望内に響き渡る、両腕に展開した盾と拳による無骨な合唱祭。
「な、なんだあの仮面の力は?
この魔力はニンゲンのものじゃないぞ!」
「まさか、モネの仮面のみでヤツとあれほど渡り合えるとは…」
浮遊蛇デズモンドを挑発した結果、俺たちは先ほどのような魔法合戦ではなく、純粋な身体能力を駆使した殴り合いを開始していた。
『仮面強化』…舐めてたぜ。
まさかここまで変わるものとは。
最初、デズモンドの魔力を込めた右ストレートが襲いかかって来た瞬間、仮面の視界表示に攻撃予測軌道と推奨する回避方向の矢印が出現した。
反射的にそれに従った結果、なんと仮面の軌道通りにパンチが通り過ぎたのだ!
その直後、有効な攻撃手段の提示が日本語で示され、線の枠組みで描かれたコースに俺のカウンターを乗せてみると、これまた完璧にヒットした。
…まだ軽く闘ってみただけだが、どうやらこのシステムは戦闘を手助けする補助機能らしい。
そして俺が今纏っているこのクソエネルギー。
仮面遊戯によれば『哀しき竜』は炎や魔法類は使用せず、エネルギーを五肢に纏い獲物にわざと食いつかせ、そこを狙って捕食する生態だそう。
そのためかなり頑丈で、ルカと合体していない生身の身体でもほとんどダメージを感じない。
こんなのもうチートじゃね?
<いいねマミヤ様! その調子!
魔力の痛みにも慣れてきたみたいだね!>
「ああ! まあな!
それよりこのARみたいな文字とか照準とかチラチラ出てきてジャマだ!
設定でどかせらんねぇのか!?」
「おいおいまた独り言ですカァ!?
ブツブツ言いながらオレ様とタメ張りやがる!
お前ホントにおもしれぇ奴だナァ!
『乱虎連撃《マカン・アサルト》』!」
ズドドドドドドドッ!!!
デズモンドは嬉しそうに更なる怒涛のラッシュを叩き込む。
…どういうわけかアイツの攻撃のスピードもはっきり見えるんだよな。
まるで『同調』を使ってるような感覚だ。
[二撃目のち後方回し蹴り。
推奨:補助軌道に従い、下腹部へカウンター]
「フッ、フッ! オラァッ!!!」
「ガラ空きだぜデズモンドくん!」
ドゴッ!!!
「ゴボッ!?」
俺の盾がデズモンドの腹部にめり込み、反動で数歩よろめき下がる。
…こんな感じでかなりラクなのよ。
それにしてもこの仮面…どうやって数秒先の攻撃まで予測してるんだ?
「クックッ…、ギャハハハハハハ!
いいネェ! これならオレ様もマジでやれる!
楽しませてくれたお礼にとっておきを見せてやるよ!」
「とっておき…?」
食らった腹部をバシバシ叩き、本日何度目かの狂笑を披露するデズモンド。
とっておきって…さっきの『覚醒』じゃねぇのか?
デズモンドは口を大きく開け、牙を見せつけながら天を仰いだ。
「…まさか!? やめろデズモンド!」
デズモンドの様子に当てがあるのか、しれっと観戦に回っていたカンバクが突然叫んだ。
い、いったい何をするつもりだ…?
「今回は〝小さメ〟にシトいてヤるよ…!
ギャハ…ギャハハハハハハハハ!」
ポウッ!
紫の光が発光し、そのまま身体を包み込む。
まさかエネルギーの構成が変わった…?
なんだこの魔法は!?
「これは…! 前に見たことがあるぞ!?
くっ、マミヤ殿! 早く奴を仕留めるぞ!」
「あっ!? ナディアさん!?」
突如ナディアさんが大剣を構え、デズモンドへ突っ込んだ!
ちょ、いきなり言われてましても!?
急ぎ右手の盾を剣に換装して、彼女に続く。
「『炎斬撃』!」
「おりゃあああっ!!」
俺とナディアさんが斬りかかった時だった。
紫の光と化したデズモンドの横に文章が表示された。
[通知:敵個体の情報アップデート]
[該当項目:『種族名:悪魔蛇』]
「フン、簡単なことじゃ。
魔力の奔流の行き先を辿ったまで。
しかし、本当にキサマ『伝説』なのか?
『変身』は見事じゃったが、魔力の扱いがまるでなっとらん。
下手なのかそれとも阿呆なのか…」
私と正反対の位置でため息をつく白竜。
『伝説』…そうか! この魔物は!
「リストで見たぞ…貴様『鴉獣』だな?」
「…あ、ああ? だ、だったらなんだってんだ!」
黒い羽毛と四肢、鴉の頭を持った獣型の魔物。
背中からは漆黒の翼が展開し、さながら黒い鷲獅子と言ったところか。
こちらの方がサイズは幾分小型だが。
よく見れば、全身が半透明…この幽霊のような姿にも憶えがある。
以前、ウォルトが炎獣を出現させてしまったあの魔物と酷似しているな。
だがコイツは炎獣とは違い、直接人語を操れる『伝説』のようだ。
「フハハ! それにしてもよう気付きおったな!
さすが儂の『逆鱗』を一瞬で見つけただけのことはあるわい!」
「………………」
『鴉獣』は良いとして、新たな問題は後ろにいる白竜だ。
なぜ奴がこんな所へいる?
「オエエ…ッ! お、お前ら!
は、話すことがあんなら、まず俺ちゃんから拳を引き抜いておくれよ!
というかなんでよりによって二人とも俺ちゃんのいっちゃん弱えお腹にパンチかますんだ!?」
「おっと。 忘れておったわい」
「フン……」
鴉獣がギャアギャアと吠えるため、しぶしぶ拳を戻す。
本当ならこのままとどめを刺したいところだが、私の腕力だけでは不可能だ。
しかし、白竜は充分殺害が可能なはず…。
なぜ奴まで拳を収めた?
「なぜここに?
零人とウォルトとは会わなかったのか?
共に『黒の騎士』と邂逅していると思っていたが」
「うむ、儂の用事はもう済んだのでな。
ここへ来たのは他ならぬ小僧の願いじゃ」
「零人の?」
ということは、零人たちと合流はしていた?
…まさか二人を置いてきたのか!?
すると白竜はニヤリと笑みを浮かべ、両の指を自身の長い脚へ添わせた。
「ああ、そうじゃ。 ふふん、見物じゃったぞ~?
『足でもなんでも舐めますからバリアを消してください』なんてせがみおってのう。
あそこまで必死に頼まれては、さすがのこの儂も一肌脱ぐしかあるまいて」
「なっ、なんだと!?
あの(竜嫌いの)零人が君の脚を舐めたのか!?」
「フフフ…さあ、どうじゃろなぁ?
本人に聞いてみれば良いのではないか?」
カラカラと笑うアクセサリーまみれの女。
れ、零人から身体を舐められ…?
な、なんて羨ま…じゃない、けしからんことを!!
「さて、これでようやく儂の任務は終わった。
今回はたっぷり残業してしまったからの~。
フハハ、給金が楽しみじゃわい」
「あ!? どこへ行く白竜!」
白竜は軽く背伸びをして、北の方角へ飛び立ち始めた!
まさかこのまま帰るつもりか!?
「もちろん、儂の『会社』じゃよ。
だが、いずれまた会おうぞ蒼の。
ついでに小僧にも『貸し』の件を添えてよろしく伝えておいてくれ」
「まっ、待て!」
フッ…
捕らえようと手を伸ばすも姿がかき消えた!
チッ、得意の『擬態』か。
丁寧にエネルギー反応まで隠すとは…。
「「……………」」
そしてこの場に残されたのは、私と鴉獣。
なんともいえない空気が張り詰める。
このまま私も零人のいる場へ向かってもいいが、この魔物を放置するのは危険だ。
「……処遇はさておき、まず所属を確認する。
貴様は『黒の騎士』の一味か?」
「…へ? クロノキシ??
もしかしてカンバクのこと言ってんのか?」
「『カンバク』…? それが奴の名か」
…山頂に到達する前、強大なエネルギー反応を感じた原因はおそらくコイツだ。
先のバリアへ『変身』をした影響だろう。
見た目は少々抜けているが、侮れん魔物だ。
とはいえ、私と白竜に脆弱部位を突かれたことが幸いしているのか、今のところ明確な戦意は感じられない。
「も、もしかしてお前『強者』なのか!?
そうだ…そもそもニンゲンが空飛ぶなんてありえねえし!
なんだよ! それなら俺ちゃん通行を〝許可〟したぜ!」
「なっ、いきなりなんだ!? 私に近寄るな!」
突然、鴉獣はハッと何かに気付いたように、私の所へ近寄ってきた!
『許可』だと? いったいどういう意味だ?
「いやー悪かったな!
弱そうだったからつい弾いちまった。
あり? ていうとさっきのフードの奴と、別の所から入ってきた浮遊蛇はお前のオトモダチ?」
「待て! 何もわからん、全て説明しろ!
いったい貴様はここでなにをしていたんだ!?」
☆間宮 零人sides☆
「ハッハーーーー!!!」
「おおおおおおッ!!!」
ガッ、ガンッ! ゴッ!!
展望内に響き渡る、両腕に展開した盾と拳による無骨な合唱祭。
「な、なんだあの仮面の力は?
この魔力はニンゲンのものじゃないぞ!」
「まさか、モネの仮面のみでヤツとあれほど渡り合えるとは…」
浮遊蛇デズモンドを挑発した結果、俺たちは先ほどのような魔法合戦ではなく、純粋な身体能力を駆使した殴り合いを開始していた。
『仮面強化』…舐めてたぜ。
まさかここまで変わるものとは。
最初、デズモンドの魔力を込めた右ストレートが襲いかかって来た瞬間、仮面の視界表示に攻撃予測軌道と推奨する回避方向の矢印が出現した。
反射的にそれに従った結果、なんと仮面の軌道通りにパンチが通り過ぎたのだ!
その直後、有効な攻撃手段の提示が日本語で示され、線の枠組みで描かれたコースに俺のカウンターを乗せてみると、これまた完璧にヒットした。
…まだ軽く闘ってみただけだが、どうやらこのシステムは戦闘を手助けする補助機能らしい。
そして俺が今纏っているこのクソエネルギー。
仮面遊戯によれば『哀しき竜』は炎や魔法類は使用せず、エネルギーを五肢に纏い獲物にわざと食いつかせ、そこを狙って捕食する生態だそう。
そのためかなり頑丈で、ルカと合体していない生身の身体でもほとんどダメージを感じない。
こんなのもうチートじゃね?
<いいねマミヤ様! その調子!
魔力の痛みにも慣れてきたみたいだね!>
「ああ! まあな!
それよりこのARみたいな文字とか照準とかチラチラ出てきてジャマだ!
設定でどかせらんねぇのか!?」
「おいおいまた独り言ですカァ!?
ブツブツ言いながらオレ様とタメ張りやがる!
お前ホントにおもしれぇ奴だナァ!
『乱虎連撃《マカン・アサルト》』!」
ズドドドドドドドッ!!!
デズモンドは嬉しそうに更なる怒涛のラッシュを叩き込む。
…どういうわけかアイツの攻撃のスピードもはっきり見えるんだよな。
まるで『同調』を使ってるような感覚だ。
[二撃目のち後方回し蹴り。
推奨:補助軌道に従い、下腹部へカウンター]
「フッ、フッ! オラァッ!!!」
「ガラ空きだぜデズモンドくん!」
ドゴッ!!!
「ゴボッ!?」
俺の盾がデズモンドの腹部にめり込み、反動で数歩よろめき下がる。
…こんな感じでかなりラクなのよ。
それにしてもこの仮面…どうやって数秒先の攻撃まで予測してるんだ?
「クックッ…、ギャハハハハハハ!
いいネェ! これならオレ様もマジでやれる!
楽しませてくれたお礼にとっておきを見せてやるよ!」
「とっておき…?」
食らった腹部をバシバシ叩き、本日何度目かの狂笑を披露するデズモンド。
とっておきって…さっきの『覚醒』じゃねぇのか?
デズモンドは口を大きく開け、牙を見せつけながら天を仰いだ。
「…まさか!? やめろデズモンド!」
デズモンドの様子に当てがあるのか、しれっと観戦に回っていたカンバクが突然叫んだ。
い、いったい何をするつもりだ…?
「今回は〝小さメ〟にシトいてヤるよ…!
ギャハ…ギャハハハハハハハハ!」
ポウッ!
紫の光が発光し、そのまま身体を包み込む。
まさかエネルギーの構成が変わった…?
なんだこの魔法は!?
「これは…! 前に見たことがあるぞ!?
くっ、マミヤ殿! 早く奴を仕留めるぞ!」
「あっ!? ナディアさん!?」
突如ナディアさんが大剣を構え、デズモンドへ突っ込んだ!
ちょ、いきなり言われてましても!?
急ぎ右手の盾を剣に換装して、彼女に続く。
「『炎斬撃』!」
「おりゃあああっ!!」
俺とナディアさんが斬りかかった時だった。
紫の光と化したデズモンドの横に文章が表示された。
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