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第222話:変身《トランス》
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<マミヤ様!
HUDに敵の情報を表示するよ!
あと『仮面強化』についてなんだけど、それは実戦でレクチャーしてあげるね!>
「いででで…!
こ、こんな足つぼマッサージみてぇなエネルギー背負ったまま闘えるか!」
『仮面遊戯』の形が変わってから、俺は地面に膝を着き悶絶していた。
俺にとってエネルギーとは、自分の身体を保護する一種の〝服〟って認識だ。
考えてみてほしい。
今着てる下着にいきなりトゲが生えてきたら。
そんなん一歩も動けなくなるよね!?
「『土礫斬撃《ターマック・スラッシュ》』!」
「『炎斬撃』!」
「甘えんだよ、『暗黒幕』!」
「「ぐあああっ!!!」」
俺が痛みに悶えている間も、ナディアさんとカンバクは必死にデズモンドへ抵抗していた。
先ほど発動したナディアさんの『覚醒』は徐々に弱まってきており、カンバクと合わせても攻撃の手数が減少している!
は、早く助けないと…!
<大丈夫、すぐに慣れるよ!
今は身体がビックリしちゃって魔力と反発してるだけだから。
さあさあ! 早く立ってマミヤ様!>
「ぬぐぐ…! うおおおおっ!!」
ああもう! クソッタレ!
歯を食いしばり両脚に力を込める。
全身を包み込む激痛に耐えながら、少しづつ立ち上がり息を深く吸い込む。
ふう…ふうっ…! よ、よし。なんとか…!
<マミヤ様、えらいえらい!
それじゃあ浮遊蛇に攻撃しよう!
まずはいつもみたいに殴りかかってみて!>
「いちち…わ、分かったよ…!」
改めて今回の敵、『浮遊蛇』デズモンドをまっすぐ視界に捉える。
「ギャハハハハッ!
借り物のチカラしか扱えねぇテメェらが、このオレ様の『闇』に適うハズねぇだロォ!
はやく本気にさせてみろヤァ!」
「ぐうっ!? なんという、攻撃の重さ…!」
「がっ…! や、やはり、僕の力では…」
あの野郎…、ずいぶん好き放題に暴れて…!
すると、デズモンドの周りにパラメーターのような数字と文字が浮かび上がり詳しい情報が…ってあれ!?
[種族名:浮遊蛇]
[名称:デズモンド・ミラー]
[年齢:推定85歳]
[攻撃手段:魔素を利用した超常現象および徒手空拳]
[推奨手段:同等魔素の飽和攻撃]
これ書いてあるの日本語じゃん!
しかも数字までこっちの世界と同じだと!?
「おい、なんで日本語!?
この世界の言語じゃないんだ?」
<初めて仮面遊戯に登録した時、マミヤ様の利用言語が日本語だったからだよ!
それよりほらほら! 早く敵と闘って!>
…仕方ねぇ、詳しいことはあとで聞くしかない。
今は一刻も早くあの二人を助けないとな!
覚悟を決め、再び息を胸いっぱいに吸い込む。
「デズモンドぉぉぉ!!!!」
腹から声を出す気合いで名前を叫ぶと、ビタリと三人の動きが止まった。
「マ、マミヤどの…?」
「あいつ…? なにを…?」
デズモンドはゆっくりと首だけをこちらに向かせる。
俺の変化に気付いたのか、そのままこちらに向かって歩き出してきた。
「アァ…? …ほおう?
ウジ虫みてぇに丸まってたと思いきや、とんでもねぇ魔力を用意してきたじゃねぇカァ!」
「今度は俺が相手してやるよ。
チンタラ歩いてねぇでとっととかかってこい!」
「ギャハハッ! いいぜぇいいゼェ!!!
頼むからテメェはがっかりさせてくれんなよ…?
蒼の××、マミヤレイトさんヨォ!!!」
☆白き巨竜sides☆
蒼の小僧どもと別れた儂は、小僧の依頼を果たすべくある所へ向かっていた。
この黒き障壁を形成している元凶…言ってしまえば根元じゃな。
まったく…今回は久々の出張で疲れているというのに、あの小僧め…。
帰還後には今回の報告書をまとめなければならんのだぞ。
儂のような清廉で麗しいドラゴンをアゴで使ったこと、必ず後悔させてやるからの。
「…っと。ここじゃな。
あやうく通り過ぎてしまうところだったわい」
心の中で文句を垂れるうちに、目的の場へ到着する。
現在地は展望台から真反対の位置にある、裏山地帯の上空。
そこの障壁のある一部分を叩けば、きっとこやつの〝正体〟が露わになるじゃろう。
「どれ、いっちょう派手にいくと…む?」
魔力を込めた右手に力を入れた瞬間、障壁の外側に見覚えのある蒼きニンゲンが見えた。
そしてその者は、キョロキョロと宙を舞いながら儂の場所へと近寄ってくる。
ほう? さてはあやつ…気付いておったのか。
…フハハッ! そうじゃ!
いい事を思い付いたぞっ!
☆ルカsides☆
「あった…! やはり私の考えは当たっていた!」
ドノヴァン山、上空。
黒いバリアの脆弱性をついに発見し、私は独りで歓喜していた。
やはりそうだ! このバリアは〝生きて〟いる!
その考えに至れたのは、現在山の麓に向かっているシュバルツァーのおかげだ。
ガルド村にいる頃、私は魔法学について分からない事をシュバルツァーにたびたび尋ねていた。
この世界の魔法は大きく三つに分けられる。
日常生活を快適に過ごすための〝生活魔法〟。
魔物や賊から身を守るための〝戦闘魔法〟。
魔力《マナ》の扱いに長けた、限りある者だけが使用可能な〝究極魔法〟。
そして、いちばん質問の回数が多かったカテゴリーが最後の〝究極魔法〟だ。
以前、私はシュバルツァーとこのような会話を行なっていた。
「なあ、シュバルツァー。
もし君が究極魔法を嗜めるとしたら、何の魔法を使ってみたい?」
「んーそうねぇ…。
『召喚』とか『精霊』はちょっと使ってみたい気はするけど、いちばんはアレね!」
「なんだ?」
「究極魔法『変身』よ!
なんでもそれを使えば、強力な魔物とか武器に姿を変えられるらしいの。
えへへ…あんたとレイトが『同調』を使っているのを見てたら、なんだか憧れてきちゃった」
彼女は少し恥ずかしそうに、そんな事を私に教えてくれた。
そう、私は何者かが『変身』を行い、黒いバリアへと姿を変えていると仮定したのだ。
どんな形であれそれが生き物であるならば、必ずエネルギーの脆弱性がある。
「…だが、私だけで破壊できるか…?」
脆弱ポイントを発見できたはいいが、もうひとつ問題があった。
肝心な攻撃の手段…私は現在素手だった。
武器は零人が持っている。
果たして私の力が通用するだろうか?
…いや、私を送ってくれたマスカットとバーミリオンのためにも必ず破壊してやる!
たとえこの拳が砕けようとも!
右手を握りしめ、ゆっくり振りかぶった。
「待っていろ、零人…。
はあああああああっ!!!」
意を決して、拳を脆弱ポイントへ振り下ろす。
バキャンッ!!!
「なっ!?」
木の板を割るような確かな手応えと共に、私の拳はバリアをいとも簡単に貫通した!
バカな!? たった一撃で!?
見た目より軟弱だったということか…?
バキ…バキ…バキ…!
拳の突き刺さった箇所から四方八方へどんどん亀裂が広がっていき、崩壊のカウントダウンを刻み始める。
そして傷付いた亀裂から黒い粒子が浮かび上がり、ガラスが砕けるが如く一気に〝爆発〟した!
ガッシャアンッ!
「ギャアアアア!!?
なっ、何をするお前ら!!!」
「貴様は…!」
発生した黒い粒子は収束し、山頂を覆っていたバリアが消え失せた。
そして代わりに現れたのは、バリアを発生させた元凶である『魔物』。
なんだコイツの種族は…?
いや待て!? それより今なんと言った…?
『お前ら』?
「フハハハハハハ!! 〝じゃっくぽっと〟!!
攻撃の時機をピッタリ合わせられたわい!
良うやったぞ蒼の娘!」
「なっ、白竜!?」
聞き覚えのある、カンに障るような笑い声。
私の拳が突き刺さり狼狽する魔物の後ろには、同じように拳を打ち込んだ、ツノと翼を生やした白い女がいた…。
HUDに敵の情報を表示するよ!
あと『仮面強化』についてなんだけど、それは実戦でレクチャーしてあげるね!>
「いででで…!
こ、こんな足つぼマッサージみてぇなエネルギー背負ったまま闘えるか!」
『仮面遊戯』の形が変わってから、俺は地面に膝を着き悶絶していた。
俺にとってエネルギーとは、自分の身体を保護する一種の〝服〟って認識だ。
考えてみてほしい。
今着てる下着にいきなりトゲが生えてきたら。
そんなん一歩も動けなくなるよね!?
「『土礫斬撃《ターマック・スラッシュ》』!」
「『炎斬撃』!」
「甘えんだよ、『暗黒幕』!」
「「ぐあああっ!!!」」
俺が痛みに悶えている間も、ナディアさんとカンバクは必死にデズモンドへ抵抗していた。
先ほど発動したナディアさんの『覚醒』は徐々に弱まってきており、カンバクと合わせても攻撃の手数が減少している!
は、早く助けないと…!
<大丈夫、すぐに慣れるよ!
今は身体がビックリしちゃって魔力と反発してるだけだから。
さあさあ! 早く立ってマミヤ様!>
「ぬぐぐ…! うおおおおっ!!」
ああもう! クソッタレ!
歯を食いしばり両脚に力を込める。
全身を包み込む激痛に耐えながら、少しづつ立ち上がり息を深く吸い込む。
ふう…ふうっ…! よ、よし。なんとか…!
<マミヤ様、えらいえらい!
それじゃあ浮遊蛇に攻撃しよう!
まずはいつもみたいに殴りかかってみて!>
「いちち…わ、分かったよ…!」
改めて今回の敵、『浮遊蛇』デズモンドをまっすぐ視界に捉える。
「ギャハハハハッ!
借り物のチカラしか扱えねぇテメェらが、このオレ様の『闇』に適うハズねぇだロォ!
はやく本気にさせてみろヤァ!」
「ぐうっ!? なんという、攻撃の重さ…!」
「がっ…! や、やはり、僕の力では…」
あの野郎…、ずいぶん好き放題に暴れて…!
すると、デズモンドの周りにパラメーターのような数字と文字が浮かび上がり詳しい情報が…ってあれ!?
[種族名:浮遊蛇]
[名称:デズモンド・ミラー]
[年齢:推定85歳]
[攻撃手段:魔素を利用した超常現象および徒手空拳]
[推奨手段:同等魔素の飽和攻撃]
これ書いてあるの日本語じゃん!
しかも数字までこっちの世界と同じだと!?
「おい、なんで日本語!?
この世界の言語じゃないんだ?」
<初めて仮面遊戯に登録した時、マミヤ様の利用言語が日本語だったからだよ!
それよりほらほら! 早く敵と闘って!>
…仕方ねぇ、詳しいことはあとで聞くしかない。
今は一刻も早くあの二人を助けないとな!
覚悟を決め、再び息を胸いっぱいに吸い込む。
「デズモンドぉぉぉ!!!!」
腹から声を出す気合いで名前を叫ぶと、ビタリと三人の動きが止まった。
「マ、マミヤどの…?」
「あいつ…? なにを…?」
デズモンドはゆっくりと首だけをこちらに向かせる。
俺の変化に気付いたのか、そのままこちらに向かって歩き出してきた。
「アァ…? …ほおう?
ウジ虫みてぇに丸まってたと思いきや、とんでもねぇ魔力を用意してきたじゃねぇカァ!」
「今度は俺が相手してやるよ。
チンタラ歩いてねぇでとっととかかってこい!」
「ギャハハッ! いいぜぇいいゼェ!!!
頼むからテメェはがっかりさせてくれんなよ…?
蒼の××、マミヤレイトさんヨォ!!!」
☆白き巨竜sides☆
蒼の小僧どもと別れた儂は、小僧の依頼を果たすべくある所へ向かっていた。
この黒き障壁を形成している元凶…言ってしまえば根元じゃな。
まったく…今回は久々の出張で疲れているというのに、あの小僧め…。
帰還後には今回の報告書をまとめなければならんのだぞ。
儂のような清廉で麗しいドラゴンをアゴで使ったこと、必ず後悔させてやるからの。
「…っと。ここじゃな。
あやうく通り過ぎてしまうところだったわい」
心の中で文句を垂れるうちに、目的の場へ到着する。
現在地は展望台から真反対の位置にある、裏山地帯の上空。
そこの障壁のある一部分を叩けば、きっとこやつの〝正体〟が露わになるじゃろう。
「どれ、いっちょう派手にいくと…む?」
魔力を込めた右手に力を入れた瞬間、障壁の外側に見覚えのある蒼きニンゲンが見えた。
そしてその者は、キョロキョロと宙を舞いながら儂の場所へと近寄ってくる。
ほう? さてはあやつ…気付いておったのか。
…フハハッ! そうじゃ!
いい事を思い付いたぞっ!
☆ルカsides☆
「あった…! やはり私の考えは当たっていた!」
ドノヴァン山、上空。
黒いバリアの脆弱性をついに発見し、私は独りで歓喜していた。
やはりそうだ! このバリアは〝生きて〟いる!
その考えに至れたのは、現在山の麓に向かっているシュバルツァーのおかげだ。
ガルド村にいる頃、私は魔法学について分からない事をシュバルツァーにたびたび尋ねていた。
この世界の魔法は大きく三つに分けられる。
日常生活を快適に過ごすための〝生活魔法〟。
魔物や賊から身を守るための〝戦闘魔法〟。
魔力《マナ》の扱いに長けた、限りある者だけが使用可能な〝究極魔法〟。
そして、いちばん質問の回数が多かったカテゴリーが最後の〝究極魔法〟だ。
以前、私はシュバルツァーとこのような会話を行なっていた。
「なあ、シュバルツァー。
もし君が究極魔法を嗜めるとしたら、何の魔法を使ってみたい?」
「んーそうねぇ…。
『召喚』とか『精霊』はちょっと使ってみたい気はするけど、いちばんはアレね!」
「なんだ?」
「究極魔法『変身』よ!
なんでもそれを使えば、強力な魔物とか武器に姿を変えられるらしいの。
えへへ…あんたとレイトが『同調』を使っているのを見てたら、なんだか憧れてきちゃった」
彼女は少し恥ずかしそうに、そんな事を私に教えてくれた。
そう、私は何者かが『変身』を行い、黒いバリアへと姿を変えていると仮定したのだ。
どんな形であれそれが生き物であるならば、必ずエネルギーの脆弱性がある。
「…だが、私だけで破壊できるか…?」
脆弱ポイントを発見できたはいいが、もうひとつ問題があった。
肝心な攻撃の手段…私は現在素手だった。
武器は零人が持っている。
果たして私の力が通用するだろうか?
…いや、私を送ってくれたマスカットとバーミリオンのためにも必ず破壊してやる!
たとえこの拳が砕けようとも!
右手を握りしめ、ゆっくり振りかぶった。
「待っていろ、零人…。
はあああああああっ!!!」
意を決して、拳を脆弱ポイントへ振り下ろす。
バキャンッ!!!
「なっ!?」
木の板を割るような確かな手応えと共に、私の拳はバリアをいとも簡単に貫通した!
バカな!? たった一撃で!?
見た目より軟弱だったということか…?
バキ…バキ…バキ…!
拳の突き刺さった箇所から四方八方へどんどん亀裂が広がっていき、崩壊のカウントダウンを刻み始める。
そして傷付いた亀裂から黒い粒子が浮かび上がり、ガラスが砕けるが如く一気に〝爆発〟した!
ガッシャアンッ!
「ギャアアアア!!?
なっ、何をするお前ら!!!」
「貴様は…!」
発生した黒い粒子は収束し、山頂を覆っていたバリアが消え失せた。
そして代わりに現れたのは、バリアを発生させた元凶である『魔物』。
なんだコイツの種族は…?
いや待て!? それより今なんと言った…?
『お前ら』?
「フハハハハハハ!! 〝じゃっくぽっと〟!!
攻撃の時機をピッタリ合わせられたわい!
良うやったぞ蒼の娘!」
「なっ、白竜!?」
聞き覚えのある、カンに障るような笑い声。
私の拳が突き刺さり狼狽する魔物の後ろには、同じように拳を打ち込んだ、ツノと翼を生やした白い女がいた…。
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