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第183話:サバトの原因
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「おっさん、『紅と黒の騎士』はまだ見つかってないんだって?」
「ああそうだ。
しかし、確実にこの地域に居るはず。
魔物どもの活性化…〝宴〟が証拠だ」
「だが闇雲に探し回るのも非効率だな。
せめて奴らのエネルギーをこの目で確認できれば…」
「適当な魔物をとっ捕まえて居場所を吐かせるのはどうかしら?」
「シュバルツァー様の案ですと、レイト様もしくはルカ様のお力が必要ですね」
「おそらく不可能だ。
対象に我々と話し合う意思がなければ言葉を交わせない」
「…うーん。
そもそも魔物たちはいつから活性化し始めたんでしょうか?」
改めて、俺たちは会議を再開した。
これまでの旅の経緯、出会った敵などをおっさんに伝え、情報のすり合わせを行なう。
おっさんによると、ドノヴァンに到着したのはほんの一週間前で、その時から既に魔物たちは暴れ回っていたらしい。
「おおよそひと月ほど前からですわ。
オズベルクさんがいらっしゃるまでは、私たちも必死に応戦をしていたのですが、なにぶん数が多いことと、時たまに『はぐれ』ではない魔族も徘徊していまして…」
シルヴィアの問いにマキオンさんが答える。
ひと月前っていうと、だいたい俺らが王都ノルンに到着したあたりか。
えっ、もうそんな時間過ぎてたの!?
…って、それは別にいい。
この際だから質問しないと。
「ちょっと話変わるけどさ、皆が言っている〝宴〟って普通は何が原因で起こるの?」
「む…それは私も疑問だ」
異世界からやってきた俺とルカにはどうもピンとこない事象なんだよね。
もちろん地球にも縄張り争いする動物は居る。
しかし、異種族である魔物たちが集結して大規模な争いが起こるイベントなんぞ聞いたことがない。
すると、おっさんがすぐに回答してくれた。
「通常〝宴〟は、そこに住まう魔物たちの『戦闘意欲』が一定に達した時に引き起こる」
「ストレス?」
「飛竜や獅羊蛇など狩猟本能が強い魔物は、無意識のうちに戦闘意欲を促進させる特殊な魔力を撒き散らす。
少量ならば特に感化されることはないが、時おり風の流れや地形によって、濃い魔力が留まってしまうことがあるのだ。
それに触発された魔物は戦闘意欲を放出するため、普段闘わない種族をも巻き込みながら争いを起こす。
争いは加速しやがて〝宴〟となる……どうだ、理解できたかね?」
「「……(コクン)」」
俺とルカは同時に頷く。
要は強い魔物のフェロモンみたいなのがたまに残っちゃって、それのせいで縄張り争いがデカくなるってこったな。
そうなると…
「じゃあ今回の『戦闘意欲』を振りまいたのがその騎士たちってことか」
俺の推測におっさんは首を横に振った。
「いや…たしかに渦中にいるのは間違いないだろうが、奴らは人型の魔族だ。
双方とも鎧を身に付けていたため、詳しい種族までは分からないが、人型で戦闘意欲を撒く魔物は存在しない。
もっとも、我輩やセリーヌのように『人化』しているのならばその限りではないが…」
「ええ。人里でもないのに人化する魔物なんて聞いたことないわね。
多分あれは素の姿じゃないかしら?」
へえ、そうなのか。
狩猟本能が強い魔物ねぇ…。
大型の魔獣とかならそれに該当するのかな?
「仮に騎士どもが原因でもよ、こんな田舎で引き起こす理由が無くねェか?
もし、オレが魔族ならもっと人気のあるとこで〝宴〟かますぜ」
…って、リック!?
なに物騒なことほざいてやがるんだ!
同じことを思ったのか、テオも眉をひそめた。
「リック…この場にエリザベスとマキオン婦人が居るのだから、言動には気をつけろ」
「うふふ、構いませんわよ。
どちらもリックさんの言うことは正しいですわ」
「はい。いずれにしても、この村に兄様がいる限り、何者であろうと侵略することは不可能です。
ハアァァ……」
ザベっさんは苦々しい表情でこれでもかと、おもっくそため息をつく。
…普通それ誇らしく言うセリフじゃない?
「エリーったら…もう。
お兄ちゃんをそんなに邪険にしないの。
あなたと会える日を心待ちにしてたのよ?」
「……(プイッ)」
あ、そっぽ向いちゃった。
あの絡み方はともかく、ザベっさんのことを大切に思っているということはよく理解できた。
「……みんな、少しいいか?」
そんな話し合いの中、おずおずと手を挙げる者がいた。
何故かこれまでずっと静かだったナディアさんだ。
「ナディアさん、どうしました?」
「もしかすると…騎士たちを発見できるかもしれない」
「「「!!!」」」
なっ!? マジか!
あれ?
それにしてはナディアさんの表情は暗いな…。
「どんな方法だウォルト?」
「…うん…、正直私はあまり気が進まないが…」
………………………………………………………
「「「(ゴクリ…)」」」
ナディアさんはなかなか答えない。
そこまで発言したなら言おうよ!
「おい、勿体つけるな。早く言え」
「わ、分かっている…。少し待て」
ルカに急かされたナディアさんはスウゥゥと、気合いを入れるように息を吸い込む。
「私の半身…『炎獣』が協力を申し出てきたんだ」
「ああそうだ。
しかし、確実にこの地域に居るはず。
魔物どもの活性化…〝宴〟が証拠だ」
「だが闇雲に探し回るのも非効率だな。
せめて奴らのエネルギーをこの目で確認できれば…」
「適当な魔物をとっ捕まえて居場所を吐かせるのはどうかしら?」
「シュバルツァー様の案ですと、レイト様もしくはルカ様のお力が必要ですね」
「おそらく不可能だ。
対象に我々と話し合う意思がなければ言葉を交わせない」
「…うーん。
そもそも魔物たちはいつから活性化し始めたんでしょうか?」
改めて、俺たちは会議を再開した。
これまでの旅の経緯、出会った敵などをおっさんに伝え、情報のすり合わせを行なう。
おっさんによると、ドノヴァンに到着したのはほんの一週間前で、その時から既に魔物たちは暴れ回っていたらしい。
「おおよそひと月ほど前からですわ。
オズベルクさんがいらっしゃるまでは、私たちも必死に応戦をしていたのですが、なにぶん数が多いことと、時たまに『はぐれ』ではない魔族も徘徊していまして…」
シルヴィアの問いにマキオンさんが答える。
ひと月前っていうと、だいたい俺らが王都ノルンに到着したあたりか。
えっ、もうそんな時間過ぎてたの!?
…って、それは別にいい。
この際だから質問しないと。
「ちょっと話変わるけどさ、皆が言っている〝宴〟って普通は何が原因で起こるの?」
「む…それは私も疑問だ」
異世界からやってきた俺とルカにはどうもピンとこない事象なんだよね。
もちろん地球にも縄張り争いする動物は居る。
しかし、異種族である魔物たちが集結して大規模な争いが起こるイベントなんぞ聞いたことがない。
すると、おっさんがすぐに回答してくれた。
「通常〝宴〟は、そこに住まう魔物たちの『戦闘意欲』が一定に達した時に引き起こる」
「ストレス?」
「飛竜や獅羊蛇など狩猟本能が強い魔物は、無意識のうちに戦闘意欲を促進させる特殊な魔力を撒き散らす。
少量ならば特に感化されることはないが、時おり風の流れや地形によって、濃い魔力が留まってしまうことがあるのだ。
それに触発された魔物は戦闘意欲を放出するため、普段闘わない種族をも巻き込みながら争いを起こす。
争いは加速しやがて〝宴〟となる……どうだ、理解できたかね?」
「「……(コクン)」」
俺とルカは同時に頷く。
要は強い魔物のフェロモンみたいなのがたまに残っちゃって、それのせいで縄張り争いがデカくなるってこったな。
そうなると…
「じゃあ今回の『戦闘意欲』を振りまいたのがその騎士たちってことか」
俺の推測におっさんは首を横に振った。
「いや…たしかに渦中にいるのは間違いないだろうが、奴らは人型の魔族だ。
双方とも鎧を身に付けていたため、詳しい種族までは分からないが、人型で戦闘意欲を撒く魔物は存在しない。
もっとも、我輩やセリーヌのように『人化』しているのならばその限りではないが…」
「ええ。人里でもないのに人化する魔物なんて聞いたことないわね。
多分あれは素の姿じゃないかしら?」
へえ、そうなのか。
狩猟本能が強い魔物ねぇ…。
大型の魔獣とかならそれに該当するのかな?
「仮に騎士どもが原因でもよ、こんな田舎で引き起こす理由が無くねェか?
もし、オレが魔族ならもっと人気のあるとこで〝宴〟かますぜ」
…って、リック!?
なに物騒なことほざいてやがるんだ!
同じことを思ったのか、テオも眉をひそめた。
「リック…この場にエリザベスとマキオン婦人が居るのだから、言動には気をつけろ」
「うふふ、構いませんわよ。
どちらもリックさんの言うことは正しいですわ」
「はい。いずれにしても、この村に兄様がいる限り、何者であろうと侵略することは不可能です。
ハアァァ……」
ザベっさんは苦々しい表情でこれでもかと、おもっくそため息をつく。
…普通それ誇らしく言うセリフじゃない?
「エリーったら…もう。
お兄ちゃんをそんなに邪険にしないの。
あなたと会える日を心待ちにしてたのよ?」
「……(プイッ)」
あ、そっぽ向いちゃった。
あの絡み方はともかく、ザベっさんのことを大切に思っているということはよく理解できた。
「……みんな、少しいいか?」
そんな話し合いの中、おずおずと手を挙げる者がいた。
何故かこれまでずっと静かだったナディアさんだ。
「ナディアさん、どうしました?」
「もしかすると…騎士たちを発見できるかもしれない」
「「「!!!」」」
なっ!? マジか!
あれ?
それにしてはナディアさんの表情は暗いな…。
「どんな方法だウォルト?」
「…うん…、正直私はあまり気が進まないが…」
………………………………………………………
「「「(ゴクリ…)」」」
ナディアさんはなかなか答えない。
そこまで発言したなら言おうよ!
「おい、勿体つけるな。早く言え」
「わ、分かっている…。少し待て」
ルカに急かされたナディアさんはスウゥゥと、気合いを入れるように息を吸い込む。
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